2007.1
進行する介護保険改革の中の2006年改定を振り返る

藤井賢一郎「介護保険改革が現場に与えた影響」
 全体の改革の中で最も時間をかけて進められているのが「予防重視型システム」の確立である。地域包括支援センター設置(猶予)、利用者の再認定による新予防給付、居宅介護支援事業所に委託できる介護予防支援業務の経過措置が延長されている。地域包括支援は、国の基準に従って2?3万人に一箇所設置するかどうかが一つの生命線になっている。対応に追われて何も出来ないというセンターの多くは5万人 を超えているし、中には15万人をカバーしようとしているところもある。
 またニーズの潜在がかなりあり、特定高齢者把握が十分に出来ていないとか、予防給付も次回改定の削りしろという感を改めて強く持たざるを得ない。また報酬がもらえる必要最低限のことをやればよいと言う介護報酬至上主義的な発想が根強い。
 過去の新規サービスと比較して、今回の新規サービス(地域密着サービス、小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護、療養通所介護など)への事業者側の参入意欲が弱い。これは報酬による誘導がほとんどないためであるが、これらの新規サービス?地域密着が出来る事業者は質が高いことを認めているという面もある。
 医療と介護の連携、医療の再編?療養病床の減少が行われた。次は老健施設の再編成である。今後益々重要になるのは、「事業者力」を高めることであり、そのためにもまじめで質の高い事業者が高く評価される(まじめだけでは評価に値しない)仕組みが大切である。

藤井博志「地域密着型サービスの本質とその展開課題」
 地域密着型サービス群は、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護である。
 保険者足る市町村がその整備計画立案と事業者の指定権限を有し、厚労省大臣が定める基準の範囲で当該市町村における指定基準を定めることができる。さらに地域包括支援センターとの連携および地域包括支援センター運営協議会と地域密着型サービス運営委員会の設置、小規模多機能型居宅介護施設の開催が義務づけられて いる。
 中でも地域密着型サービスの本質は宅老所であり、宅老所が目指したのは、大規模集団ケアがなじまない認知症高齢者へのケアということのみならず、その人らしく生活を全うするのを支えることを目指している。
 小規模多機能ケアは「通い」「泊まり」「訪問」「住む」(制度化された小規模多機能型居宅介護には「住む」機能はない)の4機能をさす。その本質は、個別ケアと支援プロセス重視の非定型なケアである。
地域への移行において大事なのは、


宮田喜代志「ニーズに寄り添う人間性回復の福祉サービスを」
 小規模多機能型サービスの論文。小規模多機能という言葉は、高齢者介護研究会の報告書「2015年の高齢者介護」(平成15年5月)によって公式に伝えられるようになる。
いわゆる365日24時間対応と切れ目のない在宅サービスの提供を保障することを目指そうとするもの。
制度的には、介護サービス受給者全体の4.2%が地域密着型のサービスを受けており、小規模多機能サービスの利用はわずか100人である。しかし、統計上では、自宅にこだわらない新しい居住形態への選択意識が動き始めている。
あとは、論者の施設自慢であった。

杉山みち子「栄養ケア・マネジメントの浸透状況と今後の課題」
 平成17年の改正介護保険制度により、施設サービスに栄養ケア・マネジメントが制度上位置づけられる。加算がつくのは、おもに管理栄養士配置、栄養マネジメント、経口移行加算など栄養ケア・マネジメントに管理栄養士を配置し、多職種協同で入所者の”食べること“を支援するという理念がよく浸透したとする。あとは、調査結果に基づく、良かった点や課題について述べられている。あとは、継続的な品質改善活動?CQIが強調されている。

飯村史恵「特別老人ホームにおける「看取り介護」の課題」
 今回の改正で、入所者の重度化などへの対応を考慮し、特養に、重度化対応加算が設けられ、さらに一定の要件を満たした場合、看取り介護加算が新設された。
 50年前には日本人の多くが自宅で生まれ、自宅で最後を迎えていたが、それが病院へほとんどシフトしている。
 看取り介護加算は、常勤の看護師の配置、夜間などのオンコール体制などが前提となっているが、チームワークや医療との協同体制の再構築が求められている。また、終末期の利用者に関しても、バイタルチェックや食事摂取だけではなく、その人が人生を終えようとしている今、どのようなことをしているのかを言語化し記録に残していくことがケアの質の向上に貢献し、さらには特養の社会的な評価を高めることに繋がるのではないか。
 看取りは高齢者本人を取り巻く個別状況の差異が象徴的に現れる時期であり、真の意味での個別支援とそれを支える施設の組織力が試されると言っていい。
2007.10.21

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