2001.5
新社会への変動の中でボランティアを展望する

鼎談
「ボランティア活動の新潮流」
 ここ10年で変わったと思うこととして、一人ひとりの主体性や自立への志向が強まった。また行政や専門家だけでは多様な生活欲求の達成ができない?限界が見えてきた。当事者性や権利主体としての市民参加という選択肢が出来た。またスピルチュアルという精神性?物神性へのアンチテーゼがなされるようになった。
 20世紀後半になるとバブルがはじけたがそれまでの企業の社会貢献や市民活動の議論はバブルからあり、それが90年代になって企業も行政も赤字などの問題で行き詰まった中、バブル期の蓄積で新しい物が、ボランティアやNPO、民間の非営利活動の中に見いだされてきた。福祉との関連では、ゴールドプランから介護保険への流れの中で国民が福祉に関心を持つようになった。NPOについての議論も90年代にあったが、認知されたのは神戸淡路大震災が大きな契機になった。
 NPOと言われる前は、市民活動とか市民公益活動などと呼ばれどちらかと言えば社会的な側面から取り上げられていた。その根底には70年代のコミュニティケアの問題が大きな潮流としてあった。そういうなか女性達の社会参加の機運?シャドーワークに甘んじていた人達の立ち上がり、80年代に行政がお金があるときに、そうした団体の基礎形成をサポートした結果であり、そのような探求と蓄積が行われた時代だった。
 課題としてNPOは市民活動(市民活動は目の前の現実に対処する)と違いミッションを重んじるあまり、透明性や組織のマネジメントがしっかりしなかった。ボランティアも福祉に携わる人は危篤で特別な人とレッテルを貼られてしまい、また日本人の気質としてそうした活動はあまり人に言わないことから当事者として社会参加しているという市民権があまり得られなかった。
 現在NPOは三千以上になっているが、課題がある。それはやはり資金源。事業化する上で法人格は便利で、これで委託事業を受けることができる。今後は行政、自治体から委託しての事業展開はすごく増えるが、NPOの精神は忘れないで欲しい。NPOは運動体(主体性、自主性、創造性、開拓性、市民性)と事業性がある。事業性は売れるサービス、商品を出す、委託した事業をしっかりこなすことが求められる。しかし、それだけでは新しい社会を作るという本来の運動性から乖離していくことになる。このバランスをどう取るかが大きな課題といえる。
 ボランティアは一人ひとりで行うものと捉えがちであるが、一つの活動となるには組織を構成していくことが大切である。またボランティア団体の70%は年収200万以下という状況であるが、将来この非営利組織が一つのセクターになるいう位の考え方でやっていく必要がある。
 NPOの良さは、ユーザーであり当事者であり、ニーズの具体性を持っている。小回りがきく。小さいニーズにも対応出来る。反面、行政に比べて知られていない、うさんくさいといった信頼のなさがある。よって、小さいニーズでも行政に伝えていく、信頼されるように努力する必要がある。
NPOと行政のパートナーシップは無理にする必要はなく、むしろ組まない自由も確保されるべきである。また従来から行政と民間団体の関わりという点では、
  1. 町内会や老人会と言った住民相互扶助の地縁的組織
  2. 生涯学習教育とか女性団体、環境団体と言った当該管轄担当課毎の、分野ごとの縦割りでの関わり
  3. 民生委員などボランティア個人とのつながり
  4. 反対欲求運動型の民間団体に分類される。
 しかし、いま行政がNPOとのつきあいを始めようとしているのは、実はこのどれにも当てはまらないことが多い。よって、行政も戸惑っているのが正直なところであり、相互理解を得るような現場レベルでの学習の場が必要である。このほか、福祉の領域に留まらず教育や産業などにもNPOが広く浸透していくことが大切であるなどの話題があった。

インタビュー
 日本のボランティアの統計では、参加年齢は30代から40代の主婦や60代以降の男性が主体になっており、若者の参加が少ない。社会参加の意識は高く75%であるが、実際に参加しているのは少なく、躊躇していることがわかる。また参加する動機は、身近なことが多く、満足感を得るためと回答している。
 そもそも2001年が「ボランティア国際年」であるらしく、提案国が日本であった。それもカンボジアの国連ボランティアで亡くなった中田武仁さんの父親が働きかけたとのこと。この国際年の目的は
  1. ボランティアに対する理解を深める
  2. ボランティアへの参加が促進される環境を整備する
  3. ボランティアのネットワークを広げる
  4. ボランティア活動を推進することである。

藤井敦史「福祉系NPOに求められるマネジメントのあり方」
 マネジメントと言うよりも、阪神淡路大震災でのボランティアが取った行動や被災者のニーズを汲み取るためのスキルについての述べていた。傾聴、生活者としての人間?社会的文脈の解釈と理解の必要性。その蓄積が組織として発信、フィードバックされることの重要性について述べていた。

2011.3.23

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