2009.1
自治体サバイバル時代

危機に直面する自治体と地域作り新戦略(片木淳)
地方自治体の危機は,一つに少子高齢化,もう一つが経済の低迷による地方財政破綻の危機である.少子高齢化は,言わなくても分かるように,今後急激に進んでいく.限界集落は増え,焼失する町村も増えていくだろう.旧態依然とした取り組みや漫然とした公共インフラと行政サービスではもはや破綻は目に見えている.夕張市だけでは無く,財政再生団体や早期健全化団体に指定される町村は増えていくだろう.
地方財政の取る道として,人口増を目指して地域の活性化を継続する路線,人口減少を見通し,街全体の再改造を実施していく路線である.

地方財政の現状と課題(関野満夫)
国民生活の中で地方財政は国家財政よりも大きな役割を果たしている.国の一般会計歳出が84兆円であるが,地方財政は89兆円,国の歳出の中には国庫補助金や地方交付税などもあるので,それを足すと,147兆円を超える.
歳入に関しては,国庫補助も地方交付税も減少傾向にある.その一方で地方税が増加傾向にあるが,国の歳入である所得税や法人税など緩やかな景気回復に伴い,税収が伸びやすい租税があるが,地方税には固定資産税や住民税など変動の少ない安定的な税収が多く,地方の歳入は景気に比較すると税収は少ない傾向にある.全体的に,地方の自立を高めることをスローガンに,地方財政全体の抑制基調に変化は無い.
福祉に関しては,一般財源と国庫支出金に支えられているが,その比率は一般財源が70%となっている.一般財源とは基本的に自治体が自由に利用できる財源である.それゆえにあえて福祉の事業に使わないという選択肢もある.

ポスト過疎地域の突破口(小川全夫)
過疎地域自立促進措置法の期限切れまで1年あまりとなっていること.行政評価の俎上に載せられるとかなり厳しい結果が出ることが予想される.
平成の大合併により過疎地域は減少したが,新市の中の一部指定地域とされたり,新市そのものを過疎地域と見なす移行措置で現状をしのいでいるに過ぎない.
限界集落は外部の学者が名付けたものであり,中に住んでいる人にとっては迷惑な話でしか無い.では,どうするべきかという答えが無いと,単に宣告や告知をして終わりであり,無責任でしか無い.
過疎地域は都心部の郊外でも起こっており,若い人口の移動はいいところで就職することがのぞましいという理由で都心に集中する.もはや止めることはできない.むしろ限界集落の中で生きる人たちから学ぶことが重要である.交通の利便性の見直しや病院などの医療面での相互ケアなどいろいろとできることはあるが,規制があってなかなか思うように行かないのが実態.むしろそうした規制を外していくことが必要ではないか.
平成の大合併によりむしろ疲弊している地方自治体が増えていると感じることについて.合併後土地勘のある行政職員がいなくなるなど,行政が遠い存在になってしまったと感じる住民が増えている.そうしたときに住民同士の自治,ソーシャルキャピタルという概念が必要である.

これからの自治体運営における民間非営利組織とのパートナーシップ(杉岡直人)
行政改革のしわ寄せの中,多くの地方自治体は財政難に見舞われ,各種事業の縮小に走っている.住民の自発的な活動の広がりとか取り組みが求められている.行政と住民のパートナーシップが求められているのである.北海道の町村の取り組みを,行政先導型,民間先導型に分けて解説している.
その上で,協働を支える上で住民と自治体を結びつける中間支援組織,NPOサポートセンターを挙げ,政策提言から実務研修および資金融資に至る一連のサポートを組織的に展開し,行政とNPOの協働を独自のスタンスで推進する組織として全国的に評価されているとのこと.

その他,ウォッチング2009では,上野谷加世子と武川正吾,姜尚中による地域福祉についての話し合いが行われている.

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