2003.8
一人親家庭への福祉支援

 「母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針」(H15?H19)「母子家庭及び寡婦福祉法などを一部改正する法律(H14)」が打ち出されたことを念頭に特集が組まれている、

新保幸男「ひとり親家庭の生活状況と課題」
 一人親になるにはそのプロセスがかなり程度の影響を受ける。死別なのか性格の不一致なのか、短期間なのか長期間なのかなど。多様性がある中でも共通性として、1.子育てをすること。2.就労し生計を成り立たせることを一人の親が行うことである。両親が健在であれば、どちらかにウェイトを置くことができるが、一人の場合はそうではない。
 一人親は111万8300世帯。うち母子家庭が95万4900世帯と推計されている。児童のいる世帯の8.3%が一人親世帯であると推定される。昭和20年代は戦争寡婦対策としての側面が強かったが、40年以降は離婚件数の増加、一人親における離別や未婚による母子家庭の割合は約80%である。死別の場合は、死亡した乳の年金などから支援を受けることができるが、離別の場合はその機会は少ない。また社会的なハンディキャップもある。
 就労に関して、母子家庭のパート・臨時の割合が約半数であり流動的な雇用環境におかれている。収入は母子家庭の場合平均約230万である。ちなみに父子家庭の場合は422万である。住居は死別の母子家庭は持ち家率約67%に対し、離別は17.3%である。悩みとして、子供に関しては、進学は父子・母子ともに共通し、母子はしつけ、父子は食事・栄養である。
 課題として、離婚後における生活の大幅な変化に対する支援。就労支援?子供が病気になった時の保育の充実など。そして生活支援?子育てと就労を支えること。

神原文子「母子家庭における経済課題について」
 母子家庭の就労状況や賃金平均などは上記参照。ちなみに、無業者の平均収入は202万円である。母子家庭への手当は、平成14年の児童扶養手当の見直し、母子法の改正、基本方針の策定など打ち出している。とはいえ、具体的な数字はなく、本論文では、経済的自立に関して言えば、総収入25万、手取りで20万の月収が必要であると試算している。つまり年収300万が必要であると(子供2人の場合)。
 その様な年収を稼げない理由として出産や結婚を気に一旦退職してブランクがある。乳幼児がいて保育所に預けられないことも重なり常勤での就労が困難である。共通するのがジェンター社会であるからである。児童扶養手当が財政困難を理由に2002年から全額支給の所得額が200万円から130万円にそして5年後には半減されることになった。
 であれば経済的な自立として例えば保育士や調理師は数年で年収300万円になること。事務員でも正規雇用の場合は5年以上かかること。しかしパートなどではずっとならないことなどを示すべきである。

インタビュー
 子育て・生活支援〜ショートスティ・トワイライトスティ事業(児童福祉法・第二種社会福祉事業)。育児の補助としてヘルパー事業の拡大。保育所の優先入所。今回の法改正で父子家庭もその対象として明確に位置づけた。就業に関しては、就職の優遇斡旋、総合的な施策、母親の能力開発、自立支援給付金(自立支援教育給付・高等技能訓練促進費・常用雇用転換奨励金)、母子家庭など就業・自立支援センターなど。金銭的支援は、これまで母子寡婦福祉貸付金と児童扶養手当があったが、児童のための資金?学業に関しては児童本人にも貸し付けることが出来るようになった。あるいは、監護しない親の扶養義務の施策のあり方にも検討する旨を附則に規程(養育費の取り決めをしているのは35%、現実に養育費を受けてとっているのは約21%に過ぎないため)。

 経済不況が続く中、就労の機会や賃金の低さから、昨今では虐待が助長されているという向きもある。また収入の低さはいじめを生み、養育の困難性は子供の情緒の安定や仕付けの面から社会性が充分に育たないのではないかとする見方もある。もちろん、一人親であっても立派に子供は育つし、両親が揃っていても虐待はある。
 しかし貧困は学歴の低さから子供もより低位な仕事に就かざるを得なくなるという貧困の連鎖。あるいは低学歴同士(貧困)による離婚率の高さなどがある。

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