2003.3
福祉サービス利用者の権利擁護の進展

平田厚「福祉サービス利用契約時代の権利擁護のポイント」
措置制度時代には、「戦うアドボカシー」は権利侵害されている本人につき早急に侵害から救済する。自己決定や契約が重要な現在にあって「支えるアドボカシー」が必要になる。つまり、判断能力が不十分な人の判断を支援・促進することが必要である。
さらに、痴呆老人には残存能力を最大限に尊重する、知的障害者などには社会生活の学習を促すという相違がある。
苦情解決制度の機能には、各事業者には苦情解決義務努力がある。また、ガイドラインに苦情解決担当者・第三者委員・苦情解決責任者が予定されている。形式的には事業者自身がアドボケイトそのものではないが、こうした機能が実質的に補強している。
運営適正化委員会による苦情解決制度がある。利用者などに対する助言や事情調査を前提として、あっせんと言う紛争解決の場を設定を中心とする構成を取っている。
苦情解決には、要望・請求・責任追及の三つのレベルがある。法的拘束力は、福祉サービス利用契約の拘束力がある。サービス提供という本来的な給付義務だけに留まらず、付随義務としての安全配慮義務や説明義務も含まれる。こうの説明義務まで事業者は負わないといけない。
都道府県による運営適正化委員会は、単に中立的な立場のみならず、戦うアドボカシーとして紛争解決を図っていく姿勢が必要である。

高山直樹「福祉サービス全体を見るオンブスマン活動の展望」
苦情解決の仕組みや第三者評価そしてオンブスマンは、利用者支援の一環として位置づけられる物で、単に評価されるという受動的な姿勢から、評価を受け止め活用するとの利用者の権利擁護推進への姿勢が問われていると言える。

  1. 当事者活動とオンブスマンの連携:自治会・家族会・本人部会などの自治活動が保障され、その意見が施設運営や施策に反映されることによって利用者の参加が保障されなければならない。
  2. オンブスマンの資質向上:困難な事例に関しては複数のオンブスマンによるオンブスマン委員会のような組織が問題の共有化を図りつつ、施設と対等に意見交換が出来るような体制作りが必要である。
  3. 市民参画のオンブスマン:NPOが地域における福祉供給システムや権利擁護の一翼を担っていく。行政に対して提言が出来るだけのシンクタンク的な機能を果たすことが求められる。

田山輝明「地域福祉権利擁護事業の展望と期待」
システムの位置付けとして、
契約締結の援助〜判断能力は不十分であるが、裁判所の手続き(成年後見制度)を利用するという決断まで出来ない者にとっても権利擁護事業は利用可能な制度である。
成年後見人制度との連携〜事業を利用していたが、判断能力を事実上喪失してしまった場合は、実務上は事業を終了させ、成年後見人制度を勧めている。あるいは、成年後見人が本人のために生活支援員利用契約を締結することも可能である。
利用主体の拡大として
従来は本人が在宅であることは事業の利用上の用件であった。しかし、在宅生活が予想されるようなケースでは実務上は利用契約を解消していなかった。グループホームは在宅扱いであり、金銭の管理など生活支援員が必要ではないが、透明性確保の上で採用することも有意義である。施設入所者にも事業利用は法改正によって可能となっている。
支援費などの申請では、親族による適切な支援が期待できない場合はこの事業の利用も有意義である。
問題点として、
財産管理に関して、高額の財産管理に関して生活支援員は権限を有していない。したがって、施設側は、年金などの日常的金銭管理については生活支援員に依頼することが可能であるが、限界事例になると心配である。
本人が病気などで通院・入院する場合には、誰の同意を得られれば良いのか。この点も生活支援員に期待することは出来ない。手術などについてはおよそ同意権を有していない。後見人も同様である。
障害者の年金管理に関してもよほどのことがないと国家的介入がなされない。民生委員を始めとする福祉ネットワークによる見守りにより大事に至る前に防止しなければならない。
2005.12.10

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