2015.4
地域包括ケアの未来予想図

インタビュー
日本創成会議の人口減少問題から地域の在り方が問われているが、地域包括ケアシステムと総務省から出されている地域中枢拠点都市構想、国交省から出されている国土のグランドデザイン構想など、地域や国の在り方をめぐる構想が並立しており、矛盾が生じている。地域ケアも公共サービスの効率化という観点から、それぞれの地域で自足的にやっていきましょうといってもそれはそれで非効率である。
地域包括ケアの概念図をうのみにするのではなくてそれぞれの地域の特性に合わせた取り組みをするようにしないと、違和感が残る結果になる。ケア領域の包括性(支援者と被支援者の役割の逆転や高齢者から子供、障害者まで含まれる)やケア主体の多元性(利用者も含め様々なケアの形)、ケア内容の当事者性の尊重が地域包括ケアでは必要なことである。
ニーズの掘り起こしやアウトリーチなども重要。
また成功事例やベストプラクティスはいったん忘れて取り組む必要がある。

沼尾波子「地域包括ケアシステム構築と行政の役割」
様々な機関や職種や業種との連携をしていかないといけないところだが、縦割り行政などと言われるようにうまく機能していないのが現実である。
サービスの多様化や効率化によって機能分化してきた。そのため、給付要件に満たされているかを判断し、選別することで公平性を担保しながら供給してきた。そのため、申請主義による選別型の給付では様々な条件が重なっている場合、適切なサービスを提供できないことが起こりうる。また介護保険では、事業計画に基づいて需要と供給とそれに見合った保険料を算定し財源を確保することである。それが一人一人の支援に寄り添うといった個別性は不確定なものでありなじまない。また行政改革のもとで自治体の職員数は減少しており、地域ケア会議などで出張するとかそうした業務に対応できるだけの人員がいない。それでも地域ケア会議などにしっかりと出席して下支えをすることが大切であるし、アウトリーチしていかないといけない。横の連携と情報共有も大切である。

鏑木奈津子「在宅緩和ケアにおける地域連携の体制」
在宅緩和ケア(末期がん)を対象に、1対象者の特徴を踏まえた連携、2市民参加の可能性、3自治体に求められる先行事例からの学びについて論じられている。
末期がんは70歳代で2か月程度であり迅速に心理社会的なケアが必要である。また疼痛などがあり麻薬を使うなど医療的なケアが中心となりやすい。また訪問看護などの医療的な連携が主になる。市民参加の可能性はあるものの、日本においてはあまり根づいていないのが現状である。自治体に求められる先行事例からの学びについては、残念ながら在宅緩和ケアについてはあまり先行事例はない。ただ、先行事例から自分のところはできないとする結論だけはだめである。

2015.11.9

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