2002.7
福祉と環境

ほとんどが実践レポートである。ねらいとして、福祉と環境を考えた場合、一つに循環型社会の構築という他の資源との緩やかなつながりがある。もう一つに、福祉施設内の物的環境特に生活環境の向上がある。
 循環型社会の構築では、ゴミのリサイクル、廃油からディーゼルエンジンを作りだし送迎車などに使用していること、福祉機器のリサイクルなどなどである。

中上健一「福祉施設が考慮すべき環境保全問題」
 高齢化による社会問題はいまや国民的課題となっている。その意味で、福祉施設と地域社会の交流や施設の地域的役割の重要さは推して知るべしである。
 施設内環境として、心身共に快適な条件をどのように創造し、その行動自身が社会的・経営的に受容されるかという観点が重視されるであろう。施設建設の計画段階から自然の建築木材の利用や自然光の取り入れなどの工夫、シックハウス症候群の防止など様々である。またゴミのリサイクルによる有機肥料の生産活動など地域への環境貢献への情報発信ともなりうる。つまり福祉施設の環境保全を考える意識は、施設をなかの視点から社会共同体の一員としての認識へと意識転換することである。そのためには環境を考えるという視点を持つような人材育成が求められること。行政も一体に取り組むことが大切である。

外山義「福祉施設建築における生活環境向上のポイント」
 人生の道程毎に相応しい経験と豊かな思い出が蓄積していく。そうしたことを大切に市ながら人間が生活していくときに、広い意味での生活の器として登場するのが住まいや都市環境であり、その中に施設が位置づけられる。
 従来障害や病は個人の側にあるとされていたが、最近は社会と個人あるいは環境と個人の相互作用にあるとされる。つまり環境によって個人に制約なり障害が起こるということが分かる。そのため、福祉施設は障害者や高齢者の特性に合わせるのではなく、環境そのものが障害を生み出すという観点で慎重に設計されるべきである。その時、ユニバーサルデザインの指向性という縦軸と、個々の状況に合わせた建物の設計という横軸がしかれるべきである。
 これまで介護技術などのソフト面ばかり強調されてきたが、生活環境の質の観点から言うと、ソフトに比して貧しさは否定できない。個室のあり方も、利用者の孤立化を招くような設定となっているし、大部屋であっても限定された空間でいかに自分の領域をそこで切り取り生活を守っていくかという無意識の心理が働きそれぞれが交流しない傾向にある。よって、個室に引きこもってしまわないためにも個室と共有空間の関係が大事である。例えば、部屋を出るとすぐにリビングがあるという設計にすれば、利用者側でも目の前に共有スペースがあって、そこにある種のにぎわいが展開されていることが知覚されると、ご自分で居室から出てくるという変化が見られた。また職員も共有スペースに利用者を呼び込むことが容易になり、廊下などを共有スペースにすれば介護行為(移動)などの労働負荷が減って、コミュニケーション・交流の形を取った見守りや支援の度数が増える。
 途中3ページ以上は自分が設計した施設の紹介。最後に、施設を計画していくときにはやはり地域の文化、地域の高齢者の暮らしがベースとなる。であるから、その土地の材料や間取、生活文化をよく勉強し、そこから見えてくる物を要素にして組み立てて行くことが重要であり基本である。
2009.1.27

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