2015.1
地方自治×福祉
地方分権改革とこれからの社会保障(森田朗)
- 1995年の地方分権推進委員会を中心とする改革により,自立した政府として地方自治が位置づけられたが,自主財源に基づき,住民自治の理念に従って,自らの政策を自己決定できるようになったかといえば決してそうではない.逆に言えば,機関委任事務が大幅に減って,国の義務づけのものが削減されて,制度上は自治体自らの判断で実施できる事務の範囲は拡大している.
- しかし,それは続くバブル崩壊などで自主財源の大幅な減少などによって運用ができなくなっていること.また2000年になってから自治体の財政的自由拡大のために財源移譲が試みたが,その結果,都市と地方の財政力格差の拡大が起こる.
- その上,人口減少や少子高齢化が加速していることである.市町村合併によって1500の自治体が消失したが,それ以上のスピードで人口が減少しているが,この時のトラウマからその後の行政機能の集約化や統合の障害となっている.
- 現在,少子化に歯止めをかけようと地方創生が唱えられ,地域振興のための産業政策や公共事業,保育所の整備などが行われている.しかし,これらも一時的には地方の振興をもたらすが,最終的に子どもの数が増えない限り文字通り,一時的な対症療法に過ぎない.
- 都市部から農村への人口移動を図ったり,自治体で人口の取り合いをしても不毛である.都市部だって,今後人口減少になっていくのだから.むしろ,コンパクトシティとしてそれぞれの自治体がそれぞれデザインし,高齢化に備えることが必要ではないか.
- 福祉は,財政的に全国一律の制度の下で複雑な調整を必要とする一方,他法では,地域ごとにここの住民に対してきめ細かいサービスを提供しなければいけない事業である.その時,限界集落のような所では,人的サービスや物的サービスもうまく機能しないなどの事態が起こりうる.今後,こうした過疎地域の福祉をどう支えるかが課題となってくる.その一方で,今後は都市部でも高齢者の絶対数が上がり,財源も含めて課題が到来する.
- 全ての自治体が質の高い計画を立案できる能力を持っているとは必ずしも言えない.そのため,地域の事情を十分にくみ上げるとともに,国や専門機関のエキスパートによるしっかりとした助言や支援が不可欠と言える.
地方自治体が高齢社会を支える(田中耕太郎)
- 市町村特別給付はほとんど活用されていないが,地域支援事業は,国や都道府県の財政支援も厚く,幅広く活用されている.
- 軽度者の介護保険からの切り離しについての批判的な検討を行っている.
地方自治体と子ども・子育て支援新制度開始に当たって(前田正子)
- 2015年から子ども・子育て支援新制度開始され,その要点は
- 制度ごとにバラバラだった子ども関係の予算を統合し,そこに消費増税分を上乗せし,子ども関係の恒久財源とする.
- 認定こども園,幼稚園,保育所の給付を一本化する.
- 上記以外のさまざまな形態の保育も給付を行う.
- 幼保連携型認定こども園に関しては,認可,指導監督を一本化し,学校および児童福祉施設として法的位置づけをする.
- これまで保育に欠けることが要因であったが,良い句を必要とするに変える.
- 地域子育て支援事業予算は,自治体に一括して給付する.
- 子育て支援事業の実施主体は基礎自治体とする.
- 自治体,国ともに,子ども・子育て会議を設立する.
- バラバラであった省庁を内閣府に子ども子育て本部を設立する.
地域での生活支援を担う自治体行政を目指して(平野方紹)
- 障害者福祉のことについて.これまでずっと都道府県が判定とか更生相談所で行ってきたが,障害者自立支援法によって判定は原則として不要となった.また,施設も認可や指導は都道府県であった.
- 地域とのかかわりを重視すると言っても,所在地の市町村だけではなく,障害保健福祉圏域,都道府県域も含めていくこと.特に児童発達支援センターはこの障害保健福祉圏域での事業展開が想定されており,県とのかかわりが強く残っている.
地方自治体における生活困窮者支援制度がもつ意味と可能性(岩間伸之)
割愛します