2006.6
今、福祉現場に求められる専門性

蟻塚昌克「福祉現場の専門性を高める課題」
我が国の福祉従事者は170万人を超えている。一般に、その中核は社会福祉士(7万人)・介護福祉士(46万人)・保育士などの有資格者である。
およそどの専門職もそうだが、福祉専門職にも専門知識や専門技術に裏打ちされた力量が必要である。そのうえで、人間の尊厳を守るという透徹した倫理が求められる。
現在の所、施設長の資格要件は社会福祉主事であるが、はたして施設長として臨床から施設の経営管理、地域福祉の参画へと対応できるであろうか。経験が物を言うとは一面の真理であるが、客観的に見れば、答えはノーである。職員への理論的素養を踏まえた適切なスーパーバイズが出来ない施設長では困るのだ。この際、半世紀以上の前野福祉3三法体制の縛りを脱して、施設長の要件をずばり社会福祉士にするべき段階に来ているように見える。
ISO(国際標準化機構)〜品質管理・保障のための物で、もともと建設事業関連で取り組みが始まり、やがて公共事業・政府調達の条件とされるということで、運輸・商業にも波及した。福祉事業でもISOの取得の動きはあり、

しかし、その一方で福祉職の人材確保とは逆行し、介護労働者の21%が離職し、全産業の離職率16%を下回る。特別養護老人ホームの平均在職期間は5年2ヶ月。施設全体では6年5ヶ月である。良いサービスは、担い手への良い待遇では不変である。

その後は実践レポート、資格毎(社会福祉士・介護福祉士・保育士・PSW・PT・OT)のレポートと続いている。共通して、研修の重要性と専門性を高めるための実際に触れている。専門性では、業務を見直したり、体系づけたり、施設内研修を通して格差を付け個々人に責任を持たせたりといった感じである。

対談:福祉現場における専門性とは何か
単に自分たちは専門性を持った専門職であると主張するよりも、誰にでも出来ることだけど、この人達にはとても敵わないと利用者や他分野の専門職に認められることが必要である。例えば、介護福祉士に出来ることは看護師でも出来るが、「介護福祉士が行うことにはとても敵わない。だから介護福祉士に任せたいと認められることである。→介護の専門性を考えることである。
すべての福祉サービスに共通するのは「生活支援」である。生涯発達の視点から支援や、利用者の能力を可能な限り引き出しながら、生活を支えていくことです。福祉の専門性は十分に認知されていない現状であるも。
良いケアのためには良い人材が必要である。事業者の理念も大事だが、従事者一人一人の専門職としての自覚が求められる。他分野に比べて福祉の現場には燃え尽き症候群が多い。これを防ぐには、自分の行っていることに誇りを持ってもらうことが必要である。常勤・非常勤は雇用形態の違いであって能力の差ではない。しかし、非常勤であることで室を低く見られている傾向もあり、改善していかないといけない。
専門資格を有する専門職を多く配置することにより、報酬への加算するといったインセンティブ(誘導)を働かせることも必要である。
現在の福祉現場では、平均すると3年くらいで勤めている施設をやめる、他の事業者に移るといった雇用の流動化が起こっている。理想と現実が折り合わない。また自己実現がなかなか出来ないというのが本音である。さらに現場でやりがいを見いださない。中堅層がしっかりサービスの質を支え、後輩指導が出来れば、新人がやる気をなくしてやめていくことも減り、管理層からの指示を的確に現場に反映させていくことも必要となるでしょう。
現場の専門性を上げるためには、まずそれなりの報酬を支払うことの出来る財源の確保。法律知識を身につける。他職種との関連知識の強化。
ソーシャルワークでもケアワークの経験の有無という物は大きい。利用者へのサービス提供を想定する際にもケアワークで培った経験を活かすことが出来る。社会福祉士でも介護福祉士でも、福祉従事者に共通して求められる専門性と、それぞれに求められる専門性がある。そして両者とも福祉現場にとって、又専門職としての能力を発揮するために大事な物である。
医療分野でも技術が高く評判の良い医師と、能力の低い医師がいますし、看護師にも同じ事がいえる。福祉現場でも専門職における能力の幅が見られるが、医療分野に比べてこの幅が広い。福祉現場の専門性向上を考える上では、上にいる人の能力をさらに高めていくことももちろん必要だが、下にいる人達の能力をいかに高めていくかを考えなければならない。

2006.8.3

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