2007.8
地方再編時代の福祉

インタビュー
 2000年以降平成の大合併の後の地方についての話し。社会保障審議会委員であり、日本経済新聞論説委員からのインタビューである。そのため、国の財政難であるから、合併によってコスト削減は是であり、社会福祉法人や自治体病院のようなのは非効率であるという視点にて立っている。もし社会福祉法人がしっかりやっているというのならば、そのことをもっと社会に認めてもらうように努力をするべきであると、北欧の高福祉・高負担の例を挙げて説明している。その他、医療の柔軟性への提示(24時間診療を推進するとか医療制度改革にもっと現場が声を出さないといけないとか)、現在はアメリカ型の思考→格差は生じてもそれは結果であってしょうがないとする風潮が多く、北欧などで、高所得者が低所得者を支えようとする思考は少数派である。ただし、個人の機会は均等に与えているからと言って、個人の努力が及ばない地域格差の対応を国がしないというのはあってはならない。

座談会
 平成の大合併で3000あった市町村の数が1800になった。合併が進んだ背景には、地方分権を推進し、自治体の規模を拡大し、財政基盤を安定化させようとしたことや、行政改革推進の動きなども挙げられる。また、少子高齢化にともなう再編も大きな背景となっている。その後、しばらく合併が進んだ地域や進まなかった所などの議論をしている。中には、広域で行っている社会福祉法人の合併などの話しがあり、そのデメリットについて言及している。そのデメリットとして、平準化によって特色あるサービスが失われたことである(配食サービスで都市部に併せて山間部でも値段が上がったり、頻度が減ったりした)。また合併によって高齢化率が下がり、最優先課題ではなくなってしまった所もある。とくにニッチなサービスを展開してきた小さな町の社協はその独自性が失われ、価値存続が問われている。合併後社協の活動が住民から遠ざかっているところもあれば、逆に危機感を持って取り組んで再編しているところもあるとのこと。社協としては、行政により過ぎていたので、これを機に自律していくことが求められると話し合っている。どうも背景には、医療格差があり、小さい市町村の医師不足をどうつなぐのか→自治体病院のからみも手伝っているようである。
 それにしても思うのが、福祉関係者や医療関係者が専門職として住民のために地域に貢献しないと行けないとか役割を担っていると言うが、教師や営業や土木作業員や技術者などは地域に貢献しなくても良いのか。というか、地域に貢献しろとは言われない。そして、専門職がことさらに強調されるが…ケアワーカーはケアワーカーである。医師と患者であると同時に、介護員・相談員と利用者である。医師と住民でもないし、介護員と住民でもない。社会福祉法人は公益法人なのだから住民に必要とされる存在であることをアピールしろと言う。この場合のパブリックはメディア的な意味であり、住民に奉仕し、跪く存在として捉えられている。誰に飯喰わせてもらっているんだと。しかし、そもそもの社会福祉法人とは、住民から利用者に存在を変えた対象(困窮者)を相手に、その人の生命の保持や人権を尊重した取り組みをすること、そうした困窮者を【無条件】で受け入れることや採算性よりも救済のための公益性を優先してやりなさいとする役割とするパブリックである。住民とその町のことを考えるのは、市町村であり、社協である。一番大事なのは、住民の声として拾い上げるシステムであり、その中に、例えばヘルパーが在宅介護をしている時に感じたことや要望などを事業所が市町村や社協へ気軽に報告することなどは立派な役割分担であろうかと思う。
 レポートでは、離島での福祉体制とか中核市の児童相談所の役割の見直し、過疎の町だからこそ出来る介護基盤整備の取り組み、社協の合併の評価と課題などである。
 その他、バングラデシュの医師へのインタビューはとても面白かった。中に、引用されていた、晏陽初の詩がよい。
人々のなかへ行き、人々と共に住み、人々を愛し、人々から学びなさい。人々が知っていることから始め、人々が持っているものの上に築きなさい。しかし、本当に優れた指導者が仕事をした時は、その仕事が完成した時、人々はこう言うでしょう、我々がこれをやったのだと。
2012.1.23

ホームインデックス