2002.12
福祉サービスの広報戦略

 支援費制度の導入により、福祉サービスは利用者に選ばれるようになる。その一環として、広報によるアピールがより必要になるという視点。

坂井浩介「マーケティングにおける広報戦略の意味と課題」
 社会福祉法の改正から、第75条において、今後各事業者が地域に対し、サービス提供主体として独自に、積極的情報提供(広報活動)を進めていかないといけないことを強く説いている。また、総合規制改革において、株式会社の福祉業界への参入など盛り込まれ、マーケットとして捉えられてきている。いずれにしろ、利用者による選択権が最大限尊重される中で、いかに地域に対し、自施設の存在はもとより、サービスから経営内容までを適切に周知していくのかという「広報」をキーワードとした経営課題が大きくクローズアップされていくことになる。
 福祉業界、特に施設は、措置時代、行政の委託という形で行っていたため、広報とはせいぜい、地域浸透を目的とした、あるいはボランティア確保に向けた広報といった程度であった。しかし、契約制度では、利用者確保と自施設の存在をアピールしないといけなくなった。
広報は、一般にマーケティングの「販売促進」に位置し、それは「製品」に絞られると言える。福祉においては、製品は「サービス」、販売促進は「理解と利用促進」と捉えるべきである。その際、行政の代行ではなく、施設が主体的提供者であること〜制度変革に伴う福祉事業者としての新たなポジショニングを宣言する活動。
 現況、社会福祉法人に対する広報規制は原則的には存在しない。つまり表現方法は自由であり、戦略的には、ターゲットとメディアの最善の組み合わせ〜メディアミックス、イベント開催に合わせたパブリシティーの展開、さらにより地域への浸透・密着を意図したCI戦略など計画的な活動が求められる。

川原邦彦「福祉サービスにおける広報戦略の課題」
 医療に関する規制緩和について、いわゆる第三者による評価などを述べている。その上で、福祉サービスにおいても、第三者の評価や情報開示は流れとして必然と語る。福祉における広告の規制は、社会福祉法79条の誇大広告の禁止以外の規制は設けられていない。今後は、マーケティング手法を取り入れた広報戦略が求められる。
 その他は、この論文の前に掲載されたレポート8本についての感想である。
 それを概説すれば、地域に密着とか浸透を図った啓蒙的なものが多いこと。あるいは大切であること。徹底した苦情対応、あるいは第三者による評価結果の公表などは、まさにサイレントクレーマーを排除しようとする経営努力が直接的にはサービス改善に結びついている。また、虐待などへのマスコミ取材対応にあって、その施設が被虐待児への真摯なケアを社会的問題と重ね合わせアピールすることで、少なくてもこれから施設を選択しようとする潜在利用者や、その家族にとっての貴重な情報源となる。
 いずれにしろ各施設サービスの質の確保を前提にして、これらを能動かつ積極的に広報する、あるいは情報の透明化の一環として財務データを公開するなど盤石名携帯室を備えることが今後強く求められる。
2008.1.29

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