2007.6
障害のある人の地域での生活を支えるために

座談会
 地域支援の福祉サービスの人達のサービス自慢が中心。
 親と離れて生活することに大きな意義がある。親が決定権を持っていることが多く、本人もその事に慣れている。よって、まずは親と離れて、自分で考え、意志や希望を表現し、自分が何が出来るのか、自分はどんな生活を望んでいるのかを知っ て欲しい。
 就労や賃金?生活保障という意味で、障害者の中には働くことが主軸でない人もいるので、そういう人々の生活についても考えないといけない。障害者自立支援では、その部分がカバーされていない。
 建築物に関して、従来あったハートビル法が、交通バリアフリー法と統合されて、バリアフリー新法となった。新法では、交通バリアフリー法に規定されていた「移動円滑化基本構想」(市町村が策定できるバリアフリー計画)について、建築物も含めて考えるようになった。つまり、規制行政、許認可行政であった建築物に、計画行政の概念が持ち込まれた。
 権利擁護のについて、障害者が持っている権利を自身が、そして皆が理解しているかが問題である。アウトリーチという方法で権利意識を掘り起こす作業があるが、その掘り起こした権利を使いこなしていくことが第一の権利擁護活動である。次に、いろいろな手続きの利用や社会参加など、一人では出来ないことを教える、手伝うなども権利擁護である。そして、障害者が行動する中で、権利侵害や不利益な取り扱いを受けたり、放置された場合には、社会に対して抗議をしたり、被害から回復するためにアクションを起こす。こうした被害からの回復が権利擁護の典型と考えている。また、障害者が差別に対して大声で叫んでも、回りが分からなければそれっきりである。つまり自分の怒りを説明できるような法的な理屈や議論、表現方法やノウハウを持つ必要がある。

山口和彦「障害者自立支援法と市町村の役割」
 自立支援法のもう一つの側面は、「町作りとしての福祉」である。それは法第1条で地域社会に実現に寄与することを目的として掲げられている。
 地域社会での福祉について、当事者と障害福祉以外の社会資源との関係作りが必要である。例えば、当事者と自治会(商工会、交通事業者、医療機関、警察、消防等々)の関係で、双方にどう関わって良いのか分からないとか認識が薄いというギャップがある。そのためには、話し合う機会やそのギャップを埋める作業が必要である。それと当事者と障害福祉以外の行政部門との関係作りである。

津幡佳伸「地域生活支援に向けた施設の役割と今後の経営」
 自立支援法では、サービスの提供体制や円滑な実施を確保するため、障害福祉計画の策定を市町村に義務づけた。このため市町村では、平成18年度から20年度までを第一期とする障害福祉計画が策定され、サービス量の見込みとその確保の方策が示された。続く第2期の障害福祉計画は、新サービス体系への移行期限も含んで、介護保険第4期事業計画と同期に行われることになる。
 市町村の障害福祉計画の中では、地域生活支援事業として「相談支援事業」「地域活動支援センター」「発達障害者支援センター」などの相談支援機能が位置づけられている。が、どのような支援をするのか分かりづらい内容となっている。とはいえ、どんなに重度で生活困難を伴う利用者であっても、地域で暮らせる条件を地域との合意で形成し、それを実現していくために、生活機能の補完や支援をすることが施設の役割として求められている。そのためにも、地域移行型ホーム、グループホームでも役割を分けなくてはならない。ケアが困難な利用者をどこが受け入れられるのか、地域移行型ホームでの2年間という受け入れ期間が経過した時点で、次のステップとして日常活動の場や就労継続支援などのサービスが地域に計画的に分布されている必要がある。
 施設機能が一元化されたが、現状では、サービス提供の方法や事業運営の内容まで、3障害を一つの施設でトータルに見ることはかなり困難であると言わざるを得ない。生活を維持していくためのサービスとは何かを考えていくとき、多機能化を法人の中だけに求めることは難しい。一定地域における障害福祉サービスの利用者は高齢者と比較して広範囲に及び、多様な福祉ニーズを持っているからである。
 一つの法人で多機能でサービスを提供するのも一つの方法であるが、一定地域に複数のサービスが存在する方が大切である。利用者がサービスに合わせて動くのでなく、サービス事業所が利用者の動ける範囲で再編された方がよい。
今後の施設経営を考えていく上で、

山下浩司「地域で自立した生活を支えるための社協の役割」
 相談窓口は、地域生活支援事業に包括的され、市町村事業化されたことから、設 置のあり方について混迷を深めていると思う。
 介護支援計画についても義務化までされなかったことから、相談支援事業所としての喜納が十分発揮されないままサービス利用者の不安へと繋がっている。
特に地域移行が叫ばれる中、受け皿としての地域生活の基盤整備はまだまだ未熟であるため、今後の大きな課題と感じられる。
 あとは社協が主体となった取り組みの紹介であった。関係者によるとか地域住民によるネットワークとか。権利擁護の重要性など。中でもインフォーマルサービスの開発は社協の役割であり掛け橋であると述べている。

京極高宣「障害者自立支援法と障害福祉施策の将来像」
 準備期間が短いとか低所得者対応がなっていないなどの批判がある。それは法律の問題というよりも施策の問題である。同法の意義について、三障害の一元化、在宅サービスに対する義務的経費化、障害福祉計画策定の義務化などがあげられる。さらに、三年間で1800億円規模の増額になる。国と地方を合わせると4000億円もの予算が新たに投入される。低所得者の負担が増えたと指摘される一方で、中・高所得者の負担は大幅に軽減されている。事業者にとっても例えば旧体系の50人定員の入所施設の経営は厳しくなるものの、多角的な事業を経営する場合には収入増になっているはずである。
 あとは、先生の利用者負担、就労支援、事業・施設報酬、精神障害者のある人の社会的入院の解消、自治体間格差などお気楽な意見が述べられている。
 あと介護保険はもともと、年齢・傷害・疾病に関わりなく保険に加入している人は誰でも利用できるというのが基本的な考え方である。障害者は現在適用外となっているが、上記の基本的な考え方に乗っ取ると、被保険者の範囲を20歳ないし25歳まで広げ、障害、疾病を問わず給付を受けられるシステムを目指すべきである。この拡大に関して、経済団体から事業主負担を増加させることは、企業の国際競争力を低下させるということで、反対意見が出されている。しかし、社会保険量の事業主負担を見てみると、年金が年13兆円、医療保険が7兆円、労働保険が2兆円であり、介護保険は5000億円程度となっている。このような状況の中で、国際競争力にどの程度影響が生じるのかはなはだ疑問である。
介護保険との統合ではなく、障害と介護の共通項が存在する中で、その部分については介護保険を適用していくことが合理的ではないかというのが、先生の視点である。
2007.11.23

ホームインデックス