2006.11
地域社会を呼び起こすコミュニティファンド

大橋謙策「博愛の精神に基づく寄付の文化の醸成」
 2006年は共同募金が創設されて60周年。敗戦から膨大な生活困窮者への1947年に国民助け合い共同募金運動として展開、翌年、シンボルとなる赤い羽が登場。51年には社会福祉事業法に共同募金が法的に位置づけられる。59年には歳末助け合いと統合され運動期間も1ヶ月から三ヶ月に拡大。その後、67年に社協の募金配分で行政から勧告を受け、国民からの寄付である募金を、狭い意味での生活困窮者や社会福祉施設に金銭贈呈することが共同募金であると誘導、強調される。
 その後の改正や会議等について述べているが割愛。また、ボランタリーとは何かの議論も展開されているがそれも割愛。
 中央協同募金会は2005年に常設の企画推進委員会を設け、共同募金のあり方を改めて議論することになる。2006年5月に「地域を作る市民を応援するファンドに共同募金は変わります」という方向性が打ち出されている。要は、住民主体の概念である。
 信頼出来る募金社と優れた配分者の二つの機能調整を通じて、地域自立生活支援に必要な地域福祉機能を財政面から支えること。現在、共同募金以外も含め年間100億円に達している寄付の状況、まさに民間財源の資金造成・配分という機能を通じて、新たな社会哲学、社会システム作りに大いに貢献出来るはずである。

茶野順子「地域社会を支えるコミュニティ財団と地域ファンド」
 アメリカの寄付文化の俯瞰。最初にコミュニティ財団が設立されたのは1914年の久リーブランドにおいてであった。創設者は法律家であり、グルーブランド信託銀行の頭取であったフレデリック・ゴフである。その当時、カーネギーやロックフェラーが財団や福祉事業を展開していた時期でもあった。グリーブランドのコミュニティ財団の特徴は、複数の慈善基金を資金としてまとめて運用し、その運用益を持って事業を行ったことである。
個人財団と違い、コミュニティ財団は共同出資による効率的運営が出来、人々の社会貢献への志を地域で受けとめ、効果的な配分によって財団の資金を造成し、運用益の効率的配分によって地域に役立てることはコミュニティ財団の重要な役割である。
 日本でのコミュニティ財団は「マンション型」と言われるのは、一般基金と違って寄付者が師とを特定する個別の基金と思われているからである。
 コミュニティ財団の役割は、資金の提供だけではなく、資金を有効に活かすためのネットワーク作り、円滑なコミュニケーションの推進を図る役割を果たす。さらに、問題解決に留まらず、より主体的に地域の特性やニーズに基づいて地域のあるべき姿を見いだし、青写真に沿った地域作りのための手手の活動を行うことが期待されている。
 コミュニティ財団では、助成活動に携わるプログラムオフィサー、投資の専門家、募金活動の専門家に代表される三つの専門家が必要となる。
 特に福祉職にとってはプログラムオフィサーへの期待が掛かる。これは連絡調整、非営利組織など助成する組織の育成・強化、地域住民のニーズとサービスを見付けること。地域の課題を見いだすことなどである。日本において、受動的に市民からのアプローチを待っている姿があり、また市民活動団体などに支援することによって市民社会を活性化させることでムード的に地域の活性化を望んでいる感があり、アメリカのような徹底したリアリズムと戦略に裏打ちされた資金集めとはやや趣が異なるように思うことである。

座談会:地域を作る市民を応援する共同募金を目指して
 人口減少社会であり、地域社会が存続するには、地域を作る市民活動を支える仕組みが必要である。
 NPOの民間性・市民性を育てるには、循環型の共同募金にすることが必要である。
 地域課題に市民が当事者として関わることを促進する共同募金運動を社会福祉協議会として情報公開やどの様に配分したのかをよりオープンにする必要がある。
 新たな個人募金の開拓や地域課題解決型の募金設定を検討するべきである。そのためにはテーマ募金などが有効ではないかと思う。あるいは、社会的課題をキャンペーン展開することにより解決への提言や意識化を図ることも大切である(共感を呼ぶための広報活動)。この地域だからこそ、このテーマという地域性を踏まえたテーマも大事。など

 その他、実践研究/レポートが4題そのうち総括は和田敏明教授。特にプログラムオフィサーは日本で言えばコミュニティワーカーのような機能。プログラムオフィサーはその上で助成配分の決定までの権限があるためコミュニティワーカーよりも求められる専門性はより高いと感じた。

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