2001.3
痴呆性高齢者を支援する

痴呆性高齢者を巡る施策と動向
痴呆性老人の数は、2000年では約160万人、65歳以上人口の痴呆が占める割合は7.1%と推定される。さらに65歳以下の若年性痴呆は2万6千人である。ぼけの74%が女性で、平均年齢は79.4歳、発症年齢は72.4歳で全体の64%が自宅で生活している。老健の32%が痴呆であるとのこと。
痴呆性高齢者対策については、1986年に示されたゴールドプランで、痴呆の研究、グループホームの整備などの充実、早期相談と権利擁護の体制の充実である。施設に関しては、1992年に痴呆が毎日通所出来るディサービスセンターE型がある。1997年には痴呆対応型共同生活介護事業(グループホーム)を創設し、運営費補助が出ている。2000年から施行された介護保険制度でも対象サービスとなっている。また、医療分野でも精神病院がその役割を担っている。とくに手のつけられない症状を顕わしている患者に対し。

朝田隆「痴呆の理解と医療分野の現状」
一旦は正常に発達した知能が、後天的な脳の障害によって支障を来した状態を痴呆症という。これに対し、先天的あるいは生後間もなく脳障害による知能の障害は知的障害と呼ばれる。これまで日本では、脳血管障害による痴呆が最も多いとされてきた。しかし、高血圧への対策と共に公衆衛生が充実すると共に、減っていき、逆に平均寿命ののびと共に増加してきたのがアルツハイマーである。アルツハイマーは、物忘れ、特に新たに記憶できない症状が前景にたつのが初期、物を取られたなどの妄想や、方向感覚の障害、徘徊、行動症状ががめだつ中期、そして心身共の衰弱して寝たきりになっていくのが末期である。検査では、記憶を中心とする知能検査が中心になり、CTスキャンは必須の検査になっている。
病理学的には本質的に神経細胞死にある。つまり何らかのメカニズムによって神経細胞が異常なスピードで死滅してゆく結果、正常な知的活動が営めなくなる。(特にアセチルコリンの死滅が顕著である)治療としては薬物療法の他、回想法、音楽療法などがあるものの、その効果は微細である。

雨宮克彦「痴呆性高齢者ケアを巡る福祉と医療の連携の新視点」
薬物療法の紹介、アセチルコリン分解酵素阻害剤についてである。また、医療はもっと介護の現場に、介護はもっと医療に相互交流をしよう。だけど、時間もないし、忙しい。だからITを活用して効率的に共通言語を持とうという話し。医者の考えそうな話である。それも尊大な。

吉岡あき子「痴呆ケアと痴呆リハビリテーション」
抑制をすれば廃用性症候群になり衰弱死をしてしまうことについての話し。身体拘束を受けると、間接の拘縮、心肺機能の低下がおこる。食欲の低下や脱水を起こし、点滴を受ける。しかし、痴呆老人が黙って点滴を受けることは稀である。そのため、薬物が強化される。すべては悪循環である。
まず「起きる」ことからリハビリははじまる。起きることで五感で状況を知ることができる。寝たきりで天井を見ているのでは雲泥の差である。そして「食べる」ことである。かむこと、飲み込むこと。時間をかけても食べることで、脱水予防にもなる。そして「排泄」することである。なるべく自分でトイレに行くようにする。あるいは、汚れたオムツをつけないようにまめに交換する。そして「清潔」である。不潔な状態におかれるとかゆみなどの不快さがいらだちや不眠を引き起こし、大声や乱暴といった行為を引き起こす。最後に「アクティビティ」である。これはよい刺激という意味である。残された人生は限られているが、今日一日はたっぷり時間があるのだから。
良いレポートである。

コメント
痴呆老人は、認知症と名称が変わる。また、問題行動ではなく、症状として捉えようとする向きがある。いずれにしろ、いまだに強度の行動症状を示している痴呆老人はグループホームは利用できない。しかし、昨今の介護保険の改正で、痴呆老人への対応もされようとしている。まさにこれからと言えそうである。
2005.12.27

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