2005.9
ケアマネイジメント再考

白沢政和「ケアマネイジメントの課題と今後の方向性」
介護保険下におけるケアマネイジメントは、介護度悪化を予防し得なかったから、保険財源が悪化したという前提で議論が進められている。しかし、中立公正が保ちにくいケアマネイジメントシステムという制度設計上の問題が大きい。ケアマネは平成10年の試験実施により現在33万人以上を輩出し6万人が在宅で働いているとされる。
アメリカではストレングスモデルによるケアマネの開発が主流である。まわりの資源や自分の力を最大限活用しようとするモデル。精神障害者が対象の中心。しかし、日本のような介護予防ばかりにスポットを浴びせるのはストレングスの一部にすぎない。
また、日本のようにケアマネをサービス事業者が実施している国は他にはない。中立公正なケアプラン作成を妨げている。〜事業者からも保険者からも独立した中立公正な機関がケアマネを実施することが理想である。地域包括支援センターを介護予防の拠点にするが、センターをコントロールセンターとして居宅介護支援事業所の透明性確保のチェック機関とするべきである。
ケアマネージャーは介護保険サービスを活用しない限り介護報酬を得ることが出来ない。このことが地域の多様な社会資源を活用することを困難にし、保険サービスの手配人に陥らせていることになっている。〜イギリスのインテンシブ・ケアマネは、ケアマネが本当に介護の必要な人に限定し、軽度者については、情報提供サービスにとどめ自分でセルフケアを心がけるようにするもの。
障害者領域では、支援費サービスを利用している在宅障害者のごく一部が活用しているにすぎない。またケアマネ従事者は介護支援専門員とは違い、研修のみでなれ、試験などが行われないために一定の水準を担保出来ていないのが現状である。
障害者自立支援法では、ケアマネが導入され、人口30万人にそれぞれ2箇所設置される。その際、市町村障害者生活支援事業(身障)、地域療育など支援事業(知的)、地域生活支援センター(精神)の統合をどう図るかが課題である。あるいは、介護保険との統合の中でどうケアマネの整合性を図るのか。しかし、障害者のケアマネは雇用や社会参加が問題となってくるため、介護一辺倒の介護保険のケアマネにとっても刺激となる。

服部万里子「介護予防の課題とケアマネイジメント」
高齢に伴う疾病や機能低下、居住環境や人的なサポート、家族や近隣の協力、介護サービスを活用し、最終場面まで人間らしく生きる権利をトータルに調整し実施していくのが本来のケアマネである。しかし現在論議されている介護予防は、給付費削減のために要介護状態の軽度と中継度にサービス利用を分化し、軽度者に特化し介護予防マネイジメントと新予防給付が導入される。介護予防マネイジメントは地域包括支援センターの保健師がおこうが、そこから委託されるのは、新に都道府県から予防策性プラン作成の指定を受けた居宅介護支援事業所である。そうでなければ居宅介護支援事業所のケアマネが介護予防ケアマネを担当することは出来ないのである。
そもそも要介護にならないよう、または要介護状態の進行を遅らせるように心身機能を鍛えるのが本来の介護予防であるとし、65歳以上人口の5%を選別し、予防トレーニングを中心にマネイジメント行う。したがって、介護予防のケアマネの対象は要支援1.2と65歳以上人口の5%とする。
内容は生活習慣病の予防検診、介護予防検診、体力測定をうけてその結果からサービスが選定される。要支援の定義が、一定期間日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態から常時介護を要する状態の軽減もしくは悪化の防止に特に資する支援を要する状態と追加される。

高原伸幸「障害者ケアマネイジメントの実情と課題」
市町村障害者生活支援事業を実施する立場で、自立支援法が自立、エンパワメント、権利擁護アドボカシーの実践基盤の整備こそが必要であると説く。しかし、身障と知的に関しては一般財源化され、予算が縮小している。また、ケアマネの人材育成で4万人ほど輩出しているが、働く場所がなく実践現場から遠ざかっている。
地域移行は、単に施設から地域だけではなく、地域で暮らしている人が継続して暮らし続けるようにサポートすることも含まれてくる。そのような地域移行のモデル事例を積み重ねていくことが必要である。障害者自立支援法におけるケアマネの制度化とは「支給決定プロセスの透明化」である。社会史源の開発やエンパワメントプログラムは市町村が実施主体の地域生活支援事業の中の相談支援事業で実施されることになるが、この事業の財源は補助金(地方交付税)がベースになる。

斎藤学「ケアマネージャー養成に必要な視点」
2006年の制度改正に向けて厚労省は介護支援専門員の養成について「介護支援専門員の生涯研修体系のあり方に関する研究委員会」において、基本プロセスが不十分、ケアカンファレンスが不十分、主治医をはじめとする他職種連携の強化があげられている。スーパーバイズを受けられずに不安を持ちながら一人で業務を進めている、業務範囲が標準化されていないこと、支援困難事例を抱えるなどで業務負担が課題となっていることが指摘されている。

黒田輝政「認知症をもっと知ってください」
認知症に対する偏見〜心を失った空っぽの人というイメージを持たれている。社会が病気に対する正しい認識をしてくれると患者も安心して暮らせる。これまでとかく暴力、徘徊、過食、弄便といった問題行動に目に行きがちであった。こうした周辺・随伴症状ではなく、中核症状、つまり記憶障害、認知障害そのものに迫って、その人の言動や行動の背景を考えてほしい。などである。
2005.12.10

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