2009.5
児童福祉法改正

総論 還暦・児童福祉法は泣いている?(柏女霊峰)
昭和22年に成立した児童福祉法も2007年で満六〇歳を迎える.大きな改正も無く75次も改正を繰り返し,非常に分かりにくく,つぎはぎだらけの内容となっている.
その後の記述は,児童福祉法成立の過程,関連法の整備の紹介である.児童にかかる法律は,障害者にもかかってくるし,母子福祉法や児童手当などの世帯にかかる法律まで多種多様である.今回の児童福祉法の改正も,タダ積み重ねただけで周辺,関連法が建て増しされるのに合わせただけである.いまこそ児童福祉法の抜本的な改正,例えば理念の再構築を図る必要があると訴えている.それは,現代に見合った子育て観の共有と子どもの権利の保障である.

子育て支援の方向性(椋野美智子)

ポスト産業社会では,『女性は働き,夫婦は離婚する.また合計特殊出生率は低下し,平均寿命は著しく伸び, 貧困はこれまでのように高齢者に集中しているのでは無く,現在ではシングルマザーや学歴や資格のない者,長期間失業している者の問題となっている.こうした人々は従来型の社会保障の恩恵をほとんど得ていない(ブルーノ・パリエ)

今回の児童福祉法の改正は,仕事と生活の調和の実現と包括的な次世代育成支援の枠組みの構築を掲げ,とりわけ仕事と子育ての両立などを現物給付することにある.簡単に言って,保育所の増設と待機児童ゼロの取り組みの強化である.それは保育所だけではなく過程での養育者への配慮をも取り込んでいる.地域子育て支援拠点事業や一時預かり保育の積極的な活用〜サポートネットワークとアウトリーチの強化を図ることの重要性を提唱している.
保育所の機能強化としては,1.定員の空きが無い場合でも,保育所の判断基準の裁量で受け入れることが出来る.2.利用者からの申し込みがあった場合は市町村の決定を待たずに即応することが出来る.3.施設の減価償却費の運営費への上乗せをして弾力的な経営が出来るようになる.4.最低基準を満たした保育所を自治体の裁量の余地無く必ず公費保障の対象として指定する取り組みが検討されるようになる.そして,5.市町村責任の強化である.簡単に言って,大幅な量の確保を意図している.

里親制度のこれから(庄司順一)
里親制度は戦後制定されてから大きな改正は無かったが,2002年の改正はかなり大きかったこと.しかしそれでも戦災孤児対策の域を出ていなかったが,2008年の児童福祉法改正によりかなり見直された.
これまで養育里親,短期里親,専門里親,親族里親の分類から養育里親(専門を含む),親族里親,養子縁組を希望する者となる.また,認定要件には研修を受講することが規定された.また里親名簿の登録の有効期間は5年とし,更新に当たっては更新研修の受講と,欠格事由に該当しないことの確認が必要となった.またこれまで6人まで養育できたが,4人までとなり,実施容姿を含めると6人までとする.里親への手当が増額されている.ただし,養子縁組希望親には手当は無い.研修としては児童の権利擁護などが盛り込まれており,非常に良いが,その一方では養子縁組希望親には研修が無いなどの問題点がある.
小規模住居型児童養育事業は,いわゆる里親ファミリーホームを制度化したものである.児童養護施設などにおけるケアの小規模化は進みつつあるが,施設の場合は交替制勤務の中で働き移動もある.これに対して,里親ファミリーホームは養育者の抗体が無く,仕事としてでは無く生活の中で子どもの養育をできる.国が制度化したことでより発展が期待できるとのこと.

児童福祉法改正と社会的用語関連部分の主な内容(高橋利一)

東京での施設内虐待の対応例や地域小規模児童養護施設・小規模ケアの推進についての事例紹介をしている.

改正児童福祉法が児童相談所に求めるものとは(津崎哲郎)
里親制度とファミリーホームの創設について,児童相談所は里親へ単に業務を委託するだけでは無く,的確なケースアセスメントや調整などの努力と,一方で受け皿になる里親の新たな開拓,研修および支援や育成活動などを行うことが期待されている.
ファミリーホームについても小規模化にあって住み込みが8時間労働の労働基準に抵触する矛盾から,思い切って専従の養育者に委託することで解消しようとしているし,バックアップをしていくことが児童相談所の役割である.
児童虐待と権利擁護については,機能強化について述べている.また,自立援助ホームは一八歳以上の人を対象にして,児童養護施設を出た後に社会的孤立や底辺に追い込まれることが研究結果として明らかであり,そうならないように一八歳以上の人へのアフターフォローをしていくことを目的としている.しかし,まだまだ設置数は少ないのが現状である.
2017/8/30

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