2009.6
福祉サービスと「医療行為」

平林勝政「介護職と医行為をめぐる法的諸問題」
法科大学院の教授らしく、法的根拠をつまびらかに提示しながら現状の課題について触れている。もともと医行為は、医師などによって業務が独占されたものであり、介護福祉士が行ってよいものではない。現状を追認してきたたん吸引についても、その人が健康状態が安定しているといっても、何かの危険性が発生した時はその責任の所在を追わないといけないこと。抽象的な解釈では、病状が不安定であることなどにより専門的な管理が必要な場合は、医行為であるとされる場合もあるとされるという会社に抵触しかねないことである。医療との連携もどの程度までできるのか。サービス担当者会議などで医療との確認や判断の指示を仰ぐことになっているがどの程度までできているのか。そうした確認作業が必要である。

菊池雅洋「求められる介護職員への医療行為解禁」
2008年11月にまとめられた「安心と希望の介護ビジョン」において介護施設においての医行為について現在在宅でしか認められていない喀痰吸引や介護職員がかかわることが大きな問題として取り上げられていた経管栄養の処置などの一部の医療行為を特養の施設でも研修を受けた介護職員に認める方針が示された。水銀による血圧測定も介護職はできないことになっているが、危険性もなく専門性もいらない測定行為まで介護職員が行うことができないという現状は現実の社会情勢やニーズに合ったものとは言えないのではないか。
あと「特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」での医療行為への幅の狭さへの批判となっている。

鼎談
看護師が24時間体制や夜勤体制がとれている特養は全体の2.3%であり、胃ろうや吸引など行われている。制度上、医療の判断が必要な行為と今は医療行為と判断されているけれど、生活上必要な行為であるとみなすかの線引きをしっかりと行っていく。
やはり介護職員に危ないことはさせられない。自分たちとしても危ないことはしない。制度がないからこそ逆に自分たちがアセスメントのスケールをしっかりと持つことが大事。医療行為についての問題は、制度ができているかどうかではなく、この人に何が必要か、自分たちの能力でやって大丈夫なのかのいうところで判断してスケールをしっかりと決めること。

赤沼康弘「医療行為と成年後見制度」
手術に対する同意に関して、成年後見制度では医療侵襲により同意見は付与されていない。言い換えると、医療同意見は自己決定権・人格権に基づくものであり、一身専属権であるとの批判や、医療同意の権限を付与することは成年後見人に過大な義務を負わせてしまうという危惧も表明されている。しかし、精神保健福祉法では保護者として成年後見人が規定され入院や治療を受けさせる義務を持ち、かつ予防接種などの必要な措置を講じることとなっている。今後、身寄りのない単身高齢者が増加していくので、このような人たちの医療を保証するためには早期に医療同意に関する法の整備が求められる。

2015.11.9

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