2005.8
社会福祉と情報マネジメント

座談会:今、何故社会福祉の情報マネジメントが必要か
 個人情報保護や情報提供・開示の問題を含め、福祉領域で情報をどう使っていくのか。介護保険でNPOや企業が参入し情報量が増えたにもかかわらず、受け手も発信手も上手く活用されていないのが現状である。受け手の教育や啓蒙もまた必要になってくると思われる。
 あるいは施設内での作り出される情報量は増えたがどう管理するかが深く検討されていない。リスク情報の開示までを含めどのように行っていくか。開示するべき情報、保護するべき情報の取り扱いはコンプライアンス(法令遵守・経営の適正さ・ビジネスルールの遵守など)に関わる。
 わかりやすい情報の提供と選択支援する体制の構築が必要?第三者評価による情報の開示の義務化とは別に…また開示のためのケース記録となれば実戦と記録が皮相的な物になってしまう。とはいえ、内部情報が利用者と無縁のところで出回るようでは困る。
 福祉サービスを創造するための情報収集・ニーズの把握も大切である。しかし予算が付かないで廃止になったり、個人情報保護の観点からニーズを把握しようにも実施がかなり難しくなっている(保護という一面的な物に目がいきすぎている)?本来保護法は、情報の有用性を認め、それを何とかIT社会で活かしていくための保護という考え方だから、本当は活用の妨げにならないはず。まずもって何気なく今までやってきたことは、良かったこともあったけど、実はいけないこともあったと整理することである。その枠組みがないからなんでも個人情報だから…となってしまうのではないか。理念は大事であるが、理念に基づいてルールを具体化した物をきちんと作り、この様に情報を管理し、活用しますと言うことを安全管理措置も含めてもう少し詳しく定め、公表するべきである。
 情報はお互いにやり取りをしながら、利用者も事業者もダイナミックなプロセスの中で活用していく物だと思う。そういう共通の認識のもとに色々な仕組み作りや工夫を重ねていくべきである。

森本佳樹「地域福祉と福祉情報」
 福祉情報化の目的として
 その後ネットワークや福祉情報?ITや上記の4.に関連する歴史的な俯瞰がなされている。特に介護保険は世界で初めてITによる情報化を前提に設計された制度であると言える。
 そもそも相談援助は原理的にはニーズ情報とサービス情報をマッチングすることでケアに結びつけ、そこから生じた情報を新たなニーズ把握やサービスの工夫に繋げていく「マッチング・システム」としてとらえる必要がある。特に地域福祉では地域福祉を構成する様々な要素間での調整を伴ったマッチングが必要である。それには、情報を媒体としてここの構成要素が構造化されることによって、生活者としての全体性や連続性を保ったまま支援することが目的になる。
 OA化はサービス提供の生産性の向上・人員を含めた効率の向上が図られる。そしてサービスの高度化(科学性・分析・共通性・個別性の分別)を達成する可能性がある。
 情報の非対称性の解消、情報の標準化など課題について言及している。

若穂井透「情報公開と透明性の確保」
 社会福祉法における情報を巡る規程は、社会福祉法人に対して
 a.24条で事業運営の透明性の確保、b.44条4項で時牛報告などを閲覧に供する義務。
 経営者に対して
 c.75条1項で情報の提供、d.76条で利用契約の申込み時の説明、e.77条で利用契約の成立時の書面交付、f.79条で誇大広告の禁止、g.75条2項で情報提供体制の整備に関する国及び地方公共団体の責務を規定している。
 d.e.は契約の適正化に関する規程であるが、それは透明性の確保と共に情報提供・情報開示を担保する制度と理解することが出来る。
 大まかにまとめると、措置制度では行政による情報提供で事足りたが、社会福祉基礎構造改革後は、事業者による情報提供の重要性が増したと考えるべきである。

新津ふみ子「利用者が求める介護情報とは」
 利用者が施設などの福祉サービスを選択しようとする際には、1.利用者が情報を選択したいというニーズを持っていること。2.情報を容易に入手出来ること。3.利用者がサービスを選択する時に役立つ情報内容であることが関連し、行動が促されると考えられる。利用者にとって、「どの様な環境で、どの様なサービスが受けられるのか、費用はどのくらいだろうか」が一番知りたい情報である。それを念頭に事業者は情報を提供するべきである。その具体性が欠けているのが現状である。

 他インタビュー、事例が2題、トピックスで福祉の情報マネジメントを支えるツールと題した物がある。特にトピックスは広く目配せしており情報公開や活用をする際にはチョットした役立つ内容となっていると思われる。

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