2004.10
新たな自治体像とこれからの社会福祉

座談会「新たな自治体像とこれからの社会福祉」
市町村の合併では、タイプが3つに分かれる。一つが、小さいながら合併せず、自力でやった行くもの。合併を進め本庁中心主義のもの。もう一つが、分散型で基礎自治体の中で地域自治区(住民自治)を内包するもの。モデルになっているのが、阪神大震災のNPOと行政の連携にある。今後の公共活動にはNPOの小集団によるニーズの充足をめざす。NPOがネットワークを張り多様なニーズにこたえるという草の根活動が重要になる。
しかし、NPOのリーダー同士が仲が悪かったり、人間関係が煩わしいと思う人も多くいる。都市部では顕著である。また、外からは行って来た市民には既在のコミュニティに入りにくいという状況がある。
住民は社協というものは行政と一体的な機関としてのみ認識していることが非常に多いのが現実である。もっと社協独自の色を出していくことがこれからの社協活動をしていく上で非常に大事である。
市民と行政の対立というのはいまの民主主義の仕組みでは本来的にありえない。なぜなら、行政の背後には行政の施策に賛成する市民がいるからである。よって、実は市民間の対立なのである。ところが行政にだけ文句を言う。行政の中で代理戦争をしているようなものです。

武川正吾「分権化と新たな自治体像」
グローバル化が地方分権を押し進めている。その理由に、グローバル化は多国籍企業は国際競争を勝ち抜くために、各国政府に対して、規制緩和や税・社会保険料の負担の軽減を迫る。特に慢性的な財政赤字に苦しむ日本の場合、問題は深刻である。国は財政赤字を軽減するため、地方が国から財政的に「自立」してくれることを望む。
あるいは、グローバル化とローカル化が連動している。今日の世界ではローカルな問題がグローバルな場で解決されたり(DV問題の北京会議での取り組み)、グローバルな問題がローカルな場で解決されたり(地球温暖化問題の地域での取り組み)している。いずれにしろ、ガバナンス(統治)をローカライズする(地域特性に合わせる)が強く求められている。
1995年の地方分権推進法の制定以来、地方分権の改革を積み上げてきた。その結果、機関委任事務制度の廃止、国による包括的な指揮監督権の廃止、権限委譲、組織や職の必置規制の廃止・緩和・法定外普通税・法定外目的税・地方裁の規制緩和などが行われる。
これらの改革を踏まえて、補助金・地方交付税・税源配分を主題としたいわゆる三位一体改革が進められている。この改革によって地方の財政危機が深刻化する可能性は高いが、他方で、地方分権化が一段と進むことは疑いない。
地域化(ローカライズ)はこれまで以上に脚光を浴びている。

ローカルからの創造性と意欲が試されていると言える。

辻琢也「崩壊する地方自治の常識とこれからの社会福祉事業」
社会保障費関係費については保育所運営費をはじめ多くのものが一般財源化が進められている。もう一つが、削減の焦点が、給与水準の引き下げを含めた人件費(相当の物件費)の取り扱いとなってきていることである。国の措置制度(補助金)を前提に人件費相当分を満額確保される時代は過ぎ去ったのである。
指定管理者制度
については、いわゆる公立の社会福祉法人の管理者の中に民間事業者などが広く含まれていくことになった。過去実績に基づき一方的に指定管理者を指定した場合は、最終的には住民訴訟の可能性も想定され、自治体としては厳しい対応を迫られる。競争の時代である。
地方公務員制度改革
は、自治体本体の常勤職員、終身雇用、年功序列型給与体系が崩れようとしている。拡大部門を中心に常勤職員の比率を下げてパートや派遣労働者を活用し、さらにパートと常勤の勤務条件格差の縮小に努めるなどが進められている。あるいは成果主義のもとでの人事管理を徹底させている。
市町村合併
では合併を推進した場合、普通交付税の合併算定替え特例や合併特例債などがあるために向こう10年程度は合併しない団体に比べて財政的に優遇される。合併しない自治体は人件費・物件費を削減するなど、自治制度改革を待ったなしで実施することを覚悟しなければならない。
21世紀において、社会福祉事業は日本を代表するコミュニティサービスであり、少子高齢化と共に限られていく経済資源を、より効果的・効率的に活用して、多くのサービス消費者に満足できるサービスを広範に提供することが最大の課題になる。新しい時代にあって、「公務員が直接サービスを提供すること」や「たくさんの施設を作ること」は改革の遅れを象徴する指標となるかもしれない。
2005.11.27

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