2005.2
地域を支える福祉拠点

京極高宣「変わりゆく地域の福祉拠点」
社会福祉法第10章の最後に「地域福祉計画の策定」(市町村)の規定がある。また、社会福祉協議会は「地域福祉活動計画」。社会福祉法人は、今後地域福祉の推進拠点としての役割が求められる。そういった意味で社協と連携し地域福祉活動計画に参画することが求められる。
小規模化による高機能が整備されにくい。既存の施設と連携し機能の維持や緊急時の対応など体制作りが必要。介護保険と支援費の統合とは正確に言うなら、現行の支援費でカバーしている介護サービスを介護保険を適応させることが出来るかどうかという議論である。利用料は、応益負担な為自己負担が場合によっては増えることになり、低所得者にとって使いづらい制度になるのではないか。

猪熊律子「介護保険制度の見直しと福祉拠点の今後」
地域ケアという言葉の台頭。小規模化・多機能型のサービス拠点。利用定員15名程度で、「通い」「泊まり」「訪問」「居住」などがついているサービス拠点を指す。利用者が自宅から歩いていける程度の距離にあることや、なじみのスタッフが利用者の心身の状態を見て継続的かつ総合的にサービスを提供するのがポイント。
老人保健施設が第二の特養と化しているなど介護保険三施設の機能の差が明確ではなくなっている。そのため、「日常生活支援」(特養)「在宅生活復帰支援」(老健)「長期療養支援」(介護療養型医療施設)に区別していく予定。
今後は、新予防給付が新設され、介護度1では施設に入所できなくなる。よって、2以上でないと入所できず、重度化やターミナルケアなどの問題に取り組んでいかないといけない。
地域包括支援センターの創設。介護予防マネジメント、総合的な相談窓口業務、包括的かつ継続的なマネジメントを目的とする。
小規模・多機能型拠点は、民家や中古住宅を改修したところが多く、災害時のハード面で大丈夫なのかということがある。

山縣文治「地域子育て支援に求められる拠点機能」
目的は1.保護者からの相談に応じ、情報の提供を行う(地域子育て支援センター)。2.保育所など(放課後支援、一時預かりなど)3.居宅のおける子供の養育を支援する事業(出産後に保育士などを派遣する)このことから、要養護児童などを主たる対象とせず、広く一般に向けたサービスといえる。
児童施設も公共性という観点からより広く展開されることが望まれる。児童施設には専門職がいるという前提でより活用されていく必要がある。
地域には、広域性とフォーマル・インフォーマルの圏域があり、一次圏域は親子、二次は定住住民、三次は町内保育など五次まで広がり、児童施設は圏域外の位置づけになっている。しかし、外在的な要因による圏域論ではなく、事業ミッションに基づいた圏域論が必要。さらに、圏域の横の連携が必要になる。つまり包括化である。その目的は、予防、発見、協働、見守りである。

感想
 とってつけたような介護保険と支援費、あるいは今後の障害保健福祉施策(グランドデザイン案)と地域福祉をミックスした論文であった。そのほかのレポートも、自分たちの取り組みがいかにすばらしいのかを述べているだけであったし、げんなりである。なぜげんなりしたのか。
 一つに、そんなに大事なものであるなら、それに見合った財源がなぜ出されないのか。効率や効果は強調されているが、効率よりも優先されるべきはサービスの質ではないか。しばしば、一般に質が大事であると述べられるも、それは量ばっかりあっても質が伴わないといった批判の言説によく見られる。しかし私が述べたいのは質とは、提供されるサービス「そのものの質」である。その質はどこにあるのか。それは、単に利用者がいまよりも自由になれるとか自分(利用者)たちで行動の選択が決められるとかではない。提供する側がもつ「まなざし」とビジョンである。まなざしが深い上での自由な行動を提供するという緩やかさやおおらかさであれば問題がないが…。
 しかし、それに対する費用効果は換算できるのか。例え費用効果が出なくても財源は福祉に向けることがすでに出来ているはずである。介護保険では、四〇歳以上の人が強制的に費用徴収されている。しかも、給付を受けられる年齢に達している人でも介護認定がつかない人が相当いるはずである。いったいどのくらいの人が認定され、給付されているのか。おそらく、本当に費用がかかっている利用者はごく少数のはずである。少なくても介護認定3〜5の人の割合は少ないはずである。
 そもそも、これまで施設福祉は在宅や地域生活を指向する福祉よりも効率的なものとして位置づけられてきた。しかし、現在、施設福祉は効率的でないし人権上問題であるといわれる。真に在宅や地域でのサービスを展開しようとした場合、施設福祉の4倍のコストがかかるといわれている。例え、施設への財源を削減した分をそのまま在宅や地域での取り組みに振り向けたとしても、今以上に劣悪なサービスを提供することになるのは明かである。しかも、福祉予算そのもののパイ(総体)は減少する傾向にある。目に見えやすい施設への費用を削減し、目に見えにくい在宅・地域へ振り向けたようにして、実はその財源は公共事業や他の目的へ使われないという保障はどこにもない。我々はその費用の行方をを注視していくことが重要である。
 追加として、施設には専門的な機能がある。災害などでは備品やハード面で大変役に立つと書かれていた。そして地域に還元しなければならないとも述べていた。
 裏返せば、現在進めている地域拠点は、ハード面では脆弱であることを示している。地域拠点といわれている箱(ハード)そのものは、古い旅館やアパートの改修などで行われているからである。それはコスト面もさることながら十分な助成がなされていないことから来ている。
 専門機能は何によってもたらされているのか。それは、人材である。では、その人材はどのように集まるのか。それは生活を保障するに足る賃金が払われることである。施設は地域拠点の後方支援としての位置づけがなされているようだが、実際の地域拠点に従事している人々はどのような意味でそこにいるのか。専門機能をあてにしているのことから、地域拠点にはそうした人はいないし、十分な賃金が払われていない(必要ない)ことを示している。
 そんな中、予防給付や自己負担の増加は、サービスの質を上げないといけない政策が採られている。しかし、それに従事する人々のそれに見合った社会的評価と労働保障はどうなるのか。はたして、現在もてはやされていたり流行っているグループホーム、宅老所などの実態は…
(2005.7.5)

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