2010.3
更生保護と社会福祉

解説
2008年に施行された更生保護法が背景にある.犯罪者や非行少年を実社会の中で通常の社会生活を営ませながら,適切な処遇を行うこと.それを通じて再犯防止と改善更生を図ろうとするものである.処遇の具体的な内容が,保護観察,生活環境の調整,更生緊急保護であり,刑務所などの矯正施設における施設内処遇との対比で社会内処遇とも呼ばれている.要するに,再犯防止と自立・改善更生の両面の取り組みとなる.
保護観察とは,家裁から保護観察に付された少年,少年院からの仮退所を許された少年,刑務所から仮釈放を許された少年,刑の執行を猶予されその猶予期間に保護観察に付された人を対象とする.その上で.指導監督と補導援護がある.国家公務員である保護観察官と法務大臣より委託された保護司との協働体制により行われている.
生活環境の調整は,矯正施設から出ても満足な生活環境が得られないことが多いことから調整をする.
更生緊急保護は保護観察所にいて,次の生活の環境を得るまでに保護すること.現在の課題として,高齢または障害により自立が困難な刑務所出所などに対する支援であり,特に刑務所にいる人の高齢化が著しく,出所後に身寄りが無いなど,生活の環境を整備する必要性が高まっている.そのため仮釈放というよりも満期退所が増加傾向にある.
また矯正施設入所者の中にいる障害者のほとんどが障害者手帳を取得していない.そのため直ちに福祉の支援を受けられないなどの課題があり,法務省と厚労省が連携して地域生活定着支援に取り組むことになった.
その取り組みが特別調整というもので,矯正施設に配置された社会福祉士などが関与して,調整を実施すべき対象者の選定,情報把握,申請手続き,保護観察所や地域生活定着支援センターが連携して出所後の福祉支援を行う機関などとの調整を実施する.場合によっては障害者や高齢者の専門性を有する更生保護施設が訓練などを通じ,福祉施設などへ引き継ぐことにしたり,生活の場が見つかるまで概ね3ヶ月更生保護施設が受け入れることになっている.

更生保護の課題と社会福祉法人参入の意義:藤本哲也
解説とほぼ同じ内容であるが,より重要なのは,身元保証制度を活用しないことには仕事も住む場所もままならないという現状であると思われる.出所後の受け皿はまだまだ足りない.社会福祉法人による更生保護施設の設立は,社会福祉的視点での取り組みが期待できること.ただし,参入しやすい環境作り,継続保護事業の認可では多様な事業内容や事業形態を許容することや委託費のあり方について専門的処遇に見合ったが苦にするなどの検討を要するとのこと.ということは,まだまだ画一的で安い委託費であることが伺える.

この他,実践報告では,矯正施設出所後などを支える地域生活支援センターの取り組みとか,社会福祉法人が運営する更生保護施設の取り組みが紹介されている.共通するのは,犯罪を犯したことを人に言えない孤立,あるいはアルコールや障害,生活困窮などの社会的な課題の山積などがあること.それに対して,居場所を創ること,具体的な生活支援と信頼関係を醸成することなどが上げられる.また,連携では司法の他,社会福祉法人であれば他の施設を利用することが出来るなど,単体では出来ないサービスの提供が出来ることなども上げられる.また出所前に綿密に弁護士と乗れ啓なども必要だなぁと思う.
2016.7.20

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