2007.7
広がるインフォーマルな福祉活動

平野隆之「インフォーマルな福祉活動の広がりと課題」
 インフォーマルな福祉活動にあたる地域福祉は社会福祉制度に対して手作りである為効率性は高くなく、時間もかかる。しかし制度には切り捨てるものがあるのに対して考え方や行動にとらわれることがなく自由に対応し地域福祉には切り捨てる部分がない。またインフォーマルな福祉は参加主体である住民の達成感が重要な動機となる。それは制度が上であるというよりも問題解決の接近方法の違いであるに過ぎない。それに加えてインフォーマルなものは持続性が重要であるが、条件整備の脆弱性がネックとなっている。
 とはいえ、インフォーマルとは地域社会の中で生きる要援護者への家族や親せき、友人がそのものを支える無償サービス部門を指す。その意味で地域で活動するNPOは地域福祉における(セミ)フォーマルな活動として位置付ける必要がある。地域福祉の自主的な活動をフォーマルな活動(非私物化→地域をつながりを持った運営)として意識することが条件整備には欠かせないとする視点。ネットワーク形成は単なるボランタリーで親密圏だけでは限界があるからである。
 とはいえ、これまでインフォーマルな福祉活動という名称が支持されてきた。この活動を支えてきたのが地域の伝統や慣習を含んだルールであって、公式化を含む制度のルールとは違うためである。また自発性や自由という役割があっため、義務化を伴う制度とは一線を画す。その意味で、役割とルールをどう折り合いをつけていくかが重要である。
 何より地域福祉推進に関わる行政の意識の転換が必要であり、そのためには地域福祉計画が従来の計画と同様のルールからなっているという意識を捨て、インフォーマルな領域で生まれてきたルールに根差した新たな行政の役割を見出さないといけない。言い換えると、地域福祉計画では従来住民参加が強調されてきたが、むしろ行政参加のツールとして機能することが重要といえる。

インタビュー
 インフォーマルな福祉活動の位置づけを、活動の根拠が法制化されていないという意味で社会福祉法人やNPO法人、当事者団体、ボランティアなどの様々な活動主体が支援の必要性を感じて自ら積極的にかかわるボランタリーな活動として考える。
 こうした活動は先駆的とか開拓的であるが、現代においてはさらにリアリティをもった継続的な実践が求められる。
 また地域の中で継続的にかかわることで見えてくる気持ちや本音、人間関係の醸成などを活かしたより生活者の視点に立った支援がインフォーマルな福祉活動の独自性といえる。とはいえ、インフォーマルとフォーマルな活動をどう連携していくか、これまであまり議論されてこなかった。そのため、例えば地域で関わった困難ケースをどう専門職に繋ぐのかなどの方法がなかった。さらに、マネジメントやや財務管理、労務管理などへの能力が必要になる。さらに福祉法人によるインフォーマルな活動(制度の根拠がない活動)はボランタリーとは違って専門的なノウハウに裏付けられた活動であり、どちらかといえばセミフォーマルな活動と位置付けられる。この活動が活性化されれば先駆性や開拓性を加速させ、同時に新しいアプローチを示すことで、それに伴うインフォーマルな福祉活動が起こりうる。
 インフォーマルな福祉は単に制度の隙間を埋めるものと考えられているけれど、時に新しい課題の発見や、制度・施策に示唆を与える。現場で分かっていても制度設計者が把握していないことも多々ある。インフォーマルな福祉活動の成果や課題が新たな制度・施策を作るための根拠や証拠にもなる。
2013.1.1

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