2000.7
新世紀の社会福祉とは3〜福祉経営の視点

座談会
社会福祉法人を活性化すると共に多様なサービス提供主体の参入を進め、福祉市場を作って各自業者間の創意工夫(規制緩和)を促すと共に、利用者の選択(情報開示「ただし誇大広告の禁止」、権利擁護、苦情解決、評価制度など)を基本とする適正な競争を福祉分野の中で実現するシステムがまず介護保険を先駆けて導入することになる。
これまでは社会福祉法人という人格があるにもかかわらず、実態として施設が法人を統べる形になっている。施設整備に於いて、返済金は寄付金で行うことになっているが、実態は借入金の金額が数億円に及んで、それを寄付で賄うのは現状に合わない。また、第1種、第2種と分けられ、実態として、第一種は地方公共団体か社会福祉法人でないと運営できないことになっている。
生活支援的な側面では、労働量を削減すればするほど、サービスの低下がきたす。よって、利益配分をしなくて済む社会福祉法人では、ある一定の質の高いサービスが提供しやすい環境にある。
弱者救済の貧困対策が施設の役割かというものではなく、施設本来の目的は地域に対する貢献だと思う。そしてその一方で、恩典が地域住民の目にきちんと見えるような仕組みが必要である。
組織の体質を決定づけるのは実質的には一般職員なので、その意識改革とそれを促進する手だてや仕組みが必要である。それが人事管理システム(期待する職員像)である。
事業を展開していく上で、多角的でかつ無理なく、在宅も施設もバランスよく経営していくことが必要になる。そのために、両方のサービスを横断的に理解し、調整できる人材が必要で、その点では施設長の資質も高めていかないと行けない。

小林良守「新しい地域福祉の時代と社協経営の方向」
意識改革などの必要性を説いている。
介護保険事業は、介護報酬に基づく「経営」そのものである。共同募金や会費など市民の浄財を財源として小地域の助け合い活動やボランティア活動を進めてきた社協、あるいは市町村行政の委託事業としてサービス提供を行ってきた社協にとって、介護保険課の「経営」はなじむであろうか。と不安に思っているようだった。
社協の使命は、地域福祉の推進である。様々な地域福祉課題を住民・市民の視点で取り上げ、住民参加と講師のネットワークで課題解決に向けた取り組みを進める。不採算であっても、必要があれば財源と人材を確保して事業を興す。その継続のために、効率的・効果的な方法を探る。これが社協の経営である。

平野隆之「福祉NPOのマネイジメント戦略」
福祉NPOとは、福祉関連の領域で活動する民間非営利組織を示す用語である。NPOは本来開かれた概念であるため、福祉関連という制約を与えてNPOを区別するのは妥当とは言えないが、国際的なNPO分類では、社会サービス、日本の特定非営利活動促進法では、保健、医療又は福祉の増進を図る活動というように、文字通り特定分野として福祉寮域が提示されている。
住民参加型在宅福祉サービスは、サービス提供者と利用者が会員として加入する住民参加方式をとり、非営利の組織運営のもとに利用者は料金を支払い、提供者は有償で活動するという仕組みを採用してきた。社協、生協、農協という、社会連帯、相互扶助を理念とする既存の非営利法人や行政が関与する福祉公社のものと、法人格を持たず、自主的な団体などにより運営される住民互助型、ワーカーズ型に分かれる。後者が今後NPO法人の取得に進むグループに相当し、そのいくつかはすでに認証を受け、さらに介護保険の指定業者となっている。
高齢者介護の分野に於けるホームヘルプの役割は、住民参加型団体によって切り開かれたといってよい。それを可能にした条件は、会員という限られた利用者のニーズに組織的に責任を持ち、サービス利用プランを先行させ、それにサービス提供者を組み合わせるというコーディネート業務を成立し得たからである。この間のコーディネート力の蓄積は、利用者ニーズの顕在化をもたらし、住民参加型団体は新たなサービスの組み立てを図ってきた。その一つは利用者を障害、児童一人親を含む、へと拡大させ、制度による縦割りから横断型の地域福祉指向のサービスへと展開してきたことである。もう一つはホームヘルプを中心とする単一のサービスから配食や移送、ディサービスといった複数のサービスの供給対へと移行してきたことである。住民参加型在宅福祉サービス団体が、その出発点として、制度福祉であるホームヘルプ事業の機能不全に対抗したと言える。
事業基盤の弱い福祉NPOにおけるマネイジメント戦略は、いかに対等の関係を維持しながら行政とパートナーシップを作るかと言うことになる。

この他、コムスンの福祉経営戦略の論文があるが、見てられないので割愛する。

メモ
もっとも、特集と言うこともあり、また社会福祉基礎構造改革が始まったばかりと言うこともあって、よいしょ記事が多かった。その中でNPOの話は興味深い。それまで社会福祉法人が公益性を守ってきたとはいえ、こうしたNPOの運動体的な要素がなくなったなぁという実感がある。本来、社会福祉法人もNPOのような身軽さや制度の隙間を埋めていくことをしてきた。今でも、宅老所やあらたなサービスが提供されている。ここに、社会福祉の原点を見る思いである。制度が施設を作るのではなく、運動によって施設が出来、制度が後追いして整備されるのである。
(2006.5.2)

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