2002.6
福祉NPO

渋川智明「福祉NPOの興隆と課題」
 NPO法が施行されて3年あまり。介護保険がスタートして2年経つ。介護保険にNPO法人が事業者として参入出来るようになり、NPO活動が大きく変わった。安定的な事業収入を得て、効率的に運営するマネジメントの必要性が求められている。
 民間営利企業は、単価の高い身体介護に特価、NPOは家事援助にと棲み分けが為されつつある。制度でカバー出来ないサービスをNPO法人が受け持つことで制度そのものを補完していることも事実である。
 NPO法人の財源は弱く税制面での優遇措置をするべきであるが、寄付文化が根付いていない日本においては、寄付した企業側にもまた認定を受けることができるNPO法人もあまり恩恵を受けていないのが現状である。
 非営利とはいうまでもなく利益を分配しないと行けない。収益事業で、利益を上げてそれを正当な人件費や新規事業などに投資出来る。使命感を持って目的を達成しようとするならば、安定した財政基盤を築く努力は欠かせない。アメリカではファンド・レイジング(資金集め)の担当者がいて様々な財源確保に目を配っている。しかし日本ではそうしたノウハウはほとんどない。

岩永清滋「NPOはいかに会計に取り組むべきか」
 やる気や熱烈な思いで、まず行動すればお金の問題なんて後から何とかなるという人も結構多い。一方「会計」は「損益計算書」という書類がその研究の主要な課題であり、NPOはたしかに会計の側も慣れていないと言わざるを得ない。
 NPOの会計ではついつい行政指導にそのまま数字を当てはめようとしたり、帳尻合わせをしてしまう傾向にあるが、それはもっともやっては行けないことである。会計の本来の目的は、つじつまだけを合わせた形式的に綺麗な書類を作ることではない。そのNPOに関わる人々、特に資金的な支援をしてもらっている人へ、自己の活動の成果を報告することにある。それは一生懸命にやっていることを示すだけでは足りない。どの様な成果が生まれ、何が足りないのかを報告してはじめてNPOの義務が完結するのである。その手段としての会計であり、その他文章や写真によって報告することもまた重要である。会計が示すのは事実をありのまま報告することである。金額を水増ししたり、領収書を笠間視したりするような小さな不正はいずれそのNPOの存在そのものが脅かされるような事態を招くだろう。毎日こつこつと続けるこれが会計の基本である。

福田房江「NPOが行う機関誌発行・出版事業のマネジメント」
播磨靖夫「光り輝く個人が社会を変える」

山岡義典「NPO支援組織の形態とマネジメントとの課題」
 NPOを支援する機能は、ソフト(企画など)とハード(設備・建物など)あるいはその双方とに分類されると考える。その上で民設/民営/公設/公営があるといえる。ソフト系の機能は、民設・民営に任せた方がよいし、ハード系の機能ならば、公設・公営でよい。公設・民営ならばソフト/ハード系。すなわちハードを活かしたソフトの企画で特徴ある役割を期待したい。

鼎談
 税源確保は至上命題であること。どこも寄付や研究費などでまかなっていることが述べられている。情報に関してはインターネットの力は絶大で、低コストで世界中からアクセスされるようになる。相談件数はかなり多いが、まったく採算が取れないけれども丁寧につきあわないと行けないというNPOの使命感も話されている。
 本来行政のやるはずの仕事の隙間を埋めているNPO法人もあることを考えるともう少しその活動がしやすくなるような法的な整備が必要ではないかと考える。介護系はもともと全く補助金がないところからやっていたところ、介護保険制度によって多額のお金が回転するようになり、それにマネジメントが追いついていないような状況もあります。また私財を投じることが多いという関係から、公益活動でありながら同族経営化も進んでいるように思います。小さなNPO法人はやはり視野は狭くなりがちであり、連携しあって、共通の問題を持っている人達が協働して取り組むこともこれから大切だなぁと。

他レポート3本

 よく思うのが、NPOって飯食えるの?ということ。スタッフもそうだけど、設立者とかそれで飯食えてないんじゃないかなぁと。その辺の現実をみてみたい気がする。
2010.8.11

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