2003.11
1.ホームレス対策のいま
2.生活保護制度のあり方と今後の展望

岩田正美「「排除」から「結びつき」までの長い道のりに向けて
ホームレス自立支援の基本方針、自立の支援などに関する特別措置法が2002.8に公布されている。しかし、ホームレスのレッテルを貼られる人々には多様な背景がある。しかし、ホームレスというだけで、特別な存在にみられがちである。そこに囚われすぎて多様な問題解決のための制度政策間の連携がスムーズに行かないと、何ら問題が解決しなくなる。〜しかし、枠組みの中では福祉部門が孤軍奮闘した印象が残る。
また、ホームレスになって日の浅い人、長い人と分けて複線的に行っていくことが必要である。早い人には路上生活が定着しないように、長い人には緊急避難的なここに来ればと言う場所を設定することが必要である。
ホームレス産業的には、地方で農業をしようという呼びかけでホームレスを誘う取り組み、宿泊所と制度が連携し、事業拡張しているケース。住居を探して住むようにする取り組みに関しては、高齢者関係をのぞいてNPOやNGOの運営基盤が弱いのが実情である。いい支援プログラムに補助金をつける様なやり方もあると思う。
ホームレス問題は就労支援を中心に考えがちであるが、どこに住かを解決することが基本問題の一つである。その上で、出口をどこに設定するのかということが重要である。さらに、ホームレスになる理由も様々であり、病気や借金、家族問題などの個別性が強い。これらの問題を解決しながらどうその個人へ働きかけるのか…
不況だとはいえ、ある程度の豊かさを持った国で、路上で暮らさざるを得ない人がこれだけいるという社会は、どこか問題があるのではないか。また、自分の目の前からいなくなりさえすればいい、という意識には「明日は自分のみにも起こりうる」という想像力が欠如しているのではないか。わが国で雇用や住宅面でのホームレスへの政策の進展が難しいのは、実はそうした住民意識も影響しているのではないか。そうした中で社協にとってホームレスの問題は、地域福祉推進の試金石である。なぜなら、ホームレスのような、地域社会の構成員がさしあたりは嫌がるような問題を回避して「良い住民」だけの組織化を図ると内側だけで結束を固める力が強く作用して、その外部にある困難な人々の問題を排除する力が一層高まる。そして、結局は地域社会の統合という目的が達成されない。
地域のより困難な問題を十分視野に入れて活動するのか。それはどこかに任せて、住民の合意が得られやすい問題だけを扱っていくのか。福祉の専門職を要する組織体であり、地域福祉を標榜するならば、最も困難な問題こそ最優先課題にするべきではないか。
工夫をすれば実はホームレスの人たちに支援に求められる施策にも応用可能なものがある。

岡部卓「生活保護制度のあり方と今後の展望」
社会保障審議会の中で生活保護制度のあり方に関する専門委員会が設置された。この委員会は抜本的な制度設計を目的にしている。論点は三つあり、
保護水準に関わる論点であり、現在生活保護受給世帯は、高齢者、傷病・障害者、一人親世帯が大変を締めている。これは、無年金者は別にして、基礎年金、児童扶養手当などの給付水準が生活保護水準よりも低位という逆転現象を起こしている。また、単身世帯の保護基準の低位性、多人数・有子世帯(ひとり親を含む)の高位性が指摘されている。これは雇用の給与形態が家族賃金から単身者賃金化していること、労働の流動化などを考慮する必要がある。その他、教育費に関しては、義務教育以後にも保障していくことが検討されている。
制度の仕組みに関わる論点では、社会保険と福祉(税方式)の分化の方向性がある。社会保険に無拠出に分野を作り医療保障や年金・労働制度へ収斂していく社会保険形式。社会的手当のように資力調査ではなく所得調査に収斂させていく。あるいは、今のままの制度構造で、ある程度緩和する方向で、利用しやすくで出やすい制度にする。〜生活再建をしやすい方向で設計する必要がある。制度の守備範囲では、経済保障と対人サービスを一体的に行うのか。また分離するのかという問題がある。
実施体制と援助の展開に関わる論点では、サービスの質の担保やハード・ソフトの充実が臨まれるということである。
2005.12.22

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