2012.5
これからの介護保険

 2012年の改正の目玉は、地域包括ケア。介護予防、医療、介護、生活支援、地域での住まいという5要素で成り立つものとなっている。
また医療行為の介護職への一部移行、たん吸引、経管栄養なども本格的に導入されるようになってきている。

インタビュー
 地方分権の試金石として、各市町村でのニーズ調査に合わせ、中学校区ごとに介護保険サービスの提供体制を作るように進化した。
社会的入院の解消もかなり減っている。介護療養型医療施設に集約され、 2011年には療養型は廃止する予定だったが、6年延長された。
 24時間対応の訪問介護・看護サービス、定期巡回・随時対応サービスが始まる。現状では、このサービスがこけると制度が成り立たないというのが改正にあたっての一つの考え方となっている。
 一戸建てから有料老人ホームや民間のケア付きアパートに引っ越すことを厚労省は提唱して、ある一定の効果はあったが、持ち家にない人や低所得者の人の住環境については次の課題に持ち越した。
 痰吸引や経管栄養を介護福祉士が担えるようになってきた。今後は、より専門性を磨き、総合的なケアの資質の向上を図っていかないといけない。
 介護保険財政の確保には、税の比率を上げるのか。第二号被保険者の年齢を引き下げるのかという論点がある。現在は、低所得者の第一号には免除などの軽減策。第二号には懊悩負担の要素を強めて保険の担税力を高めている。

解説
 2012年の改正は、全体で1.2%のプラス改定。在宅に1.0%という在宅重視の内容となっている。しかし、介護処遇交付金が加算の中に含まれているため、交付金総額は報酬の2%相当であったことを考えると、実質0.8%のマイナス改定となっている。
 また地域ごとの報酬単価は一律10円ではなく、東京などのは10.77円とかであったが、さらに手厚く、人件費の高い都市部に多く配分されている。
 ケアマネ:運営基準減算(適切な会議開催などを行っていない場合)、特定事業加算(優良な事業所)、入院時情報連携加算、退院・退所加算
 「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」、小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせて行う「複合型サービス」いずれも一か月の包括単位が設定されている。
 訪問系:時間単位が見直され、より細分化された。訪問介護は単価が下げられ、看護は引き上げられた。また介護は、生活機能向上連携加算、看護ではターミナルケア加算、特別管理加算、看護・介護職員連携加算など医療とリハビリ、介護の連携を促す加算が設けられている。
通所系:時間単価の設定の見直しで、長時間対応をしないと収入が減る事実上の引き下げ。逆に通所リハビリは短時間のリハビリが評価される(個別リハビリテーション実施加算)。
 地域密着型サービス:認知症対応型通所介護も長時間対応が求められる。認知症対応型共同生活介護は要介護度の軽い人の単価が引き下げられている。看取り介護加算や夜間ケア加算は若干引き上げられた。小規模多機能型居宅介護は、事業開始時支援加算が3年間延長になる。
 短期入所サービス:介護保険施設の報酬改正に合わせて若干の引き下げ。体制要件・在宅復帰要件・ベット回転率要件・重度者要件で査定されている。緊急短期入所体制確保加算、緊急短期入所受入加算が設けられた。
 介護老人福祉施設の基本単価は全般に引き下げ、ユニット化が推進される。認知症行動・心理症状緊急対応加算の新設、日常生活継続支援加算の引き上げが行われている。老健では、在宅復帰・在宅療養機能加算、入所前後訪問指導加算、地域連携診療計画情報提供加算、所定疾患施設療養費加算の新設、ターミナルケア加算の引き上げ
 そして地域包括ケアの推進が図られている。

松岡洋子「高齢者の住まいの意義と課題」
 2011年よりサービス付き高齢者向け住宅の登録が開始され、今度は定期巡回・随時対応型訪問介護看護がスタートする。この背景に、施設から在宅へと向かうエイジング・イン・プレイス(地域居住)の文脈に添う日本の高齢者福祉の本格的な変革を意味する。
 課題として、家賃の平均が高専賃で9万円。これは国民年金の満額受給者6.6万円でも支払いは不可能であり、生活保護受給者は救われても、国民年金受給者が救われないという問題がある。また高齢者向けの居住形態によって費用負担(食費、緊急対応など)に大きなばらつきがあって公平性に欠けている。

椋野美智子「高齢者をサポートする市民後見の意義と課題」
 今後一人で判断が難しい認知症の高齢者は、2010年では208万人、2025年では323万人になると言われ、家族の継続的なケアが期待できない一人暮らしの高齢者も、470万人から670万人になると言われている。こうした人をサポートするために後見人制度があるが、累積で23万件しか使われていないし、市町村の申し立てはその1割にも満たない。また人材面でも専門職による後見人では数が足りず、市民後見人が必要であるが、専門職と親族で事足りるとする認識が広くあるためサービスの充実に至っていない。

宮武剛「施設と居宅、在宅と医療はいかに連携するか」
 要支援・要介護の認定者は、この10年で256万人から485万人に膨れ上がった。その割合は、11%から16.2%に拡大。65歳から74歳までの認定者は4.25%であるが、75歳以上だと29.4%となる。重度者も増加している。居宅と施設ではサービス利用者数は、この10年で、7(居宅)対3〈施設〉から8対2にシフト。しかし費用面では6対4である。
 先に見た居住福祉の視点から在宅福祉系が充実させることになる潮流だが、人材確保が現在の140万人から240万人へと増やすことが前提にあることはどうなのか。などなど制度面の解説など詳しくされている。
2013.8.20

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