2006.9
自治体、最新事情

新藤宗幸「新たな時代の都道府県の役割・市町村の役割」
 2000年に機関委任事務制度の全廃、国地方係争処理委員会の設置、必置規制の緩和などを盛り込んだ「地方分権一括法」が施行されてから6年が過ぎた。しかし、首長、地方議会、自治体職員に、これらの意義が浸透しているとは言えない。
 機関委任によって、首長と主務大臣は対等になっている。国に従順である必要はない。また、係争処理は行政から法による統制へと変化している。必置規制もまた、自治体が地域の実情に応じて必要な専門職や機関を作って良いことを意味しているがそうなっていない。
 さらに財源の確保のため、地方自治体の合併が推進されたが、従来の箱もの行政では今後さらに財政は苦しくなるだろう。福祉行政も、従う必要のないような国の指導にしたがっている。最近では、市場化テストや指定管理者制度を活用し、安易な市場原理に委ねていく傾向が散見される。目先を少し変えただけでは、深刻な財政状況が改善はされない。
 福祉は縦割りから横断的で総合的に見直していくことが重要である。市民の手で運営していくことが求められる。分権とは、垂直的な権限委譲ではなく、広域自治体と基礎自治体の間の権利の再編成を視野に入れたものではなくてはならない。市民の権利性を強化する仕組みを作らないといけない。
 2006年7月に骨太の方針2006が決定し、歳出・歳入一体改革のもと、さらなる地方交付税原資の圧縮、教員を含めた公務員人件費の見直し、市場化テストの徹底など、地方の要求と対立する内容になっている、国の地方に対する規律密度は維持されたまま、財源だけが圧縮されると言う色彩が一層強まることが予想される。

渋川智明「地域の福祉・医療を支える自治体の取り組み」
 地域包括支援センターについて。ケアマネが介護予防プランを委託された場合、作成数は一人あたり8件に制限されている。その上、重度者のケアプラン作成料は、一万から一万三千円であるのに対し、介護予防プラン作成料は、一件あたり四千円と低く押さえられている。そのため、事業者所属のケアマネは介護予防のケアプランを断るケースが出ている。あとは、詳しく、介護予防のためのプログラムやサービスは一般に低く押さえられていることを述べている。さらに、療養病床の縮減や費用負担の増減など。
 他、高齢者福祉関係の最近の動向について簡単に述べています。
 
インタビュー
 住民に信頼される自治体の条件(北川正恭)
 1993年の地方分権推進に関する決議から三位一体改革の流れは、実は1990年代の政治改革を背景としており、実は選挙制度改革と表裏一体になっている。少選挙区制度が導入されることにより、人を選ぶ選挙から政策を選ぶ選挙へと変わっていった。〜中央集権から分権化への流れは止まらないが、首長の中には以前として中央に依存する人が多い。自立して行くしか道はないと意識することが大切である。そのためには、情報は原則公開のもと住民に責任感を持ってもらう必要がある。
 国に700兆円以上の借金が出来た現実に対し、時の為政者だけが責任をとるのではなく、それを選んだ国民の意識構造を変えないといけない。これまで財源を国に握られていたために、地方自治体は国に対する説明責任を重視してきた。主権者である住民に対する説明責任を果たしてこなかった。
 国の補助金の一般財源化の点で言えば、例えば、公立保育所の運営費がある。しかし、実際の運用には、国が政省令によって基準を示しているため、地方自治体の独自性が発揮できないという実情がある。財源委譲だけではなく、ソフトの部分も地方自治体が独自に運用できるようにしなければならない。
 きちんと自分の政策を主張すれば住民は理解してくれる。むしろ、負担と給付に関係について住民はよく知っている。これまでは、国の言い分を住民に押しつけ、きちんと説明をしてこなかったために、行政に対して疑心暗鬼になっている。
 地方に任せたら、もっと大変なことになるという国と地方自治体の間にあるパターナリズムが介護、福祉行政に強くあると感じている。〜失敗する自由を地方自治に与えることによって、住民は目覚めるのではないか。
 
 私たちがめざす協働の街づくり(白井文)
 ここでも情報公開の重要性と市民に対してしっかりとした説明をすることの大切さを述べている。また、現役世代が社会のありよう、地域のありようについて何も発信してこなかった付けが今来ていることを述べている。
2006.9.27

ホームインデックス