2007.4
地域における医療・福祉連携の課題

インタビュー
 かつて福祉の対象者は経済的困窮者などマイナーな存在であったが、現在これだけ高齢者が増加すると、医療と福祉が連携して対処しないと追いつかなくなった。しかし、必ずしも上手く連携されているわけではない。それは価値観や重要視する知識の違いである。そのためそれらをつなぐマネジメントの思考が必要となる。そして、急性期では問題解決型が有効であるが、慢性や高齢者の医療は、目標指向型(どのようなライフプランや障害・疾病と生活を折り合いをつけるかなど)が適していると言える。そして、その目標を共有することが重要である。とはいえ、現在も医師がリーダーであり続けるので、医師の方針が尊重される傾向にあるが、意見を福祉関係者も言うべきである。その他、マネジメントやICFについて詳しく話しているが、割愛する。

関田康慶「保健・医療・福祉の連携に必要な視点」
 連携することで、予防・治療から生活まで継続的・連続的に行うことが出来るが、それぞれにおいて果たすべき役割がスムーズに行われないとそれも上手くいかないことを実例で示している。
 しかし、医療・保健・福祉分野は非公式で動くことが多く、そのため個人的にならざるを得ない。しかし、それをひとまとめの機能ユニットとすることで効率や効果を客観的に測定することが出来るようになる。その機能ユニットの役割として、
1.専門分化・技術進歩の視点
2.利用者サービスの視点
3.事業経営の視点
4.資源利用の有効活用の視点で述べられている。
 問題点として、1.地域特性による制約、2.サービス利用者特性による制約、3.サービス供給者側による制約を挙げている。
 ようするに個人の能力を引き上げるのも、機能ユニットして捉えると必要な知識が技術が明確になるし、全てを完結させるのではなく、あらゆる組織にある機能を分担しながら有効活用していくこと。しかし、人口が少ない地域や高齢者が多い地域によっては、逆に機能分化が逆効果に働くことなどのデメリットを述べている。そのため、機能ユニットが有効に機能するためには、
1.保健、医療、福祉機能ユニット間に強い関連性がある。
2.機能ユニットの関連性が相互補完的である。
3.ユニットが地理的に近接している。
4.機能ユニット間連携を個人間連携してはならない。
5.機能ユニットの関係はユニット構成員の配置や転勤、離職に影響されにくい。
6.機能ユニットの構成員は、機能ユニット間相互の通信情報に理解力がある。
7.機能ユニットの構成員は機能ユニット間で良い人間関係・信頼関係を構築している。
8.機能ユニットが情報系を共有してプロトコールに基づく情報交換を行うことが出来る。
9.機能ユニット間連携について、改善の努力が行われる仕組みがある。
10.連携により特定のユニットに負担が集中しないを挙げている。
 その後、連携のモデルの紹介がされているが、要するに専門分化を積み上げながら情報を共有し、利用者の生活のためにどう連携するかがそれぞれが自覚していることが大事であると言える。そのため、コーディネート機能が重要になってくると言える。

信川益明「地域ケアシステムの構築とその評価」
 地域医療計画は、地域特性を考慮して地域の需要を分析し、その地域にあった医療の方法論を求め、病院の整備計画を基本として、医療機能を考慮して計画を立てる。地域としては、二次医療圏が対象となる。二次医療圏とは、特殊な医療を除く一般の医療事情に対応するために設定する区域で、外来医療と入院医療をくくって圏域はいくつかの市町村で構成される。三次医療圏は、救急救命センターなど特殊な医療事情に対応するために設定。そして、地域ケアシステムで重要視されるのが、プライマリーケア→医療と患者の信頼関係を基盤とした医療の継続性の確保と、他機関との連携である。
 その後、地域リハビリテーションの重要性とか包括医療のことなどを述べられているが、割愛する。その後、機関による情報の共有の重要性などが述べられているが、上の論文でも言及されているため省略。その後、武蔵野市医師会医療機能連携モデル事業を事例にどのように連携して、地域医療を支えるべきかを論じている。

山田ゆかり「医療と介護の連携と情報の共有」
 簡単に言って、医療側の診療の情報と介護側の生活の情報は互いにリンクしていることを述べている。当たり前の話しであり、しかし、それすらも共有されていないこともまた当たり前のことである。この論文では、医療から介護(ケアマネ)にどの様に情報提供されているかの調査を行っている。ケアマネには治療状況などの情報が提供されるのは約50%程度。しかも、情報提供に快く応じてくれないケースもあるとのこと。また開業医が入院先と連携していないことも多く予想され、退院後の病状の確認もケアマネにとっては断片的にならざるを得ないことが調査結果から浮き彫りになっている。方策として、患者が自身の医療情報について、文書で交付してもらうことで、事業者にもその情報が適切に伝わることを提案している。

 論文もインタビューもすべて医師による物であるという意味で、何か作為的な物を感じるが…レポートのあった、地域包括の話しは介護・福祉サイドの実感として良く書かれている内容であった。
2012.1.23

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