2005.6
「福祉人材」の課題/検証:震災と福祉救援・復興の歩み

中島健一「福祉人材の今日的課題と福祉専門職に求められる資質」
 人材についての変化は、昭和63年成立の社会福祉士・介護福祉士?国家資格が成立したこと。そして、学歴の大切さ。それまでのボランタリーや学歴軽視の流れが変わっていった事による(アメリカでは大学院まで進めていた)。
 とはいえ、社会福祉士≒ソーシャルワーク(以下SW)の位置づけが明確ではない。SWは地域・機関・人をつなぐ仕事であり、つなぐことのチームワークの要である。
 介護福祉士≒ケアワーカー(以下CW)もまた明確ではない。従事者のレベルアップを考えるなら、介護福祉士をCWの基礎資格にするべきである。しかしそれだとマンパワーが激減するので、基礎研修のプログラムとか養成課程の免除などで取りやすくするべきである。
 またケアの位置づけ、やるべき事を列記するのではなく、個別のニーズや主体性など必要なケア?生活全体をアセスメントし設計することがCWの専門性である。
 経営者にもとめるのは、OJTとOff-JTの継続的な実施である。またボランティア教育、職員に理念や理想を伝えるなど質の貢献に資して欲しい。

齊場三十四「求められるケアマネジメントの担い手とその資質」
 ケアマネジメント(以下CM)の質の向上について。介護報酬の不正請求が2003で56億円の返還要求があった。前年度は27億4千万と、ほぼ倍増であった。CMの仕事は、正常状態からどの程度、低下・損傷しているかを評価し、障害機能部分をどのように補うかを算出、その部分を構築することがケアプランとなる。その場合、CMは損傷部位の数値化や補い方を構築する。
 CMの成立を考えると、トータルで人を見る視点や理論が欠けていた。今後は、トータルアプローチに添った専門家?SWの育成が望まれる。支援正義感が薄れ、マニュアル社会となっている事への警鐘も鳴らしている。

中根貢「人材育成のトレンド」
 能率?無駄、無理、ムラをなくすことが大切である。昔の研修では、階層ごとにまとめて十把ひとからげで行ってきたが、それはムラが出る。いまは一対一の個別対応をして、一人一人の要望に適合した方法で行く。それがこれからの人材育成の方法である。
 またカフェテリア方式による研修?会社が用意した研修を従業員が主体的に選択できる方式がはやっているらしい。
 人材育成のポイントはまずモチベーションの向上をねらうことである。人間は何かをするときいつも「自分が主体となり、自分自身をコントロールしている感覚」と「誰かに動かされ、使われている感覚」がある。モチベーションを高めるとは、自分の運命の糸を支配しているのは、他ならない自分自身であり、自分が行動するのは自分がそうするのだと感じさせることである。

検証:震災と福祉救援・復興の歩み
鼎談
 2004年の新潟・福井の集中豪雨、その後の10本の台風、10月には新潟県中越地震、2005年は福岡県地震と大型の災害が続いた。それへの取り組みについて。
 他組織との連携(協働)の重要性などを具体例で述べている。
 水害は、起きたときは大惨事となるが、水が引いた後は復旧しやすく、短期集中で出来る。さらに降雨量とかからだいたい推測できる。しかし、地震は突然起こり、根幹から崩れる、余震の心配があるなどで復旧が難しい。
 ボランティアの運用とコーディネートの問題について。ボラの数に比してコーディネートが圧倒的に少なかった。あるいは、コーディネートの滞在日数が短く、慣れないままに撤収などバランスが悪かった。あるいは経験不足から運用に不備があるなど。マニュアルは大切であるが、それを生かす人材育成が重要である。さらにある程度復興のめどが立ち、たくさんのマンパワーが去った後、いかにして地元の人達が自分たちの力だけでやっていくかという視点と計画が大切である。
 さらに通信手段の遮断やインフラが十分でない状態での支援は効率化に問題がある。集団で判断しながらも情報の一元化が重要である。ツールとして報道は役に立った。
 被災者の心のケアについて。不眠症など起きやすく、精神科医や臨床心理士を派遣して中長期的にやっていく必要性が強く叫ばれた。腹腔に力を注ぐ行政などは、被災者の話をゆっくり聞くことには限界がある。地元の人を中心にサポートネットワークを作ることが大切である。
 復興計画は中長期的かつ総合的に策定する必要がある。例えば、家を復興してもライフラインや商業、農業などの経済的なものや物流の復興を含めてトータルに作っていくことが大切である。
2008.3.14

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