2001.4
介護保険制度施行一年

対談

介護保険制度施行を振り返る
保険料と一部負担の減免の問題、あるいは介護認定やケアプラン作成の技術、サービスの評価といった、いわば質に関わる問題、対等な契約を以下に補償するかの問題、さらに、今年10月から始まる保険料の全額請求とその徴収など、解決の急がれる問題や時をおかずにとり組まないといけない課題も少なくないように思います。


従来の措置制度では最終責任の担保は全て市町村でしたから、福祉施設の職員にしても別にとくだんの専門的知識を求めていませんでした。

利用者と事業者の契約だが、一種の後見人的な立場から、やはり市町村のサービスに関する関与はある程度必要である。

市場原理、市場主義に関連して、私は競争原理を本質とする市場原理の限りなき追求、あるいはグローバリゼーションに代表される統一基準、共通性最重視の利益追求は、高齢者保健福祉の実現手段として必ずしも馴染まないと考えています。なぜならば、ともに、利用者本人の選択あるいは決定の幅や力を狭める方向に作用するし、地域特性を制限する方向に動きます。一方で、介護サービス供給主体の拡大、営利事業者の参入を妨げる必要はないが、知事の指定を受けた指定業者ならば、それは公的保険という、いわゆる内部市場の範囲での利益追求であることを忘れないでいただきたいと思います。

社会福祉法人に限らず非営利団体に関してもノウハウはあり、蓄積もある。新規サービスや隙間を埋めるニッチサービスもある。

欧州に行くと、日本は家族中心の非常に強い支えを持っているはずなのに、なぜ現金給付をしないのかと良く聞かれる。なぜ、日本は社会的なサービスに依存するかのような制度を作ったのか、理解しがたいという批判を受ける。

制度の資金について
介護保険は、市町村という地域社会では少なくとも17%は高齢者がお互いに支え合う仕組みになっています。例えば、助け合い支え合う地域社会の50%くらいは介護保険が下支えをする。地域社会の度台の上に、市町村が独自に介護予防、生活支援事業などを独自の地域の実情に応じてとり組んでいます。しかし、それもおそらく全てを支えるものではない。仮に75%ぐらいまでしかいかないかも知れない。そうすると、残りの25%は、住民組織、NPO、あるいは近隣の助け合い、そうしたものを含めて、高齢者の介護とか福祉にとり組む。つまり三層構造ぐらいになっていくのでは。

介護保険事業計画は、どちらかといえば計画経済に近く、介護サービスの給付はどちらかといえば市場経済に近い。保険料値上げについても、直接的な法律上の制約はないということを考えると、保険者や知事のチェック機能は働くが、油断すると介護需給のミスマッチが起こりかねない。
介護保険の持続的な発展のために、社会保障制度全体のなかでの位置づけを検討することは不可欠だが、さしあたっては、何とか実効性のある介護予防サービスを考案して提供していくこと。介護需給を自立支援の範囲におさえることが肝要である。

介護保険制度の今後であるが、内在する保険財政からの要請よりも、増大する高齢者医療費からの要請で変革をせまられるという見方もできるが、介護と医療が曖昧にされたり、言われる所の社会的入院が増えだしては、利用者本位にもとります。
介護保険制度は、地方自治体のありかた、サービスの提供のあり方などに大きな変革をせまる制度である。その意義に較べると、医療保険財政が楽になると言ったことは副次的なものと思われる。

介護保険は、核家族化や同居家族の高齢化などで限界に来ている家族介護を社会全体で支援しようと導入されたものである。介護リスクの高い高齢者から保険料をきちんと徴収しなければ、若い世代や事業主からの協力も得られなくなる。国民みんなで少しずつ負担しあうしかないであろう。

在宅での医療ニーズはだんだんと高まってくると思われる。ルールかは緊急の課題。
ヘルパーの労働条件の脆弱さ。
利用者本位と言うよりも家族本位になりがちである。
リスクマネージメントの議論を深めていくことが今後重要。

ホームインデックス