2014.8
社会福祉援助を問い直す(ソーシャルワーク,ケアワークの本質とは)

講演録:グリーンソーシャルワーク(リーナ・ドミネリ)

小地域における福祉ガバナンスを比較する(斉藤弥生)
2000年に入り,イギリスを中心にビネットを使ったソーシャルワークの国際比較研究が注目された.ビネットは生活者のリアリティーを描く一つの描写であり,文字,音声,映像,時には寸劇などで表現されることがある.アメリカの心理学研究では多く用いられてきたが,量的調査が中心で,近年になってインタビューなどによる質的研究にも使われるようになっている.
ここでは日本での困難事例がどのように他の国で解決のために動いているのかを調査したものとなっていた.
ソーシャルワークの展開による小地域の福祉ガバナンス確立に関する理論的・実証的研究

住民と協働する個別支援ワーカーの養成研修(野村裕美)
コミュニティソーシャルワーカー(CSW)養成についての論文.ちなみにCSWは社会福祉士の資格は義務化されていない.CSWは,個別支援,地域支援の両方の役割を果たしながら既存の制度につながらない問題を明確にし,課題化し,解決につながる仕組みを構築していくこととして定義されている.この役割機能させていくためには住民と協働していかないと行けない.その業務は多岐にわたるが,それを乗り切るには,

  1. 相談援助実践に必要な基本的な視点,技術など日々自己訓練によって身につけるように努力すること.
  2. 分からない部分については地震を支えるバックアップシステムとコンサルテーションネットワークを作り自己を補完すること.
  3. ポジショニングにより,援助者である自分と置かれている状況を常に認識し,相談者への責任を果たそうとすることで新人でも乗り切れる.

このことを踏まえた演習の紹介をしている.
コミュニティソーシャルワーカー調査研究事業報告書

日本におけるコミュニティソーシャルワークの現状と課題(室田信一)
CSWについて,サイレントプアというドラマがあって,その影響で福祉の仕事としてソーシャルワークがあることが周知されたこと.CSWの仕事についての紹介となっている.定義については,先に挙げた野村の論文参照のこと.きっかけは,下記の報告書が下になっている.
社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会報告書
これまでの地域福祉は住民の組織化などのコミュニティーオーガナイゼーションが主流であった.しかし,孤立や貧困にはあまり効果が無いことがわかり,CSWの必要性が説かれることになる.CSWの裁量権は広く,法律から法律以外の組織化などより専門性の高い仕事として位置づけられている.なにより制度のはざまのニーズへの対応が属人的なものから組織的なものに変化したことである.そしてCSWは何をするのかという具体的なものが求められている.
とはいえ,何を解決するのかということばかりに着目すれば,解決能力の高さだけが評価されてしまう危険性,そして,そもそもソーシャルワークとは社会変革やエンパワメントを求めるものであり,それは社会への働きかけが求められる.しかし,この具体性にこだわるあまり個別的な相談のみを提供するという批判が起こりかねない.その人の人生によりそうこともまた必要なことである.

鼎談(ていだん) ソーシャルケアの本質とは

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