2008.4
就労支援の最前線

鼎談「働くこと」の意味
 障害者雇用や生活保護の自立支援プログラムを軸に、働き過ぎの人と働きたいけれど働く場所がない人が混在する社会であることを話し合っている。
 障害者が働くことで、納税者になっていくことは望ましいが、単に働かせたいという支援者側の論理で行われると齟齬が生じる。また健常者の就労=自立という考えの他、自律という考え方を取り入れること。ジョブコーチの制度的説明を行っている。障害者雇用促進法があまり活用されていないことも述べられている。またこの促進法が「手帳を持っている人」限定であり、心身機能の欠損だけではない障害の多様性には対応できていない。また就労と生活支援は一体として行うことの重要性の提起。
 生活保護の場合は、プログラムの他、就労支援プログラムやハローワークと連携して「生活保護受給者等就労支援事業」も始まっていることを説明している。また一方で、就労に結びつく前の家族間のトラブルや債権問題、住居を失っているなど生活課題の解決が先決な場合もあり、一概には就労と言うことには結びつかないケースも多々ある。また職場の開拓と言うよりも、むしろヘルパーの資格取得など就労する側の努力に力点が置かれがちである。生活保護は、働くことの義務を強調されるが、働く権利の側面を捉え切れていないことについて、働くことの意義が改めて、就労支援に求められているのではないかと考えられる。
 共に最後にまとめられたのが、自分の健康を損なうこともなく、身を削ることなく働いていける状況を作り出すこと。尊厳ある働き方が求められると言える。これは、生活保護や障害者就労支援に限らず、全国民、労働者に当てはまる考えだと思う。

唐木啓介「福祉から雇用へ」
 失われた10年から脱したものの、雇用情勢は以前として苦しい状況などを概説。また福祉サービス受給者などの状況の概説。その後、阿部内閣で取り上げられた成長力底上げ戦略についての言及をしている。
  1. 職業能力形成の機会がない物への職業能力形成機会の提供
  2. 福祉から雇用への取り組みを推進する就労支援戦略
  3. 中小企業の生産性向上と最低賃金の底上げを目指すである。
 特に、2については
  1. 公的扶助の受給者を対象とした福祉から雇用への推進5カ年計画の策定
  2. 授産施設などで働く障害者の工賃水準を引き上げると共に、一般雇用への移行の準備を進めるための工賃倍増計画5カ年計画による福祉的就労の底上げである。
 その後、会議の開催とかスケジュールの説明、障害者雇用促進法制度の整備などの説明が行われている。その後、いくつかの市町村での取り組みの紹介となっている。
 厚労省の説明であり、概説的な内容となっていた。

松井亮輔「国際的動向から見た日本の「障害者就労支援」」
 就労支援がクローズアップされた背景には、日本障害者協議会などに加盟する障害者福祉関係施設や団体の多くの従業員が組合員として加盟している全国福祉保育労働組合が、「日本の障害者雇用政策に関するILO第159条約違反に関する、ILO憲章第24条に基づく申立書」を提出した事による。その結果、ILOは日本の企業などが法定雇用率をした回り続けることに対する是正勧告を行うことがニュースとして大々的に報道されることになった。
 日本の障害者のほとんどが授産施設などでの福祉的雇用であり、民間雇用でも自営業や家族従業員が過半数を超えている。また障害者雇用の問題は、自立支援法でも見られ、一般雇用を目指すという目的が同じにもかかわらず、職業能力開発促進法に基づく職業訓練では訓練手当てが支給され、障害者の促進などに関する法律に基づくジョブコーチ支援などは無料。それに対し、就労移行支援事業では利用料の負担が求められる。また就労継続支援については、雇用型・非雇用型とも、利用者は工賃を伴う就労機会を求めているにもかかわらず、利用料負担を求めるのは理屈に合わないことが指摘されている。
 その他、細かくILOの障害者雇用の条文をめぐる解釈などが行われている。

 このほか、レポートが4本となっている。生活保護と障害者が中心だが、レポートではいわゆる若者のニート対策(若年者就労支援プログラム)について言及されている。内容は割愛するが、非常に含蓄有る内容であった。
2012.1.3

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