2007.9
これからの在宅介護・医療はどう変わるのか

解説
宮武剛「地域で支える医療・介護を求めて」
 いまや少子高齢社会、超高齢社会とも言われており、団塊の世代が65歳以上となっている。また、2005年から継続的に人口が減少する社会になることが確定し、出生数も1.57を着るのが常識となっている。それは年少人口の減少と介護部門の人手不足を加速させることになる。また国民医療費は膨れ上がり、当然介護保険費も右肩上がりである。
 この抑制のために、医療費の適正化、後期高齢者医療制度の創設、保険者の再編・統合が行われた。後期高齢者医療制度の説明がここで詳しくなされている。
 診療報酬に関しても包括払いについて2007年現在でも検討されていたことがうかがえる内容となっている。また医療は県単位、介護は市町村とすみわけがなされ、また仕掛けとして長期入院や社会的入院などレセプト30万以上の案件については共同拠出となることからそうした入院期間の短縮や解消に取り組まないといけなくなった。
 日本人の死亡場所が、在宅12.4%、病院など82.3%とこの半世紀で自宅死と病院死が逆転した。今後大量死の時代が来るから、現状のままでは病院の増設を図るほかない。しかし、一連の医療改革から、療養病床の削減などから在宅での最期を迎えるための体制作りが強化され、例えば診療報酬では在宅療養支援診療所の創設や在宅医療につける加算が強化されている。介護では施設から在宅へ、医療でも病院から在宅へ、もっと正確に言えば、自宅に近い住環境での介護や見取りを模索するのは時代の要請かもしれない。しかし、介護保険施設の医療体制も決定的に不足・不備な状況にある。最後に書いてあるのは的を得ている。
 医療制度改革法の最大の問題点は、病院医療よりも在宅医療の方が安上がりであるかのように強調していることである。介護保険制度の大幅見直しも在宅介護の方が経済的と世論を誘導する傾向にある。しかし、これらは家族の労苦や職員数の不足、専門職の劣悪な待遇を棚上げした比較ではないだろうか。急激な少子化が医療・介護分野での労務父さんを予測させる中では、社会保障費の抑制政策を根本的に見直さない限り、この時代の要請にこたえることは出来ない。

座談会
 財政抑制の中での現場の意見を中心に述べられている。
 診療報酬について、在宅時医学総合管理料に統合されたことの説明。その前は寝たきり老人在宅総合診療科、がん患者のための在宅時医学管理料と別れていた。このほか、在宅専門診療所が出来てはいるが、まだ数が少なく一人の医師が切り盛りしている状態が多いこと。また他機関との連携体制も不十分であることなどが説明されている。その一方で医師会が主導して24時間対応について各診療所が連携しながらフォロー体制を敷いていくことなどが話されている。
 ケアマネの立場から、これまでケアプランを作ることに熱中していたが、利用者の生活を見ることやネットワークの重要性にあまり配慮されてこなかった。今後はそうした視点で介護をしていくことが重要である。特に、医療と福祉の連携がなかなかできなかったと思う。特に主任ケアマネ研修では、ターミナルケアが講義に含まれ、最後までどう見ていくのかが問われている。
 療養病床の削減について、現場では在宅に変わることについて可能だとする意見がある。ただし生活を含めた社会診断が必要だろうと。そしてなぜ療養病床にいるのか。それは生活基盤がないあるいは困難だからであり、そうした生活要因を見ずに、24時間医療体制だけでやるというのは問題がずれている。家族を含めた介護体制が地域にどれだけ持っているかということだろう。
 財政の抑制について、終末期の医療費が高いと言われているが、終末の一か月間の医療費を一年分に換算しているから高いのであって、実際の医療費は思ったより高くない。しかし、高いという幻想がある。このような試算を基に在宅死を40%引き上げようとするのは目的が違う。
 確かに介護分野は医療面の知識が足りないためにうまく意思疎通ができないと言われるが、ケアマネが医療職になる必要はなく、連携のルートをしっかりと確立しておけばいい。施設で働いていた時には、介護職員がプチ医療職になりたがる場面がある。しかし自分で問題を見つけ看護などに伝えていく介護固有の視点の確立が重要である。
 そもそも病院で一か所に集めた方がコストが安いはずで、これが在宅医療で出向くとなればより人材の確保をしていかないといけない。確保するためにはある程度の賃金の保証や労働時間の整備をしないといけない。むしろ在宅の方がコストがかかるのではという問題がある。マンパワーの確保が出来ずに看護ステーションが閉じていっているところもある。また退院の促進から、通院する人が増えて、在宅の往診が定着しないケースも多々ある。

 レポートとして、施設におけるターミナルケア、地域での看取り、医療機関の視点からの医療と介護の連携、尾道市の在宅医療・介護の取り組みであった。
(2012/11/24)

ホームインデックス