2015.10
社会福祉法人の前途
解説(関川芳孝)
- 内部留保の問題とか非課税優遇の中,多様な団体が参入してきて社会福祉法人だけずるいという風潮がある.それに対して,今回の社会福祉法の改正では,社会福祉法人が自律的な経営組織のもとで,国民に対する説明責任を果たし,社会福祉の向上とともに利益の一部を還元し,地域貢献を目指す公益性の高い経営モデルを確立しようとするもの.
- 第一に社会福祉法人における経営組織のガバナンス−内部統制を強化し,同じように非課税優遇の対象となっている公益財団法人に準じた組織運営を求める.
- 第二に,広く国民に対し事業内容について情報公開し,法人の透明性を高める.
- 第三に,事業利益によって余裕財産が形成された場合には計画的に社会福祉の充実に再投下し地域社会に貢献する.
- こうした一から三のことはすでに2000年の基礎構造改革においても言われていたが十分ではなかったことから,再度言われたというわけ.
- あとは理事会とか監事,会計監査とかいろいろな役割についてなので,そうした立場になったときにまた読めばいいかなと言うことで割愛.
- ただ,評議委員を法人の重要事項に関する議決機関,理事会を執行機関と位置づけ,評議委員の統制を受ける構造を新たに作っている.
鼎談(ていだん)
- 内部留保については,いろいろと誤解があって決して儲けすぎているわけではなかった.また一部の法人の不正も件数からすれば0.1%にも満たないのにあたかもそれが全ての法人で行われているように報道されてしまった.
- 認知度や透明性に関しては課題は確かにあった.
- 民間企業と社会福祉法人の違いは,法人は利益配分の禁止や退出禁止などの規制があること.つまり,利益の追求ができず,容易に事業から手を引くことはできない仕組みになっている.そのために税の優遇などを受けており,安易なイコールフッティングは疑問を抱いている.第一種は社会福祉法人のみ,第二種である例えば,デイサービスなどは民間企業が参入しているが,デイサービスなどは廃業などが散見されている.
- また民間企業が利益追求であるため,支払い能力のある特定層に絞ったサービス展開が可能であるが,社会福祉法人の公益性の観点から支払い能力がない人やマーケットの届かない地域でサービスを提供することに期待がかかっている.
- 地域福祉に貢献することが法人に求められているが,何でもかんでも法人がんばれとなっているのではないか.実は,すでに地域との共栄共存やつながりを持った取り組みはしているが,今後はそれを見える化していくことが大事ではないか.
- 生活困窮者の取り組みとか社会福祉法人がもっと関わって良いし,自治会の事務局などになればいろいろと情報が集まってくる.情報を集めることははじめの一歩になる.
- 家族経営のことをファミリービジネスと読み替えていた.家族経営による視野狭窄は今後より時代遅れになると指弾している.
社会福祉法人に求められていること(田島誠一)
- 社会福祉法人の成立と要件の厳しさ,独立性を担保としながらも監査などによって厳しくチェックされることになっていること.措置受託が中心になるが故,行政事務の受託者としての性格が強くなり,法人の自主性が失われがちであった.また行政指導も強化され,下請けと見なすような指導がまかり通っている.
- また行政も法人を軽視し,財務状況とかもおざなりに,施設を建てるための組織としか見なしていなかった.そのため,法人経営についてもほとんど注目されることはなかった.
対談1
- 社会福祉法人ができて64年.最初はケインズ的な経済思想に,後半は新自由主義的な経済思想にて動いており,自由競争が尊ばれている中,公益という発想自体が否定されがちな中,社会福祉法人の存在価値そのものが疑問視されていると見るべきである.その意味で,法人のガバナンスの強化は外への防御策として構築されたとみるべきである.
- 以前は評議員と理事は兼任されていたが,現在の法改正では兼職は認められていない.また,良い評議員の獲得は日頃の施設への取り組みに理解されている人であり,そうした人を確保するのも法人の力量である.
- 情報公開などは求められている以上に答える必要がある.
この他,対談2では会計士による財政規律の話でまったく頭に入ってこなかった.対談3では社会福祉法人の性格とか地域福祉への貢献とか鼎談(ていだん)と同じようなことが書かれているので割愛する.