2012.10
社会福祉法人の存在意義

鼎談:今、社会福祉法人に問われているもの

  1. 貧富の格差の拡大や拡散によって社会福祉法人はどのような役割をになうべきなのか。
  2. 福祉の普遍化と共に、制度化された社会事業だけやっていればよいとする考えでは社会福祉法人はダメである。創意工夫をして制度にないこともやっていく必要がある。
  3. またアウトリーチをしながら潜在化された生活の困難者を見いだすこと。複雑な問題にたいして柔軟に対応できるようにすることが求められる。
  4. 主に社会福祉協議会での地域活動の積極的な展開などを念頭に話し合われている様子である。低所得者の減免制度の100%を呼びかけているが実際は80%。
  5. 社会福祉法人の公益の固有性とは、人の生活を支えるために密接性があり、当事者としての権利主張もできないため、簡単に撤退されては困ること。そして制度化され地域に根付いているが故に実は色々な狭間のニーズ、新しいニーズに目が届きやすい。
  6. 内部留保については、数字だけが一人歩きしている観がある。情報の透明性、会計の明朗性を確保しておくことは大事である。
  7. 地縁が薄れてしまっている現代の地域に置いて社会福祉法人が果たす役割は大きい。

論文「社会福祉法人制度の沿革と今時の公共」(北場勉)
 論者が北場先生なので、措置制度と社会福祉法人の成り立ちなどをタイトに描いている。博覧強記な内容であるが、もともと社会福祉法人は、民間の自発的な事業として実施されてきた事業に、近代国家・国民国家の形成過程で、政府がその必要性を認識し、日本ではその事務の多くを民間社会事業に委託して行ってきたこと。戦後はGHQによる公私分離政策、憲法89条の政教分離政策により、公的助成を失いつつ国家的課題である要援護事業を行わなければならなかった。最後に、まずは地域との繋がりのある通所系の社会福祉法人がサービスや人材を投入しなくてもできる新しい公共のたまり場になることを期待している。

社会福祉法人の存在意義を示す「社会福祉法人経営」とは(藤井賢一郎)
 こちらはどちらかといえば、社会福祉法人が政府の外郭団体のようになっており自律的で積極的な変革を行う意思を失っていると批判的。規制緩和や民間活力推進派なので、どうも厳しめの注文が多くある。余剰金にも触れ、サービスの質や人材の処遇を下げた方が利益が上がるとする視点では、組織自体が社会的に批判されること。税が免除されているのだから、公益性を強く意識して、コミュニティに何かしらの価値創造をしろと。

社会貢献事業全国展開を促す次なる基礎構造改革(松山幸弘)
 内部留保の厚生労働省の見解を挽きながら、内部留保の額が大きい法人の会計の不透明さ、生活困窮者への取り組みが後ろ向きなこと、あるいは流用の疑いが掛けられていることを紹介している。社会に還元するのが明確であれば内部留保にも批判が無いが、批判されると言うことは社会福祉法人が余り地域に開かれていない証左である。
2014.11.4

ホームインデックス