2008.12
どうなる 保育所の未来

柏女霊峰「今、保育所は?現状と課題」
 保育が規制緩和などで利用しやすいサービスになった事による現状と課題について。2008年頃に私立と公立の割合がほぼ拮抗していること。待機児童の解消にはなっていないが、保育所の増設、特に民営が急激であることなどを紹介している。民営が増えるに伴って、保育士の質や確保が大きな課題として浮上していること。また、社会的ニーズの多様化により、認可保育所だけでは対応しきれず、認可外保育所も増えていること。その一方で過疎化が進んでいる地域では定員割れが起きていることなどを紹介している。
 筆者が提言するのは、養育者と保育者の共同養育:社会的養育を基本に据え、家でばかり養育するのではなく、かといって保育所に預けっぱなしではなく、定期的一時保育利用など中間的なサービスを導入しながら養育支援をして行くことが大事ではないかと記述している。最後に、これからの保育サービスを含む子ども家庭福祉に関わる座標軸は三つあるという。一つが、「子どもの最善の利益」であり、二つはそれを保証するための「公的責任」である。そして、三つは、人と人との緩やかな繋がりを目指す「社会連帯」であると。

吉田正幸「規制改革が投げかけた課題」
 規制緩和の流れが小泉内閣でクローズアップされたが、そもそもの始まりは1981年から脈々と続いてきた流れであることを説明している。その上で、行き過ぎた規制緩和はくい止めるべきであるが、この緩和が投げかけた課題にちゃんと保育は向き合わないと行けないという論調である。その後は、保育に関係する規制緩和の趣旨や流れについての説明を行っている。たった4ページであるが、2008年までの保育の規制緩和や各種サービス(認定こども園など)についてすごく良くわかる形で概説している。こうした規制緩和によって、柔軟な運営費の使い方が出来たりして、経営基盤の強化が出来た民間・社会福祉法人があったと思われる。その一方で規制緩和だけの流れでは無い面、公的な性格を持つ仕組みの検討も行われ、保育士の処遇改善や配置基準の見直し、8時間保育、11時間楷書の矛盾なども話し合われていることを紹介している。

山縣文治「認定こども園をめぐる状況」
 いまいち良くわからない、認定こども園。保育機能、幼児教育機能、地域子育て支援機能が合わさった総合施設と言われている。それは、日中は幼稚園教育をしつつ、その幼稚園プログラムが終了後は、預かり保育的なことをすることが出来る施設なのだろうか。認定とは都道府県で行うとされる。だから認定こども園なんだろうと思う。
 しかし、文章の後半に出てくる、幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型というのが出てくる。幼保連携は、総合施設として理解しやすいが、他の幼稚園型とか保育所型ってのはなんだ?見たこともないのであんまりぴんと来ない。

秋田喜代美「乳幼児期の子どもを育む」
 幼稚園での遊びや教育は、将来どのような人材を育てたいかを決める重要なものであることを述べている。また教育一辺倒ではなく、養護という視点で取り組むことの重要性について述べている。養護とは発達の連続性や家庭での生活を視野に入れたトータルな物である。

倉石哲也「保育士に期待されること」
 人間が人生の中で最も身体的精神的に成長するのは、0歳から6歳である。この時期の発達保障に保育士は大きく関わっていることを自覚した上で、新保育所保育指針に基づいての説明となっている。
 保育士の人間性では、感性・自己評価・自己覚知が求められていること。保育環境では場面での信頼関係、生活空間としての保育環境作り、子どもの人間関係を見るとなっている。子どもへの関わりとしては、傾聴力、愛着への対応となり、家庭との協働では、配慮の必要のある子どもへの関わりや保護者への関わりが規定されている。

石井哲夫「今後の保育士の要請に期待する」
 石井先生は割と有名な先生である。保育士の養成期間の会長さんにもなっていたのねと。高邁な文章だけど、要するに社会的保育を商業化しようとする議論や予算執行を中央政府から地方の一般財源へと移行して、悪しきイミでの保育所保育の切り捨てが行われようとしていること。そのことに抗するために、あらためて保育、社会的保育の意味を確認し、よりその価値の重要性を再認識しようとするもの。養成校と現場の協力体制の元で緊密に繋がることで良質的な保育を提供できるとする立場に立っている。

 このほか、インタビューで山崎美貴子先生が登場している。地域や家族形態の変遷について非常にわかりやすく解説し、かつそれと結びつける形で現在の育児の大変さや保育の関わり方について丁寧に話している。
2012.3.17

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