2015.12
ボランティアの変遷と今
インタビュー 山崎美貴子
- 仲村優一とか福田垂穂とか阿部志郎とかバーバラロジャースとか有名な先生の下で勉強したことについて述べている.
- イギリスでは1960年代にはボランティアをシステム改革に位置づけて一般福祉政策といたが,日本ではまだまだ未熟であった.
- 1990年代にボランティアセンターに携わり,福祉教育の重要性について国もやっと認識しだしてきた.
- イギリスではボランティアは市民の社会的な責任と捉えるが,日本の女性たちは,自分のストックを地域で役立てたいとする動機に基づく傾向にある.主婦たちが社会や地域の隙間を埋めてくれる.旧来のボランティアをしていた人たちが,NPOに移行したりする例は多い.
- 阪神大震災ではこうしたNPO法人が活躍し,1998年に東京ボランティアセンターも,市民活動も支援するようにかじを切った.
- 社会的に孤立している人への見守りたいなど,ボランティアへの期待は大きい.
インタビュー 岡村栄一
- 児童養護施設とか里親の組織化に長く携わった人.セツルメントや児童館の仕事もしていたとか.
- 仕事なのかボランティアなのかよく分からないところで仕事をしてきた.
- ボランティアのモデルについて,ボランティア講座の学習保障機能,情報提供機能,活動支援機能,需給調整機能,研究出版機能がある.
- 何か社会を変えたいとする人たちを受け入れて,それが次第に社会運動になっていった.そうした支持機能がボラセンにはある.今の時代のニーズは,対制度というよりは対地域といえるかもしれない.
- 学生ボランティアは今は,大学内にボラセンができ,主婦ボランティアもパート雇用などに流れている.NPO法人ができたが,お互い閉鎖的でかえって沈静化してしまった.団塊世代の退職者も期待外れであった.
談話 山岡義典
- 自分たちはボランティアだと思っていない,さらにボランティアの人たちからも,あの人たちはボランティアではないと思われている.そうした市民の活動が存在していた.福祉を中心としたボランティアという活動とは別の活動が,以前から並走して存在していた.
- 子ども劇場,フリースクール,自然保護団体などの市民活動という名称で行われている.また,70年代には有償のボランティア活動も違和感を持たれている.現在,NPOとボランティア団体との間での認識の違いがあるが,そうした違和感を含めて存在を認め合うことが必要である.
- その活動に事業性が高まり,対価性がある場合は組織の必要が出てくるのであって,世の中にはそうではないものが多い.活動の全てが組織を作る,NPOにならないといけないというものではない.
- NPOの数が多すぎる.仲間作りであえて法人格を持たなくても良い活動はそれはそれでいいのではないか.あくまでも個人の思いとか,こうしたいとする変革への意識が湧き出すことが大事なのである.
- 今のNPO法人は社会起業的な利用の仕方をする人たちもいるが,NPOセンターが必ずしもそれに対してバックアップしているかといえばそうではない.
まとめ
- 当初ボランティアに従事している人たちは,自由意志の固まりのような人たちが多かった.権力や社会の無理解に囲まれながらもくじけないで活動をしている人たちが多くいた.
- ボランティアセンターに対する不満は,行政や政治に対して物を言うボランティアを遠ざけて,福祉サービスを従順に担う人々の活動推進窓口になっている.
- 現在はかなり脱色されて,日常の暮らしの中で気軽にできるボランティア活動が推進されてきている.
- 格差社会により健全な中間層が縮小していること,高齢化が進みボランティアの担い手が不足してきていることなどボランティアの危機が起こっている.生活が苦しくなればボランティアなどできはしない.
- 学校教育の中でボランティアを推奨したりと活動への参加の増加を水増ししているのではないか.また政府もボランティア活動への介入など,本来のボランタリズムを脅かしている.
- そもそもボランティアは,生きがいづくりとか自分探しの要素があり,それは自己実現意欲でもある.