2005.1
災害対策の新たな視点

岡田憲夫「総合防災」
失敗もあり得ることを見据える防災を「減災」と呼ぼう。減災では、縁起でもない失敗の可能性を実体験であるかのように想像し、先手を打つ。そして仮に失敗しても大事に至らない負け方(フェイルセーフ)も勘定に入れて、実行できるようにしておくこと。それでもかっか的に縁起が良くなる可能性にかけるという理屈。これもリスクマネジメントの妙味である。
戦後に代表される20世紀の防災は、内堀だけを守ろうとした。内堀とは、防災行政専門集団だけであった。つまり自然災害はある程度予想の付く形で整然としてやってくる。それに部署に分かれてあたればよいという考えであった。しかし、自然災害は想像以上にくせ者であった。そこで、内堀には行政が立つ。外堀は行政だけではなく、企業も住民も役割を分担して対処する。こうして減災の取り組みに皆が参加するべきである。
私達の暮らしは、いわば五層の天守閣の上に成立している。そして自然災害に負けないためには、内堀だけではなく、外堀が必要である。この五層とは、土台に自然環境、第1層に文化や慣習、第2層では、政治・経済・社会の仕組みの層、第3層では社会基盤・施設の層、第4層では、土地利用・建築空間の層、そして第5層には、生活諸々の活動の層がある。これらが、複数の層で構成されている都市や地域が、層と層の間で不整合が生じていて、本質的に脆弱な部分を孕んでいる。自然はザーとが一端発生すると、都市・地域の多層システムのちぐはぐさが、物理的・または社会的脆弱さとして露呈することになる。
以下、各層で考えるべき減災、及び新潟中越地震の層の応用を論述。

菅磨志保「地域コミュニティによる災害対応と地域福祉」
阪神・淡路大震災から10年を迎えようとしている。この震災では、行政などの公的機関を中心に組み立てられてきた日本の防災体制の限界が明らかになる一方、ボランティアや地域コミュニティによる災害対応が高く評価され、震災以降、これらの力を防災体制に積極的に位置づけ、活用していく方策がとられるようになってきた。
地域コミュニティによる初動対応では、家族の救済→隣保の救済→町内の救済と活動が広がっており、発生直後には自治会による組織的な活動はあまり機能しなかったものの、近辺住民による自主的な救済活動の重要性が強調されている。とはいえ、自治会を機能させるためにも、小地域の相対的自律性?大都市の分節化が必要。
地域コミュニティの対応を巡る評価と課題では、普段からの地域住民相互の良好な人間関係、蓄積が必要であるが、防災に特化した日常生活には直接役に立たないような活動を維持していくことは困難である。さらに被災を経験した地域でも自主防災組織の単純な機能強化には限界がある。
しかし、防災を日常の中に組み込むことで、地域の課題を解決するための多様な活動の中で、日常生活を点検し、安全・安心に暮らせる地域の課題を明確にさせるという機能を果たしている。
さらに地域の安全を考えていくことは、災害だけではなく、他にも在宅の一人暮らしの高齢者・障害者、犯罪、環境汚染などにも関心が広がる。実際、震災支援がきっかけで防災活動を始めた市民団体が環境問題にも視野を広げ、援農を通じて農薬による環境汚染について考えるようになった事例もある。
また、社会貢献の一環で防災町作りに参加する企業が現れているが、これらの企業の多くは防災への投資が安全の担保になるだけではなく、通常の営利活動にプラスの効果をもたらすことを認識しているのである。

レポートは、
消防の視点から見た災害時要援護者への支援
伝える努力と知る努力を痛感
要援護者の安否確認と個人情報保護の課題
地域防災力向上のための組織・機関連携?住民・企業・行政・大学の連携
専門職の人的支援(派遣)にかかる課題
災害ボランティア・NPOの活動と支援の課題
災害時の廃棄物処理と「協働」について
災害時の福祉サービスの課題
優しい日本語で災害時の情報を伝える
災害時の情報システムとその課題
三宅島民の現状と帰島後の課題
新潟中越地震に関する福祉支援の動静

資料・解説では
風水害・地震などに対する福祉救済・災害ボランティア活動の状況について
2008.1.14

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