2002.4
地域支援ネットワーク総覧

インタビュー
上野谷加代子「地域生活支援の拠点に求められる機能と役割」
 拠点とは、地域による協同的な地域生活自立支援のための空間である。目的は地域福祉力や地域の教育力?地域の持つ力を高めることにある。
そして多機能型の拠点が個人の多様な問題に対応出来るとし、その活動として
  1. 利用者が必要な情報へのアクセスを支える。
  2. 利用者からの相談に乗ったり、必要な調整を図る。
  3. 利用者に具体的なサービスを提供し、開発するとする。
 ケア会議などは専門職と家族という図式でどうしても対等になりにくい。そのためサロンのような気軽に話し合える空間が必要と考える。専門職の出す情報は、いわば生活情報である。本来情報とはその人が身に付くものでなければいかず、その意味で必要とするのは、生活の「仕方」、暮らし「方」の情報である。
 そして相談者の生活、地域で暮らすとは何かという「イメージ」を持つこと。それから咀嚼して取り込んでいく必要がある。
 福祉に携わる人々は地域の身も蓋もないところや醜さを見ることが出来る。そして人間の持つ良さや醜さも…だからこそ大いに関わり活発化させていかないと行けない。

活動レポート
 地域型在宅介護支援センター、地域リハビリテーション、障害者就労支援ネットワーク、障害者支援のNPOによるピアカウンセリング、地域子育て支援、大学病院による退院支援、DVシェルターのNPO、災害ボランティアセンター

石谷麗子「在宅介護支援センター(基幹型)の積極的な活動に期待する」
 本来社協が基幹型の支援センターを行うべきであるが、様々な要因で基幹型になっていないのも現状である。論者は、それに対して第三セクター方式であたるべきではないたと提案している。セクター方式であれば、財源や人材の確保など安心が持てるのではないか。
 現在の配置では、社会福祉士、看護師、介護福祉士の三名となっているが、ケアマネにウエイトが置かれて本来の機能が発揮されていない。ここ数年、介護予防、生活支援事業の導入もあり、地域の高齢者支援体制の整備が不充分のままどう推進していくかが課題になっている。行政、社協に課せられている「地域福祉計画」は、これまで長年社協が取り組んできた「福祉のまち作りネットワーク」を活かすべきである。そして地域支援ネットワークに若者達を参加させる取り組みも必要である。体験的教育の具体的なものとして、
1.高齢者との交流。2.民生委員、児童委員の活動に学ぶ。3.地域福祉施設との交流。4.元気高齢者を招いての生活体験。5.ボランティア活動への参加である。

佐藤孝夫「ネットワークの維持にどう手当てするか」
 ネットワークと言えば聞こえが良いが、ちゃんと機能するかどうかは別物である。機能しない例として、ネットワークの構築がそもそもなっていない。情報の共有と言いながらも情報を出し惜しみする、他の機関にとって必要な/役立つ情報がないなどがある。また、守りモードで、それぞれの組織が利益を守るあるいは獲得するために参加するため、うかつな発言が出来ない。あるいは、各組織が独自の領域を既に持っていて、改めてネットワークの構築をする必要がない等が挙げられる。ネットワークを活用するためには、
  1.  ネットワークを自組織の足らざるを補うために活用するのではなく、お互いの長所を重ね合うものである。
  2.  ネットワークを通じて自組織と他組織の境界を絶えず引き直す柔軟性のツールとする。
  3.  ネットワークはハードであり、それを使うのは人:ソフトであるという認識を持つこと。
  4.  その肝となるのが、意識の共有、目標の共有そして情報の共有である。その情報の共有の中から知恵の共有が生まれると言える。
 ネットワークの活用は外部資源を活用することだけに意識が向きがちであるが、本来の目的は、ネットワークだから外部性を導入して自組織の変革に結びつけていくことにある。自組織の内部資源に外部資源を組み合わせて情報を再編集することで、まず自組織内にシナジー効果を生み出すことがネットワークを維持していく基本と言える。
2011.3.23

ホームインデックス