2003.5
支援費制度、スタート!
そもそもノーマライゼーションとは「当たり前のことを当たり前に」という簡単なものであり、障害があるという理由で差別されることなく障害のない人と同じ程度の生活を行おうという理念は至極まっとうなものである。〜利用者本位、契約、選択〜

【インタビュー】支援費制度の導入によせて
支援費制度は社会福祉基礎構造改革の一連の中に位置する。介護保険のような誰もがなりうるリスクから国民的なコンセンサスを得られることが出来た。むしろ、限定的な福祉は認められない時代になってきている。障害者福祉における支援費制度は、その理念上反するが、介護保険の一方の理念〜自己決定、選択に基づいて、地域生活を支援するという理念で動いている。これまでの、事業者による措置ではなく、事業者と利用者の契約という形になるというのが最も大きな違いとされる。(金銭的には、利用者に行政が財をわたし、事業者が請求するというもの)最低基準やそれまで供給側の縛りは緩くなり、弾力的な財源の運営が可能になったといわれている。また、市町村の役割は大きくなり、障害者のニーズの総量を決定する必要になる。その中で、ケアマネイジメントの重要性から生活支援事業、地域療育など支援事業は補助事業であったが、そうした事業を行っていない町村にも行う必要があるため、補助事業から地方交付税など一般財源として確保する。窓口は市町村であるが、バックアップとしての相談事業などは県レベルで行うこと(更生相談所、児童相談所など)。
予算としては、居宅サービスが施設サービスの4分の1以下であるが、伸び率は3倍(15%)であり、障害者計画でもその方向で〜居宅サービスの財源を増やし、施設を抑制する傾向にあること。居宅サービスは裁量的経費。施設サービスは義務的経費となっている。また、ホームヘルプサービスの予算が最も多いが、どのくらいの指定業者が確保できるかが未定であり、また、それまでの社会福祉協議会などで行ってきた事業を引き続き行って欲しいこと。(業者の指定は県で行われる〜しかし、実際には法人格を有しなくても市町村が必要であると認定すれば、支援費の対象とする仕組み=基準該当居宅支援を設けている)
施設サービスに関しては、単価設定に関してABCという程度にし、重複、重度には加算を付けるという形。また、大規模施設と小規模施設の格差を埋めるため、4段階に規模別に類型化し、ならすようにしている。また、入所施設に対する退所時の加算を新たに設定。入所施設よりもツウ諸事業の単価を重点的に評価。
課題として、地域格差が大きいこと。ホームヘルプサービスの予算があるにも関わらず、十分に発展していないこと。

【寄稿】
1:支援費制度についての思いと疑問(授産所利用者)
2:利用者の家族から見た制度への思いと課題

なかなかシビアな雑感というか…素朴な質問疑問である。結局の所あんまり変わらないんじゃないかということや、制度が変わってむしろ今まで良好な関係性がくずれるんじゃないかとか結構グサリとくる内容。また、福祉の用語も保護者からいわせるとちんぷんかんぷんで、略語にいたってはさっぱりであることなどもっともなことばかり。さらに、日本においては親や支援者が障害者にあれこれと指示することに慣れ、それに依存して言いなりになっている障害者が多いことなど鋭い。主体的な行動をする人が少ないことなど日本の最大のバリア(壁)ではないだろうか。さらに、自分で自分を主張するためのトレーニングなどが必要であるなど海外のことなどを引き合いに出しながら(セルフ・アドボカシー・トレーニング・プログラム)、支援費制度の理念と実際について全体的な考察が必要であることを痛感させられる。

【実践報告】
1:独自性のある支援費制度の実践を目指して(行政)
2:名張市における支援費制度導入に向けた取り組み(行政)
3:支援費制度への取り組みについて(施設)
4:知的障害者関係施設における制度導入の経過と課題(施設)
5:利用者の立場に立った障害者地域自立生活支援センターの機能を展望する
6:支援費制度導入に当たっての障害児関係居宅サービス事業者の展望と課題
7:障害者生活支援センターにおける自立生活支援活動と支援費制度

1においては、国が定めた最低基準〜ナショナルミニマムスタンダードから市町村の地域における独自の補助を行うことの重要性について述べている。そのためには、ニーズの調査、独自の指針等の作成が必要不可欠である。
4においては、支援費制度になったことに対する施設のとまどいと憤り、そしてやっていくしかないという感慨が述べられている。なぜ、一般財源化になったことがいけないことなのかは不明である。と思ったら、補助事業であれば市町村の裁量で分配していた事業が、厳正な割合の元で一般予算として負担しないといけないため、融通が利かなくなったことに由来するらしい。(実践報告7における)

【メモ】
もし機能分化するのであれば、例えば、高齢化した知的障害者や身体障害者を高齢者福祉へ移行するとか、授産施設を例えば高齢者棟にして介護保険の適用を受けるように分離するとか出来ないものであろうか。その際には、これまでの障害区分から介護区分に切り替えるとか、財源的にはそれまで供給されていた年金などを被保険者として徴収するとか。授産所などが高齢化しており、そのまま終の棲家となっていることが問題となっている現在、フレキシブルに展開する必要があるのではないだろうか。また、介護保険による運営であっても、これまでのノウハウが活かされ、授産所のスタッフが高齢化した障害者のケアを行うのであれば、不安なことも少ないんじゃないだろうか。あくまでも、障害者であっても高齢者であるということにより、一般化できるのではないか。もっとも、介護認定を受けると「自立」認定されることによって、今までの生活が困難になるような障害者が多いことも予想される。または、高齢化してもいいんだ。障害者は障害者だとしてつきあっていくことも可能である。しかしながら、財源的に介護保険の方が巨大であるから、高齢化=障害の複雑化として捉えることは可能だし、これまで障害者だった人への費用の流入もコンセンサスが得られるんじゃないだろうか。大規模施設であればあるほどこの問題は大きいんじゃないだろうか。

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