2009.3
高齢者の住まい

 この特集の論文は、総論のみ
園田真理子「高齢者の住まいの現状とこれからの居住福祉の課題」

 現在、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)とかケア付き住宅などが高齢者福祉分野では大きくクローズアップされ、政策的にも誘導されている。こうした流れはどこからきたのか。このことについては、総論で2006年に抜本的な住宅政策が見直された(住宅建築計画法から住生活基本法へ)ことを述べている。
 そもそも従来の住宅政策が、「住宅金融公庫による住宅融資」「低所得者向けの公営住宅の建築・供給」「中堅勤労者世帯向けの公団・公社住宅の供給」といった住宅政策3本柱があったことすら分からなかった。
 またケア付き住宅は87年に既に先鞭がつけられており、95年に一般住宅のバリアフリー化をめざした長寿社会対応型住宅設計指針が発表されていたことも初めて知った。その後の2001年の高齢者の居住の安定確保に関する法律から、高齢者専用賃貸住宅が導入されている。こうした時系列から見ると、現在はどんどんと開発し建設する時代から、ストック重視、市場重視、また地域・福祉のまち作りへとシフトしていっていることが分かる内容になっている。
 こうした流れから単に厚生労働省のプロパガンダと言うよりも、日本の住宅政策の大きな流れの中に、高齢者専用賃貸住宅とかケア付き住宅、バリアフリーがあり、上手く誘導されていることが分かる。
 また総論の中では、確かに高齢者は持ち家率が非常に高いが、それは戦後住宅政策が最終目標として「持ち家居住」であったこと。しかし、現在耐震強度とかバリアフリーなどの基準には合致していないことなどが論じられている。そして、身体的に衰えることで在宅で暮らせなくなった場合、家か施設かといった二択でしかない状態はよろしくないと論じる。今、求められるのは、介護・医療・住宅の財布を一つにして、どう供給するかとする提案は勉強になった。

 レポートの中では、高齢者の住宅政策に関する制度をまとめたものが非常に分かりやすい。一口に私たちは高齢者専用賃貸住宅を知っているが、この政策の元になったのが、高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住宅法)であり、その中でも高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅、そして高齢者専用賃貸住宅と三つあること。またその他、終身建物賃貸借制度が含まれている。
 また、持ち家でも、広い敷地を持つ持ち家を子育てなど広い住宅を必要な人に貸し、その代わりに介護サービスを利用しやすい居住に住み替えする支援制度を促進しているとのこと。他、レポートでは地域や住環境などとの連携を通じてコミュニティの形成の実践報告などであった。昔は、サラリーマンのベットタウンも高齢化し、坂の多い場所だったり歩行に困難な場所に住み続けている人もいる。高齢者にとって、交通の手段が限られる以上、手の届く範囲で色々と物が確保できる場所へ移動することが推測される。その意味で、今後高齢者の移動が流動的になっていくんだろうと推測される。
(2013.4.14)

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