2011.5
1.社会福祉の原点を考える
2.都市と福祉
座談会 社会福祉事業法制定後60年の社会福祉制度
- 社会福祉事業法が昭和26年(1951年)に制定された,今までのことを振り返りたい.
- その前に生活保護法,児童福祉法,身体障害者福祉法ができていたが,この事業法によって福祉事業の骨格ができたと言える.福祉事務所の設置,民間社会事業に国の補助金を出す道を開き,民生委員制度を補助機関から協力機関にし,さらに社会福祉協議会を位置づけることができた.
- 精神薄弱者福祉法,老人福祉法,母子福祉法が生まれ六法体制になったが,いまだに生活保護を受けている人は昭和28年頃(戦後)の水準となり,相対的貧困率が高く,待機児童も多い.いまだに福祉,とりわけ貧困への対応は必要不可欠である.
- 社会福祉法,介護保険法などで契約関係が重視されてはいるが,判断能力がやや欠ける人たちにとって配慮が欠けているのでは無いかと思う.
- 最近はNPOや医療法人,株式会社などが参入して,社会福祉法人の役割や対象が曖昧になっている.この曖昧さが福祉人材が集まらなくなっている要因になっていると思う.
- 戦後の生活保護は,国民皆貧乏時の安全弁,福祉六法ができてからは他法優先で,国民皆保険では,所得保障は年金で,医療は国民健康保険でとなる.そして残ったのが高齢者の医療問題であった.老人医療の無料化は行き過ぎであると言うことで,老人保健法を作る.その後,介護保険などの自己負担や保険料負担となっていく.
- 社会福祉士法ができて20年となるが,社会福祉法には社会福祉士の規定が一条もない.社会福祉主事については規定があるが…また行政でも福祉職員の研修をほとんどやらないとのこと.
- 社会福祉士の養成ではあまり歴史に触れることがない.明治時代からひもといても慈善事業や社会事業でも素晴らしいものがある.また社会事業法ができるまえから寄付の文化はあった.公的福祉とともにこうした寄付の文化についても根付かせていく必要がある.
- 障害者は約940万人,今は第3期だと思う.一期が精神薄弱者福祉法が整備されるまで,第二期が国際障害者年を挟む一九八一年頃の10年.障害者基本法ができてかなり前進した.そしていま,差別禁止法やさまざまな施策,障害者福祉総合法などが出来ている.
- 社協が今は法制化されて先駆的な開拓をしなくなった.前は制度の谷間を埋めたり,社会調査をしたりといろいろとやっていた.NPOとか当事者団体が雨後の筍のごとくできて,社協の存在意義が薄れている.しかし,そうした民間団体をコーディネートすることが求められている.
- 社会福祉事業の面白さは,新しいことがどんどんできることである.いろいろと課題はあるが最も課題なのが所得の再分配が最低であること.社会保障や社会福祉にどれだけ充当できるかが問われている.
鼎談(ていだん) 都市の福祉課題にどう対応するか
- 都市の問題は,社会的孤立にある.子ども,高齢者,ひきこもりなど…
- 1970年代までは環境と交通問題が集約されていた都市問題であるが,現代になって住民相互間の関係性の問題が出てきており,権利擁護に関わる問題も出ている.
- 児童虐待の電話相談や養護施設をショートステイとして使ったりと柔軟な対応をしていることを紹介.
- 現代は便利になった分,家庭内の役割分担などが無くなったり一人で生活ができるようになった.それが孤立や孤独に拍車をかけている.社協では挨拶運動の奨励などをしてつながりを作っている.
- プライバシーや個人情報の壁がある上,都市では匿名性が高くなるため,孤立と相まって介入が難しいケースがある.
- 頼り頼られる関係の構築が難しい.
- ハード重視の都市計画よりもソフト面を考えた都市計画を作っていかないといけない.福祉型都市計画のようなものが必要ではないか.