2012.9
現代の孤独死から見えてくるもの

インタビュー
 岩田正美先生からお話を聞いている。聞き手も平田厚というなかなかおもしろい面子である。
 孤立死や貧困について、よくあるつながりに希薄さとかネットワークがぜい弱になったとか、昔は貧困でも同居してみんなで支えあったとか。労働が流動化して、非正規雇用と正規雇用の溝とか…
 働こうと思えばどこでも働けるのに、嫌なことをやりたくないから貧困に陥るという報道について、なんでも即戦力を求めたり、何でもやりますって言ったって何でもできるわけじゃない。むしろ、正規雇用でなくても生活できる環境を社会保障が整備するべきだし、また転職も、キャリア形成という観点から長い目で見る仕組みが重要ではないか。さらに知識偏重が過ぎる社会で、そうした意味での排除も進んでいる。そして、人は思った以上に貧困になりやすい状況になっている。母子家庭、フリーターや就業機会の困難、夫の失業から低賃金の労働へ、あるいはうつ病の発症による正規雇用による就業の困難など…そうしたあらゆることにたいして包括的に考えていくことが重要であるが、人は思った以上に縦割りに考えていて難しい。
 これまで生活保護のみで憲法25条を守るという聖域だったが、今後は社会保障、社会福祉全体の制度が連携して、生活を守るという視点で制度を考えないといけないとする先生の言葉は、なかなかズシっとくる。

岸恵美子「セルフ・ネグレクトの視点から考える孤立死」
 セルフ・ネグレクトとは聞きなれない言葉であるが、要するに自分で自分を放置する。あるいは、自分のケアが自分で行えない状態を指すと言える。例えば、100歳の高齢者が一人暮らしで、どうにもできない状態、あるいは医療やサービスの繰り返しの拒否などがそれにあたるらしい。ようするに判断能力が低下し、親族との関係がなく、かつ生きる意欲がない人という事である。中でも、アルコールの問題も絡み、自暴自棄になって荒廃している人が多いことが指摘されている。しかし、虐待防止法では、セルフ・ネグレクトは介入されないことであり、手立てがないのも現状である。そのため、ネットワークづくりが急務であると提言している。

石田光規「家族関係にみられる“関係からの緩やかな撤退”」
 男性の生涯未婚率は20%、全世帯に占める単身世帯32.4%しかし、家族のサポートや家族への期待は増加している。このことから、実数としては家族は減少しているものの、家族にすがりたい人が増えているともいえる。しかし、家族からのサポートが限定的で部分的なつまり、ライトな関係を望むことが調査結果からわかっている。そこに自己責任とか自立の発想が家族構成間でも内面化していること。それが家族が保有する経済的資源や人的資源の乏しいところは、家族からも疎外され、一人暮らしへとスピンアウトする。

朝日雅也「障害者の生活を守るためには」
 介護者である人が倒れ、そのことで障害を持った人もなくなったという事件があった時期。つまり、意思を表明できない人が、人知れず倒れるという痛い痛しい事件だったわけだが、家族形態の縮小化とか社会的排除が進む現代にあってそうした目に見えない孤立はそこかしこにあることをうかがわせる内容となっている。障害があることによる社会参加の制限、または、地域社会の目を気にして目立たないように生活するなど制約は大きい。また申請主義による届け出へのためらいなど。自立は大事だが、福祉関係者が思った以上に社会が求める自立と自己責任のハードルは高いことがうかがえる。

宮本みち子「若者の貧困と孤立」
 15歳から24歳の男子人口は2010年までの15年間で31.2%も減ったが、正規雇用はこれを上回る52.9%も減った事。15歳から34歳の人口の内、失業者が134万、フリーターが183万、ニートが60万でトータルで約13%、ニートも増加中でそれによって孤立している若者は増殖中と。学歴と見事に相関関係にあり、学歴は家庭の所得とも相関が高い。つまり貧困と孤立は連鎖しているのである。低学歴、あるいは親の所得の(不況による)減少など考えることは多い。中でも高等中退者への対応が遅れているという現状、そしてそうした高校中退者が6万人いるという事実に目を向けるべきである。2010年に「子ども若者育成支援推進法」が施行されていることに触れている。
2013.8.29

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