2007.3
社会を支える人間関係

佐藤啓子「現代社会における人間関係の課題」
 人間関係とは、人と人であるが、それだと個別性が見えにくい。よって、自己と人(他者)、そして環境などを含むモノ(物)として捉える必要がある。
 人間関係力について、これは個人にのみ求められる資質や能力ではなく、関係をともに作力?チーム力、集団力といえるものである。それは関係を続けていこうとする、自己も人もモノもともに生かされ、創造されることに働く力のことである。
 しかし、現代はこの人間関係力がいろいろな面で発揮できにくいとされ、その要因では
 人間関係の希薄化、閉塞化、間接化、拡散化、過剰な依存などである。それを脱するには、いまある大人社会の見直し、関係を見る目を育てる、一人の人間として自分自身を見つめる、自己も他者も良いところを見つけ出す習慣作りが必要。媒介的役割の重要性。ともに気付くというあり方を大切にする。

座談会:人間関係の諸課題にいかに向き合うか
 5つの不安について?、明日が見えない、信頼できる人がいない、自分の人生が見えない、居場所がない、セーフティネットが脆弱である。
 座談会では、自殺防止センター、障害者自立生活センター、子ども家庭教育の人、と教授が2名であった。
 それぞれの立場から、悩み相談について話されている。生産世代の自殺、子どもの引きこもり、ニート、障害者の人付き合いの狭さ、差別などの紹介である。教授達は、現代のモノ化による自分らしさや情緒の喪失という?富裕化社会がもたらす社会病理であると言える。また、多忙化により、人間関係の希薄化などがなされ、エアポケットにより犯罪が発生する。さらに豊かな社会では、個人単位で経済が回ってあえて他者との関係を求めなくても良くなっている。課題達成型のため、それ以外の用事をしなくても良いようになり、メンテナンスが軽視される。
 家族の中に企業倫理が入り込み、子どもが安らぐことが出来ない。例えば、今日あったことを3分以内で話せとか効率を求めるようなことがある。
 その後は、人との絆の大切さとか、ネットワークを作るとか、人の話をじっくりと傾聴するとかそういうのをやっていこうということであった。

柏女霊峰「子どもが抱える人間関係の課題と支援の視点」
 昨今のステレオタイプの子ども像から、支援に必要とされる視点として、
 発達段階とライフコースに応じた切れ目のない支援
 乳児期における育児休業制度の拡大、学童期には教育環境などの整備、思春期には自我同一性に危機にもなるため、専門的な相談支援態勢、健全育成サービスがエアポケットになっている。
 親子の絆の形成と紡ぎ直し
 第三者の存在が必要。子育てにはしないでよい苦労としたほうがよい苦労がある。
 多様な人との関わりの保障
 非共稼ぎ家庭や育児休業中の親子に対し、乳幼児の健全な育成のための「基本保育」とも言うべき新たな保育制度を整備すべきである。
 育ちなおし、引き受けることへの支援
 虐待を受けたり過ちを犯したりして社会的養護の下にある子ども達に対する育ちなおしの支援が必要。さらに施設入所児は入所前の環境による痛手、入所による家庭や友と別れる痛手、そして不適切な施設生活そのものがもたらす痛手である。
 子どもを守りきる
 最後に上記のことを最優先させたシステムの確立が必要である。

小林繁市「障害のある人の地域移行に伴う人間関係の課題」
 いわゆる施設よりも地域で過ごした方が良いということについて、当事者の意見としていくつか挙げられている。
 閉鎖性、指導の名の下での権力性、狭い居住空間と自由があまりないことに対する悩みである。たとえ支援は受けたとしても、独立した人間として尊重され、自ら責任を負って選択し、決定する生活が出来ることを強く望んでいる。また地域移行は入所施設からの移行では、1%にも満たないとされ、社会資源の少なさもさることながら、周囲の人達の自立意識の欠如にあると思われる。

有馬良建「虐待を受けた高齢者の実態と福祉アプローチ」
 2006年4月より高齢者の養護者に対する支援などに関する法律〜いわゆる高齢者虐待防止が施行される。介護を担うものについて、養護者と要介護施設従事者などにわけ虐待の禁止を定めている。
 虐待には、家庭内であれば、養護者による年金搾取などの経済的な要因の他、社会的孤立、人間関係などが報告されている。施設職員に対してはまだ取り組みが遅れており、不適切行為の線引きなどが曖昧なままである。共通して、本質的実態にはまだ十分に明らかにされていない。
 人間関係における虐待は、他人と身内の関係で大きく変わるが、ストレスが原因であり、養護者と高齢者の人間関係は、長いライフヒストリーの中で形成されるから一朝一夕に修復することができない。施設従事者の虐待は、専門性の欠如によるネグレクトが虐待につながっている。〜評価基準の引き上げなどにより、サービスのチェックや質を高めていくことが必要。

藤井悟「地域の人間関係の諸課題に対する社会福祉協議会の役割」
 地域の希薄性や地域住民の孤立化などを論じている。
 また介護保険によって社協が介護保険の事業者にならざるを得なくなったこと。しかし、民間福祉の総合調整をしていかないといけないことなどに言及している。
2007.11.23

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