2006.3
食と福祉

服部幸應「日本人の食」
2005年7月に成立した「食育基本法」について。食という字は人に良いと書く。つまり食育とは、人を良く育むこと、体の健康と心の豊かさを目指すための目安である。
不健康な食生活は、例え栄養を学ぶ学生でも改善は難しく、様々なところで調査を実施した結果、食の週間・しつけは3歳から8歳までが勝負。その後は変えようと思っても変わらないという結論に達したとのこと。
また、最近危惧するのは、家族で同じものを食べていないこと。人が育つ上で家族が同じものを食べると言うことは非常に重要なことで、その食卓は、生きる上で必要なことを自然に学ぶことの出来る場である。
現在80歳を超えている人は、子供の時は相当きちんとした食生活をしていた人達であり、ただタンパク質が足りなかった。それが足りていれば、寝たきりになる時期はもっと遅らせることが出来た。今の若者の食生活の乱れは、平均寿命の数字をがくっと下げることだろう。
現在の食糧自給率は先進国では最下位である。40年前イギリスは46%しかなかったが、現在は77%まで上がっている。日本は73%あったものを40年間で半分まで落としてしまった。原因の一つに、農業従事者などの激減。さらに、日本は世界の中で一番多く残飯を出している。世界は65億人いる内、豊かな生活は8%で、日本人は全て入っている。日本で消費している食料は自給、輸入合わせて6700トン。そのうち2300トンを捨てている。まぁ、骨や毛など食べられないものも含まれているが、それを省いても、720万トンであり、金額に直すとおよそ11兆1000億円である。日本の自給率を金額に直すと12兆4000億円であり、自給率をほとんど捨てている計算になる。

座談会:食と福祉を考える
食育基本法とは、国、地方自治体のみならず国民、学校や福祉関係者、食品関連事業者などに食育の推進に関する責務が明記され、保育所を中心にその実践が進められている。また、生活の根幹になる食は、福祉サービスにおいて非常に重要な課題であるが、昨今の制度改革の中で、栄養ケア・マネジメントや食費の自己負担化など、様々な見直しが行われている。
管理栄養士の立場として、栄養士と違った視点、管理栄養士は人の栄養状態を管理すること。栄養士は栄養学に基づいた献立作成や調理業務などを行うことだと考える。また、福祉は健康ではない人に食事を提供する以上、これからは様々な業種が連携してきめ細やかにする必要がある。摂食障害、低栄養問題、経口摂食移行改善など。
福祉施設においては、1990年代から食のノーマライゼーションが意識されてきたと感じている。例えば、食事を摂る時間や雰囲気、好きなものを選ぶことが出来、おいしく適温で食べるという、家庭では当たり前のことを実現しようとする傾向も出てきた。ただ、それをやっているところと層でないところの二極化が進んでいる。
保育所の食育に関する取り組みについて?昼ぐらいしか提供しないので、その前後、家庭との連携が大事なことなど。栄養士は配置が義務づけられていないが、保育所に栄養士がいるところも多数ある。が、調理との役割が明確になっていない。
今まで50人、100人といった集団を対象として考えてきたものが、栄養ケア・マネジメントによって、個別に栄養状態を評価し、必要なケアを多職種協働で取り組みという方向が明確になった。
食育の取り組みについては、服部さんの上記のインタビュー記事を参照のこと。
2005年10月から介護保険施設での食費・居住費が利用者負担となり、障害者施設でも障害者自立支援法の成立によって、その方向性が明確になっている。このことは、利用者に納得できるような食を提供していかないといけないことを意味している。また、現場の工夫次第で、個別ニーズに対応できる方法がまだまだあると思う。

水野清子「子どもの心をはぐくむ食事と食環境」
子どもの健康状態や成長状況は食事の内容によって左右されるが、たとえ、栄養的にバランスの取れた食事を適切に与えられても、それを心でおいしいと感じて摂取しなければ、食事の効果は十分に発揮されないであろう。これはかなり前に聞いた話だが、乳児院で過ごす子どもに家庭で育っている子どもと同一内容の食事を与えても、乳児院の子どもの発育は劣るというのである。このことから、食環境は子どもの心に何らかの影響を及ぼし、それが間接的に発育に影響する。乳児院の人との関わりが薄い中での食環境は、子どもの発育に影響するというもの。
と、保育所では、人との関わりを大切にした相互性に着目し、食事を提供することの大切さを論じている。

杉山みち子「栄養ケアマネジメントの目指すもの」
高齢者の低栄養状態の問題は、アメリカの評価表を下に原因を追及。その結果、体重の減少と血清アルブミンの低下に集約された。しかし、残量は少なく、食事の質にも配慮されているとのこと。しかし、一律の基準で食事を提供しており、個々の低栄養状態の利用者が、その改善のために補強すべき栄養摂取量を実は接種できていない状況があるという認識が十分ではなかった。
さらに栄養ケアマネジメントの評価が介護報酬に盛り込まれるために、各種の研究、研修、学会の設立などでがんばって、平成17年10月から、栄養ケアマネジメントに対する評価が介護報酬に位置づけられることとなった。
実際には経口移行や在宅での栄養改善、低栄養改善などは相談を受けていく中で事例を集積していくことが大切である。そもそも栄養ケアマネジメントは、生活習慣病対策のように食事を規制するものではなく、楽しく、ポジティブな取り組みが期待されており、栄養相談も明るい雰囲気で進めていく必要がある。
連携についても論じられているが、座談会を参照のこと。
2008.1.14

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