2005.4
展望・今後の福祉システムと福祉経営

座談会
 ちょうどこのころ介護保険制度や支援費制度の見直しの時期であった。またこの時期は、財源抑制の方向性にあったため、高齢者に掛かる費用の抑制と、児童・家庭環境への財源の振り分けが求められるという論調であった。また地域社会、地方分権もキーワードにあった。また財源が国民からの徴収が明確になり、公平で質の良いサービスをするためにはケアマネジメントがより一層しっかりしないといけないことなどが上げられている。
 行政のコントロールが強い(通知・通達による細かい制限がある)ため、社会ニーズが現場サイドであることが分かっても提供できないというもどかしさもある。調査などで細かいニーズの発掘や把握を試みながら政策に反映して欲しいところである。
 この時期「介護予防重視型システムへの転換」が提言されている。その危惧について(この程度だったら給付の対象外という画一的なサービスの削減)も指摘されており、現在その危惧は的中している。
 まだ人材流出や低賃金の話題は出ず、財源の削減により施設の老朽化などの改築費用が捻出できなくなる(経営計画が策定できなくなる)ような論調である。
 児童関係では、さまざまな女性への配慮(介護休暇や看護休暇、児童手当の拡大、医療保険改正による医療負担の軽減など)その一方で、子育て支援事業が市町村に移行してから保育園の利用について当該市町村の住民を優先すると言った「セクショナリズム」(囲い込み・排他主義)が働きだしていることを指摘している。
 生活保護に関しては、救護施設は実質精神障害者の受け入れ先になっている。精神障害者の生活支援が出来る施設が必要だという実態があるにもかかわらず、精神障害者施策ではそれが取り入れられていないという問題がある。
 自立支援について生活資金の貸付制度をより活用してはどうか。年金・医療・介護のいずれも世代間扶養の色彩が強くなっている。恒例世代の生活の基本部分は社会が支えているから、高齢者の資産の相当部分は社会が相続して良いのではないか。今回の改正では、出来る限り働いて自立できるように支援していく方向が示されている。しかし、実際には非常に難しい。それぞれの状況にあったきめ細かな支援をどう行うかが大きな課題である。

藤井賢一郎「介護保険制度見直しの動向と今後の事業経営」
 論調として、この時の介護報酬の切り下げは賛成の方向である。というのも、事業者の介護報酬至上主義による人件費の抑制や劣悪なサービスの提供が容認されていた事による。介護技術よりも最低限のことをすればよいとする経営者の怠慢や放漫が見られていたからである。筆者が主張するのは「介護技術は深化し(次に来るのは、身体面が重度の方の尊厳を重視するケア改革だ)、創造性の高い物であり、介護事業経営者はその観点に立つべき」であるということである。良いケアと裏腹の悪いサービスを駆逐するねらいが今回の改正で行われたとする(そうならなかったのがその後の流れでは立証されており、論者の指摘は当たらない)9割が負担する国民が1割を負担する利用者のニーズを決定する権利があるという見方でもある。

山田尋志「これからの高齢者介護・福祉の担い手」
 1980年代の後半から先駆的に取り組まれてきた、宅老所の試みは、グループホームやユニットケアなどの従来とは異なる支援方法へ展開する動きと結びつく。その後、制度にも影響を与え、介護保険では痴呆対応型共同生活介護が出来る。それに伴う専門性とは何かと言うことが十分に検討されてこなかった。
 高齢者は能力を失い続ける傾向があり、出来なくなったことをしてあげるという姿勢ではなく、ストレングスの視点で高齢者の自尊心と誇りを保持するような取り組みが必要である。そして、今まで住んできた地域を十分に考慮した取り組みが求められる。
 しかし人材育成に関しては、これまでも、そして今(2009年)においても十分とは言い難い状況であり、訪問介護を覗く介護保険施設を始めとする介護サービス現場に配置する介護職員については資格要件が求められていないのが制度の現状である。人材育成には、資格要件、継続的な研修、教育体系、受ける機会、スキル向上の仕組みが必要である。その上、指導できる人材も不足している。

無藤隆「総合施設と保育・教育の方向」
 最近の動向について1.幼保一元化の流れ、2.民営化の流れ、3.第三者評価の流れ、4.現職員の資質向上に向けての流れ、5.地方移管の流れ、6.保育と子育て支援の統合の流れ、7.往訪・応益負担の拡大と新たな保育の位置づけの流れについて述べている。
 総合施設の基本機能についての説明。総合施設の検討は二通り。自治体で、幼稚園・保育園がどちらも定員に満たない場合。もう一つが保育所は定員超過だが、幼稚園が定員割れをしている場合。その背景には、共働きの多様化がある。
 問題点として、子育て支援は広がっているが、在宅にまで踏み込めないため支援の手が届いていない。総合施設は思ったほど進んでいないのは2009年では明らかになっている。
 その他、対象者と利用形態、教育/保育の内容、職員資格・配置・施設設備、設置主体や運営・利用料など、行政による窓口の統一などについて言及している。あんまり興味がないが、詳しくは
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/12/04122404.htm
 にて言及されている。観ると、そのままパクっているじゃんと思った


関川芳孝「問われる社会福祉法人経営の自律性」
 社会福祉法人の公益性を担保とし、様々な税制面などの優遇措置を講じられている。よって、市場原理だけではなく、低所得者などへの配慮、制度化されていない福祉ニーズへの対応などの地域福祉を推進するための公益的取り組みをいっそう進めることが必要である。
 しかし一般的に、地域貢献の取り組みはNPOの方が相当のエネルギーを費やしてやっている。社会福祉法人は官業構造の中で措置委託の受け皿として存在価値が与えられてきたに過ぎない。低所得者への配慮や地域貢献にしても、法人がここまでやるのかと驚かれるような取り組みをしてこなかったという反対意見もあり。
 法人の運営管理のあり方について、理事会と施設長の間に乖離があること。理事会が形骸化していることなどについて言及している。また評議会について諮問機関として位置づけられて、経営に参画する権限が強化されたことを述べている。この問題については、まったく興味がないので割愛する。
 退職金の公費負担についても見直しが為されているらしい。これは福祉には社会福祉施設等職員退職手当共済制度がある。いわゆる共済の一般化つまり厚生年金への一元化である。これは着々と進み、公費負担がかなり削減されている。そもそも公費助成がなければ社会福祉法人は職員に退職金を支払えないという考えに対し疑問が投げかけられている。退職金なんて、詳しくはよく分からないし、実感も湧かないし、興味もないのでこの辺で。
2009.1.27

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