2010.2
依存症の人への支援

現状報告:依存症とはなにか
依存症とは,その嗜癖が自分でもコントロールできないほどエスカレートし,精神的かつ身体的にも,そして社会的,家庭的,経済的にも,様々な障害が出ている状況にもかかわらず,それでも尚やめられない状態を指す.
クロスアディクション→アルコール依存から抜け出しても異性依存などアルコールに変わる他のものに依存するようになること.
依存症の種類

  1. 物質依存→酒,タバコ,食べ物,薬物など
  2. プロセス依存→ギャンブル,買いもの,DV,喫煙
  3. 人間関係依存→家族,異性,セックス,痴漢,共依存(人を世話し管理しないといけない強迫観念)など

性格的なものとして,幼少期に親にあまり愛されてこなかった人がなりやすいとか.また,依存症が急増した背景には,ソーシャルスキルの低下(少子化,核家族化により他者との関わりが希薄になった),親子関係の歪み(少子化による親の過度の要求,期待への不安),経済的・物質的豊かさ(過食,引きこもり),人生選択の多さ(自由であるが故の不安)

依存症と機能不全家族(斎藤学)
機能不全家族とは,家族の機能(生殖,秩序の安定,弱者保護,食の配分,伝統の学習,子別れ)のうちどれかまたはいくつかが機能していない家族を指す.原因として,経済的問題,夫婦の不和,嫁姑の不和,仕事,家族の病気など様々であり,全ての家族が機能不全になる危険性をはらんでいる.
AC(アダルトチルドレン)→幼少期にアルコール依存症などの親から精神的・肉体的な虐待を受けたことが原因で、情緒不安定・うつ状態・拒食・過食などに陥りやすい性格が形成されている大人のこと.総じて自信の喪失が幼少期に形成される子ども.ACほどではないが,いつも周囲の動きや反応を見てそれに順応,適応することでみんなの中に埋没しようとするいわば『過剰適応者』が多くなっている.またACがギャンブルなどの依存の他,仕事依存になる傾向もある.仕事という自分を主張する手段を得た彼らは、結果を出し,評価を得ることに全エネルギーを投入してしまう.
本来家族というものは,個人の幸福のためにあるはずなのに,矯正される形で義務的に家族をやらされている,父親という役割を背負わされているという感覚を無意識にでも多くの男性が抱えている.
家族を地域に開いていくという解体を提言してる.

機能不全家族への支援(星野仁彦)
ACにならないためには,3歳から5歳までの子どもに安心感を与えること.母親だけではなく父親の規範的な態度や普段からの家庭でのコミュニケーションが大切である.そして,ACの治療には,家族システムの変容を含み,総合的な態度で臨むこと.またADHD(注意欠陥多動性障害)についても解説している.ADHDはギャンブルや薬物依存症にもなりやすいとされる.機能不全家族は父親の不在と母子密着が共通される.

依存症からの回復(秋本豊)
主にアルコール依存の治療について解説している.回復するには,1.仲間の存在,2.専門機関やプログラムとのつながり,3.本人の回復したいと願う気持ちが重要になる.
依存症は,本人の意志の弱さや道徳観の低さにあるのでは無く心の病であり,依存症の人は自分を責めて孤独になっていることを理解する必要がある.また自分を見失っている(アルコールを愛していると,自分に対する愛が無くなっているなど).またアルコールを断つだけでは無く,社会や生活,人間関係などを総合的に判断する必要がある.そして過去から未来へのポジティブなあり方の模索が必要である.

対人援助職と共依存症(吉岡隆)
アルコール依存をする本人とそれを促進する家族.促進する家族は,自分がいないとアルコール依存をする本人が生きていけないとお世話をしてしまう共依存症の存在がある.共依存症は,思い上がり病,自己喪失の病,仕切り屋,操り人と呼ぶことも出来る.余計な口出し手出しをして人間関係を壊してしまう.そうしたことを念頭に,対人援助職も知らず知らずのウチに仕切り屋などになっていることを指摘し,それから脱却するためには,自分の生活を律して,自分の成長や回復に勤しむこと,宛の成長や回復を妨げないこと,対人援助では手を出さないこともまた援助であることに気づくことなどを提言.特に,地位や名誉が無くても自分が無条件に価値のある存在だと思えること.この無条件で自己を肯定できるかが大事であると.

2016.7.23

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