2004.7
卒後・現場教育のいま

いわゆる、有為な人材とは何か。人材育成のためにはどの様な方法があるのかを論じたもの。もともと、実習教育についてまとめていたので参考になるかと思ったが…ある部分は参考になったのかもしれない。

論文1
現場で育つ人財〜卒後・現場教育、職場研修の視点
面白い言葉遊びとして、「じんざい」の3つの意味について
人在、人財、人罪。人在はそこにいるだけの人、人財はそこになくてはならない人、人罪はいるだけで迷惑な人という意味。それらをめぐっての論であった。
実習の意味の言及については、それを行うことによって適正を含めてその仕事が継続できるかどうか〜人材育成としても重要であることを指摘している。それは、雇用の流動化によって定着できず技術や技能の点で蓄積していくことが困難な事情と相まって必要なことであると説く。
さらに人材育成の視点として、人間の持つ知恵や知的活動が高い価値を付加させるという点。事象はデータとして蓄積され、整理加工、洞察によって知識になり、創造による問題解決が図られることで知恵になるという段階は現場においても重要な示唆を与える。
さらに能力開発は単に資格などを取るに止まらず、自分の全体的な経験をどうデザインするのかという自己の仕事の普遍性や付加価値を目指していく必要があること。
選抜制における基幹人財の育成は諸刃の剣であり、逆に選抜されなかった人の士気が低下すること、選抜された人はエリート意識を持つなど問題も指摘される。経営幹部候補者の早期育成は経営の将来を左右する重要な課題であるが、コア人材に限らずすべての構成員にかかる明確な育成方針・計画を打ち出し、合意と納得を伴った人材育成が進められなければならない。

論文2
福祉マインドの醸成と職場教育の課題
筆者はわりと有名な臨床福祉学の先生。著書もありどちらかといえば実習に関することが専門であるようだ。現場は臨床の場であるという主張から論は「臨床の知」とは何か。その本質は何かと説く。
端的に言えば、通常臨床という言葉は、対人援助活動が行われている場を指して、すなわち場としての臨床として使われ、理解されている。しかしこの言葉は同時に、人間の関与の仕方ないし態度としての「その人とともにいる」という「方法態度としての臨床」を意味する。したがって、「場としての臨床」の「場」である現場が真に「現場的」になるとは、そこでサービス提供に従事する者の中にこの臨床的態度が醸成され、実現されていくことであるといえる。視点は、利用者を深く受け止め、その人と共に生きようとする臨床的な対人的能力としてのキャパシティーの豊かさを育む教育が求められている。

論文4
福祉経営における「職場研修」の位置づけと課題
なぜ職場研修が必要になったのかという背景について
いまから11年前「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」(いわゆる「福祉人材確保指針」平成5年4月14日・厚生省告示第116号)が策定され、この中で「経営者は継続的な自己研鑽と合わせ、積極的に従事者の資質の向上に努めていく必要がある」との方針が打ち出された。
この指針を具体化するものとして、企業で行う教育訓練の手法を援用し誕生したのが、福祉の「職場研修」である。福祉の「職場研修」はOJT(職場内研修),OFF-JT(職場外研修),SDS(自己啓発援助制度)で構成される。「在宅福祉サービス従事者の職場内研修の在り方に関する調査研究委員会」はこの手法を福祉経営者が用い、「職場研修」を推進する手引きとして『福祉の「職場研修」推進マニュアル』(全国社会福祉協議会、1995)を作成した。

論文5
職場づくりと福祉人材開発の課題
福祉現場の雇用の流動化に伴う人材育成の困難性について。利用者の満足度を図るのは当然として、従事者に対する仕事の達成感や仕事に応じた待遇、給与、役職などを用意することによる最大限の「従事者満足」。健全性とノウハウの蓄積が必要であると説く。特にスキルアップについてはOJTの活用が最も必要で、職人的な対人援助としてのスキルを追体験や共有化する絶好の機会であると説く。
また、正職員と非正職員の格差について、説明できない格差(給与などを指していると思われる)はつけるべきではないと説く。さらに、介護保険などによって市場化が出来たといっても例えば一般企業なら、自社の努力の結果、他者から「パイの取り分」を奪うとか「パイ自体の大きさ」を拡大するという方法によって、努力した社員全員に「見返り」を出すことが可能だが、福祉や介護の領域では「パイ」が限定されている。その結果、自組織内での「パイの拡大」に到らず、自組織内での「パイの再配分」、具体的には働かない人のリストラと働いた人への「浮いた分」配分という結果につながりかねない。〜何とも浮かばれない内容である…

所感
総じて、私は論文5に依拠しながらもそこに現に働いている人が以下にスキルアップを得ようとすることが重要なのか…それは単に組織の中での中心人物になることではないと考える。確かに経営の上で、熱意ある従順な協調性があり、しかも統率性もある。かといえば時には創造的な仕事をして組織を活性化させるような人材を欲するものである。しかし、そんなことに興味を持ってどうしたらそうなれるのかという視点で仕事をしても楽しいだろうか。人は、仕事に興味を抱くとき、やりがいを感じるときは常にそこに創造性があり、批判的な視点があるのではないだろうか。そこには、常に職場の規範や内情に対する痛烈な問題意識があるのではないだろうか。それは常に外部にある。そこには協調性や従順差など無く、統率という欲望はなく、常に一人の思考の中にあり、職場にとっての創造性ではない。告発であり、糾弾であり、現状への挑戦である。しかし、それは常に内部から発したものでもある。それが現場の豊かさであると同時に、個人の豊かさでもあると言える。スキルアップとは、現状の自分を批判し、現場を疑問視し、常に外部へ思考を走らせて(飛ばして)いきながら、自己を再び定立させていく作業に他ならないと言える。

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