2008.6
社会福祉士・介護福祉士の新カリキュラム、始動

座談会
 社会福祉士及び介護福祉士法が改正され、一定の教育プロセスを修了すると全員が国家試験を受験据え卯という資格取得の方法が一元化された。介護福祉士は認知度は高くなったが、数の不足や教育や資格取得方法の妥当性が問題に(色々なルートがあり、結果的に資格の評価を低める原因の一端になっている)。社会福祉士は認知度が低く、仕事が理解されていないという問題がある(業務独占ではなく名称独占のため)。
 今回の改正で、社会福祉士は、相談援助技術の基本、複雑化した相談の連携、地域福祉を相談業務としてネットワークを作ることを軸にした。新カリキュラムでもこうしたネットワーキングや地域支援が加わることになり、障害、高齢、児童という制度の縦割りの養成教育から福祉課題を総合的に見るという視点が整理されたように思う。介護福祉士は、基本的な知識の習熟と共に卒後の成長を促す体系を目指す。また、教養や倫理的態度の涵養をカリキュラムに位置づけている。
 また福祉人材の確保は待遇改善が欠かせない。そして現場で社会が認める専門職を安定的に養成できるような基盤を固める必要がある。介護福祉士の資格を持ちながら、労働条件の低下などから、定着せずに辞めていく人や潜在介護福祉士が多数存在する。賃金の改善と同時に、チームリーダー研修などで新人教育をしっかりしていく、あるいはキャリアアップが出来るような仕組みを用意している。介護現場に人が定着しないのはチームリーダーの養成が不充分である方と考えている。社会福祉士は専門社会福祉士の創設が国会で付帯決議されている。

白澤政和「社会福祉士養成教育の課題と展望」
 今回のカリキュラム改正は、基礎部分にのみ焦点を当てたものであり、特定の領域で活動するソーシャルワーカー養成まで焦点化されておらず、これは養成校側の責務で推進していくテーマである。教育や司法から社会福祉士が期待されていることを考えると、そうした需要に応えていくのも養成校側の問題である。根本的な問題として、社会福祉士養成教育は厚生労働省、ソーシャルワーカー養成教育は文部科学省の所管であり、両者の連続性・一貫性のある養成教育は必ずしも充分に行ってこなかったことがある。これは知らなかったことで、少々ビックリというか、ドン引きっすよ。社会福祉士とソーシャルワーカー養成が別の所管だったなんて…
 その後、ソーシャルワーカーの資格システムの紹介がされていたが、これは先の認定社会福祉士制度では採用されなかったので割愛する。継続教育やら社会人を取り込んでの再履修のススメとか、学会との連携とか…生き残りに必死なのが伺える内容である。
 私が思うに、そうした社会人教育にかかる個人負担を払えるだけの賃金があるのか。また専門社会福祉士なるもののカリキュラムをこなして認定されてもそれが賃金やその人の地位改善になるのか。施設なり事業主がその資格を取らせることにメリットはあるのか。そうした位置づけがないままに創設しても意味はないように思える。

黒澤貞夫「介護福祉士の養成・教育の課題」
 今回のカリキュラム改正のポイントは二点。一つが、人間の尊厳と自立、高い倫理性、個別性と言った理念的かつ人間関係に重点を置いた価値観。もう一つが、予防からリハビリ、看取りまでのライフステージに対応した施設・在宅の環境的な要因に配慮した生活支援技術、保健・医療などとのチームケアなどである。
 この度のカリキュラム改正は、介護福祉教育の根本的な教育思想の転換に基づく物である。すなわち科目単位から領域別の構成になった。介護は生活の中で活かされる学問である。介護は高齢者や障害者の現実生活を直視して、生活を支える仕事である。その特性と一言で言えば、人々の生活史、文化、地域の中での生活支援である。そして人類が戦乱や災害、そして飢餓の苦難から作り上げてきた人間の尊厳と自立の理念価値を根底におく生活支援である。

 このほか、更生保護に分野に置ける社会福祉士への期待と論文があったが、その後、社会福祉士に限らず無資格者でも更生保護の相談が出来るようになったので割愛する。
2011.12.10

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