2010.7
高齢者の孤立を防ぐ

 表題のように、無縁死や家で看取られるのではなく、病院でなくなる比率が9割を越える現状の中、どのような方策があるのかについて論じられている。今回は、解説や提言、そして孤立防止の取り組みだけで、論文はなかった。
 解説では、当然というか、孤立傾向にある人は、タバコの喫煙や飲酒量が多く、体を動かさない。そのため、心臓疾患や癌での死亡リスクが大きい。また抑鬱であり、さらに犯罪発生率も高いとのこと。なぜこんなに社会的孤立者が増えたのか。それを解説では、経済格差が社会的格差を生み出し、弱者とそうでない物の社会的階層が固定化され、またそれは家族間でも継承される(貧困の連鎖)。結果として社会的弱者になる人々は将来に対して絶望視する傾向にあること。そして、経済成長に伴って地域の基盤も弱体化し、弱者へのサポートが希薄になっていると分析している。その上、現在は滑り台社会とも言われ、経済的に安定している階層ですら、いつ転落するか分からない状況にあり、皆が戦々恐々とし、皆で支え合うどころか、自分のことですら分からない状況になっている(明日は我が身)。
 しかし確かに、人間関係は希薄にはなっているが、例えば凶悪犯罪がある一定の地域で頻発した場合、その住民がパトロールなどを組織して運動を起こすなど自治活動はまだ死んでいない。また川の清掃などの運動体など、きっかけがあれば人は団結して治安や環境を維持しようとする意識はまだ高いと見るべきである。しかし、そうしたボランタリーは、ある一定の成果を上げると解散したり、意識が薄まったりする。その時、継続性を持たせるのであれば、行政の計画的な関与が重要であるとする視点で述べられている。
 提言1では、特に高齢者の孤立について述べられている。当然の事ながら都市に高齢者が多く偏在し、女性が8割であること。また生活保護は年150万程度であるが、それ以下の生活をしている人が全体の3割。その内、生活保護を受けている人が16.2%という驚くべき捕捉率。こうした結果等々から、高齢者の中には人と関わることを拒否する積極的な孤立者が一定数いること。制度の利用など全く知らないで問題を沢山抱えている人がいること。さらに緊急時に頼りになる人が全くいない人も多数存在することを知ることである。
 その他レポートでも分譲マンションでも高齢者が増えてきて、認知症などからゴミ出しの日を間違ったり、徘徊したりと言った治安にも問題が出ていること。また、管理会社が不在の場合もあり対応が遅れがちであるなどの報告があった。また提言2では北海道の事例を紹介し。そもそも北海道は開拓の地であり、家族などのつながりが代々あるわけではなく、地縁も希薄であることや病院体制はしっかりしていたが、国の方針で在宅中心にシフトしたこともあり、そもそも地縁・血縁が薄い地域であるため、孤立する高齢者が増えていることを報告している。そんな中、自治会を設置するとか見守りネットワークを作るとか、高齢者同士のサークルを立ち上げるNPOの取り組みなどが報告されていた。
 人々は、地縁・血縁関係を大事にしてきたかと言えば、必ずしもそうではなく。長男は家を継ぐが次男などは都市に行ったり、外国に行ったり。そう言う意味で、これまでも移動してきたし、これからもそうであろう。都市が形成されるとは、そういう孤立化とは無縁ではなく、むしろ必然なのである。ただ、そうした中で、どのようなコミュニティを作るか。死後2ヶ月に発見されたとかそういうことが問題なのではない。たとえ、誰に看取られずに死んだとしても、その人がそのコミュニティでどう生きたか。それが問題なんだろうと思う。人との関わりを拒否して進んで孤立する人々が一定数いる。これは別に悪いことでも何でもないんじゃないかと思う。
2013.4.18

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